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プロローグ

1話 あれ?私の家族ってクソじゃない?

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長年の家族らかのヘイトが溜まりに溜まった結果、ある日突然私は開き直った。

私の家族ってクソじゃない?私がここまで冷遇されるのって変じゃない?

空腹の苛立ちが私を覚醒させたのかもしれない。たがが外れた瞬間だった。

もう自分のことを責めるのはやめよう。

私の家族のローズブレイドは、王都の近くにある町を治める男爵家だ。

厳格でありながらも町人を思いやる父、サイラス・ローズブレイド。
お父様を支える母のケイトリン。
優秀な後継の兄、ベネディクト。
国一番の美人と称される姉のビアンカ。
そして、魔女と恐れられる私、レイラ・ローズブレイド。

今まで私は家族のことを、誇りに思っていた。私なんかを家に置いてくれるだけでもありがたいのだと。

しかし、覚醒した今ならわかる。彼らは、クソだ。

私の住むエフティヒア国では、魔物が人々を困らせていた。
私は魔力が高く、多くの魔物を惹きつける体質らしい。魔物は魔力の高い人間の心臓を食べることで、永遠の命を得ることができるらしいのだ。

魔物は異形の存在だが、意思疎通はできる。友好的な魔物もいるので、すべての魔物が私を狙うというわけではない。

私は魔女と呼ばれ、町人や家族からも恐れられ、邪険にされてきた。

お父様が王よりこの土地を賜り、住み始めた途端、魔物によって多くの使用人が命を落としはじめた。父は私のせいだと言いはり、私を家に軟禁状態にした。私も、前は当然の仕打ちだと思い込んでいた。魔物を引き寄せてしまう私が悪いのだと。その時、私は五歳だった。

いや、でも良く考えると私のせいじゃないのよね。

お父様がこの町に来た時は、前の領主から絶対に触ってはいけないと言われていた、魔石があった。しかし、お父様はそこに水路をひきたいがために壊してしまった。
それからだ。この町に魔物がたくさん出現しはじめたのは。

もし、仮に私のせいだったとしても、親なら自分の子供が魔物に狙われているなら、守ろうとしてくれてもいいじゃないか。

むしろ私には感謝してほしいくらいだ。私は魔力が高く、その辺の弱い魔物であればグーパンで蹴散らすことができる。屋敷に侵入した魔物をこっそり祓っていたのは私だ。

先日、ベネディクト兄様に魔物が取り憑いていたので、殴って祓ってやったが、憑いている状態の魔物は普通の人間には見えないので、ただ私が兄様を殴っただけのようになってしまった。

お父様は激怒し、私は三日間ご飯を与えてもらえなかった。今日でその三日間が終わる。
あの時、憑いていた魔物を瞬殺するんじゃなくて、一旦兄様の体から引き離すべきだったのだ。そうすれば、魔物が憑いていたことを周りに証明できたのに。

その時、誰かが部屋をノックした。
おそらく、ビアンカ姉様だろう。

「レイラ。そろそろ朝食の時間よ。一緒にいきましょう」

にこやかな笑顔で、部屋に入ってくる。
ずっとビアンカ姉様と容姿を比べられてきた。
姉様は、エメラルドのような瞳で私は気味の悪い真紅の瞳。
艶のある美しいプラチナブロンドの髪は、綺麗に編み込まれていて、私のぼさぼさの白髪とは正反対だ。

「あら、ちょっと痩せたんじゃない? ……かわいそうに。今日はしっかり食べなさい」

姉様は心配したように眉尻を下げた。

はっ! 白々しい。
彼女は、かわいそうな妹を心配する良い子の自分に酔っているだけだ。
ほんとに同情しているのなら、親の目を盗んで食べ物を持ってくるなりするだろう。

いつもは、姉様のこの演技に騙されていた。
どうして今まで、私を見てほくそ笑んでいる姉の様子に気づかなかったんだろう。

「大丈夫? 立てる?」

姉様が私を抱き起こそうとしたので、私はその手を払いのけた。

「自分で立てるので大丈夫です」

「え……? そう……」

いつもなら泣きながら、感謝していた私の態度に驚いたのか、姉様はしばらくぽかんとした表情で私を見ていた。

私は、姉様を無視してダイニングルームまでスタスタと歩いていった。

ダイニングルームに着くと、両親と兄はすでに着席していた。

「ビアンカ、おはよう。また、レイラを助けてやってたのか? ほんとに優しい子だなお前は」
「いいえ、お父様。姉として当然のことをしたまでですわ」

はァーー。白々しいったらありゃしない。

「なにをしているの? 突っ立ってないで座りなさい」

お母様が濃い緑の瞳で私を睨む。今日もピンクブロンドの髪は縦巻きロールだ。

兄様は、私に殴られたことをまだ根に持っているのか、わざとらしく、痛そうにお腹をさすった。
私の席は四人とは少し離れたところにある。私は黙って席に着いた。

「じゅうぶんな反省はできたかね? レイラ。まったく呪いの子であるお前を家に置いてやってるだけでも感謝してほしいくらいだよ」

「いいえ、お父様。私は間違ったことはしていませんので、反省もしていません」

私がきっぱりと言うと、四人は驚きの表情で私を見た。

「なんだとっ!?」

お父様が顔を真っ赤にしてテーブルを叩く。

「私が兄様を殴っていなかったら、兄様は今頃魔物に生気を吸い取られて衰弱していたでしょう。むしろ私に感謝すべきでは?」

「でたらめ言うなっ!! 日頃の鬱憤を晴らしたかっただけだろ!」

ベネディクト兄様は、身を乗り出して抗議する。

「え? 日頃の鬱憤って……。鬱憤がたまるような行為を私にしている自覚があったんですね。たしかに、剣術の練習といって私をサンドバックにしたり、散々でしたもんね」

「いや、それは……」

兄様は、ばつが悪そうに視線を逸らした。
この話を暴露しても、咎めもしない両親は私にとっては当たり前!

「どうしちゃったの、レイラ……。いつもと様子が違うわ。私、心配だわ」

ビアンカ姉様が、涙声で言う。
私は、盛大にため息をついた。

「いつも反抗しない私が、言い返したから気に食わないだけでしょう?」

私が、嘲笑うような表情で言うと、姉様は顔を覆って泣き出した。

「姉になんてこと言うんですか!」

お母様は汚物でも見るように、眉間に皺を深く刻んでいた。

はぁ、この家族は……。
どこまでも私を悪者にしたいのね。
ならば、とことん悪になってやろうじゃないか。

「あなたたちこそ、いいんですか? 私にこんな態度とって。いつも私を魔女と呼んでいるでしょう。その名に恥じないように魔物でもお呼びしましょうか?」

すると、四人は怯えた表情で固まった。今までは、なんでも私が言いなりになるから、私のことを舐めていたのだろう。

いつも私を馬鹿にしていたメイドたちも、驚きの表情で私をみつめている。

「ま、まぁ。そんな話は置いといて食事にしましょう?」

お母様がぎこちない笑顔で話題を変えようとする。

私は、お皿の上に乗った失敗したオムレツや崩れてバラバラになったハッシュドポテトを見た。

私は、お皿をひっくり返し、それらを地面に落とした。

「三日間なにも口にしていない私がこんな濃いものを食べられるとでも? 拷問ですか?」
「……」

誰も口を開かなかった。

私は、固まっている四人に微笑んで、吐き捨てるように言う。

「今後私を軟禁するようだっら、魔物を呼びますから」

私は部屋から出て行った。ドアを閉める音が廊下に響き渡っていた。

お腹も空いて死にそうだし、街で何か買おう。リゾットとかが食べたい。

そうして私は、いつも俯いているだけだった自分にさよならを告げたのだ。
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