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最終章

40話 最後はお父様

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私はアルフからノアのことを聞いた。
彼は本当はチェイスではなく、自分のことが一番憎いのではないだろうか。

そして、カルミアという女性。話を聞いていると、どこか姉様と雰囲気が似ている。人の心を誘導するのが上手い。
だから、ノアは姉様を見て吐きそうだとまで言ったのだ。

オリーブさんは、たしかに私と同じ境遇だと思った。でも、彼女は家族に恵まれていた。そこが私とは大きく違う。

そして、私に憑いているミカエルに、事件の日の映像をアルフに共有してもらった。
チェイスの言っていたことは正しく、オリーブさんの心臓の匂いに引き寄せられて屋敷まできたが、たくさんの魔物との争いに巻き込まれ、書斎に行った時にはすでに、オリーブさんは亡くなっていて心臓も抜き取られていた。

チェイスの視覚映像には、犯人だとわかる魔物も写っていなかったそうだ。

今日は夜遅いので、私は屋敷に戻るようにアルフに促された。
明日の朝すぐに戻ってくることを約束し、私は屋敷に戻った。

屋敷に戻ると、お父様はもう寝ているらしかった。

リズのことは明日、話してみようかな?

お父様は、最近よくお酒を飲んでいる。今までの私の復讐は、すべてお父様への復讐に繋がっている。彼を許すつもりはないけど、これ以上止めを刺すのはやめておこうかな……。

そう思っていた矢先、翌日の朝、お父様は信じられないことを口走った。

お父様は、ダイニングルームで朝食をとっていた。にこやかな顔でお父様は言った。

「レイラ。君もこれにサインしてくれ」

お父様が差し出した書類を見ると、それは私と親子の縁を切るというものだった。

「は? いいですか? 私と縁を切っても」

「もちろんだ。お前さえいなければ、この部屋がここまで寂しくなることはなかっただろう。それに、お前は後継を産むこともできんだろうし、家に置いておいてどんな利益がある?」

はっ……。
前言撤回ね。この人は何も懲りてないし、こうなったのはすべて自分の責任だとわかっていない。
やはり、彼にはもっと地獄を見せてやらないと。

「お父様って、家族に対する愛とかないんですね。兄様もお母様も姉様もすぐに見捨てて」

「もちろんだ。そもそもこの世に愛なんてものは存在しない」

当たり前だという顔で頷くお父様を見て、少しぞっとする。

「でも、お母様のことを愛していたから求婚したんですよね」

「違う」

よく見るとお父様が飲んでいるのはお酒だった。朝からよくも……。
でも、だからいつもに増して饒舌なのね。

「ケイトリンは私の一つの実験だった」

「……実験?」

「そうだ。町で初めて彼女を見かけたのは、愛おしそうに恋人を見つめる姿だった。だから私はその愛が本物か確かめたかった。結果、彼女はお金を選んだ。一度迷ったせいで、ビアンカが生まれたようだが、すぐに私の元に戻ってきた。ほら、これで愛がないことが証明されただろ?」

お父様はグラスのお酒を一気に飲み干す。
彼のこういう考え方は姉様に受け継がれてしまっていたのか。

結局、お父様は家族を愛するふりしていただけで、家族のことは駒のようにしか思っていなかったのだ。

私は、彼の差し出した紙にサインする。

「望み通りこの屋敷からは出て行って差し上げますよ。でも、あなたが後悔して戻ってこいと言っても一切聞き入れませんよ?」

「はっ! 後悔などするものか。さっさと出てゆけ」

お父様は、嘲笑って私を手で追い払った。

お父様を地獄へ送るためのピースはすでに揃っている。彼はきっとこの選択を後悔することになるだろう。

私は部屋から、自分で稼いだお金とブローディアのブローチと金平糖のビンだけ持って屋敷を後にした。
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