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幕間01:トレヴァーとロリコン

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時は遡り、勉たちが騎士達に連れられて領主の屋敷に来た日。

その屋敷では最近領内の悩みの種である、あるモンスターのことで頭を悩ましている人物がいた。
この館の主人であり、この周辺一帯を納めているトレヴァー辺境伯である。

トレヴァー・ウィル・ヴィリアーズ。五年ほど前に行われた隣国との大戦で多くの武功を挙げ、その功績を持って辺境伯に任じられた人物である、建前上は。

実のところトレヴァー辺境伯は王族である。現国王の弟にて、元ヴィリアーズ公爵領当主。
それだけの人物がなぜこのような辺境を治めているのか。
少し知恵のある者なら丸分かりなのだが、………嫉妬である。

現国王が王位を継承したのは七年前。国民や下級官僚から見れば長兄である現国王が即位するのは当然といった感じだった。
だが、一部の高級官僚、上級貴族からしてみれば『当然』とは言い難かった。
別段、現国王が無能だったわけではない。むしろ、トレヴァーが優秀すぎたと言っていいだろう。
トレヴァーは幼い頃から文武両道を具現化したような存在だった。
政務を任せればサラサラーっと流れるようにこなし、一度馬に跨がれば敵うものは王宮内にいないほどだった。
勿論、兄の現国王がこれを心良く思うはずもなく、徐々にお互い亀裂が入っていった。
そしてあの大戦でその亀裂は決定的なものとなった。大戦にて公爵領軍として出陣していたトレヴァーは見事敵を撃破、その後凱旋する。しかし戻ってみれば公爵領は当時十歳になったばかりの息子が継いでいる状態だった。
あまりの異常状態に屋敷に仕えているものに尋ねると国王の名の下に書類上は自分は戦死した事となっており、その息子に爵位を継承させることが確定していた。
その旨を謁見の間にて進言すると継承させたものは仕方ないとばかりに発展途上の辺境アーロンの辺境伯に叙勲。

そして今に至る。

まあ、本人としては別段辺境に対して思うところはないようなので、至って平和だが。

ともあれ、そんな経緯の辺境伯の部屋にいきなり飛び込んでくる者がいた。

アルヴィン・ウィル・ヴィリアーズ

トレヴァー辺境伯の武の要素を大いに反映したヴィリアーズ家の三男である。

「……どうしたんだ?アル」

半ば呆れたように尋ねる。

「聞いてくれよ親父。スゲー奴が居たんだよ!」

興奮したように身振り手振りでその場の様子を説明する。

「で、結局その少年と連れていた少女を屋敷に招いたと。そういう訳か?」

「ああ、そういう訳だから早めに応接間に行ってくれ!俺は仕事の途中だったんで戻るから後はよろしく!」

そう言って嵐のように去っていった。一応仕事は真面目にこなすようである。

「…………」

(全くいつになっても子供のままで困ったものだ。もう少しあの筋肉を別のことに使えれば良いのだが………)

そんなことを考えつつも書類仕事はしっかりとこなし続ける。

「……さて、ちょっと顔を見てくるとしようか」

そう言って近くにあった鈴を鳴らす。するとドアをノックする音が室内に響く。

「入れ」
「失礼致します。お呼びでしょうか?」

そこに現れたのは二十代前半と思われる男。明らかに使用人として屋敷に仕えているようには見えず、腰には鞘に収められた剣が下げられている。

「今からアルの連れてきたという少年と少女に会いに行く。お前は私の護衛として付いて来い」

「はっ、しかしこのような事でトレヴァー様自身がお会いになる必要はないかと……」

「いや、アルが連れてきた人物だ。無下にはできなまいよ。それにお前も知っているだろうアルの力を」

「……そうおっしゃるのであれば、私からは何も」

「では行くぞ」

「はっ!」







(ほぉう!)

応接間に入って瞬間に分かった強者のオーラ。ある程度の力がなければ感じ取れない力にトレヴァー辺境伯は感嘆の声を心の中でもらした。

(まさかこれほどとはな。だが、それを感じ取れる者は少ない。感じ取れなければ納得もできまい。其奴らをどうやって納得させるか………。いや、この少年を逃がさない事が最優先か。他国のスパイという可能性もあるがそれはおいおい考えれば良かろう。)

「ここで雇われる気はないか?」

(とりあえず先手は打った。ここで首と縦に振れば御の字、横に振られてもこちらの好待遇に疑問を感じているかもしれん。まあ、もともとどこの家にも仕えないというやつかもしれんがな。
ん?よく見れば隣にいる娘は奴隷か?いや、しかし手を握っておるな。着ているものは見すぼらしいが恐怖や殺意などの感情は感じられん。それほど大切にされていると見るべきか……。貴族の中には前の娘のような子供の奴隷を愛玩用に養っておる輩もいると聞く。そう言った類か?まあ、それならそれで御し易くて良いがな)


こういった経緯でトレヴァー辺境伯は佐藤  勉をロリコンに認定したのだった。









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