上 下
86 / 96

赤い情熱のCarnelian Hall 後編

しおりを挟む
そしてこの後も

真剣な眼差しで玲を見つめる美しい彰は……

サラサラとした長い黒髪を長い指で掻き上げながら

*****

「でもね玲ちゃん、
引っ込み思案で大人しいきみを大学に行かせたら、
あっと言う間に岡田桜の様な怖い女が次々と現れて
そして必ず弱い玲ちゃんが傷付く事になってしまうから……
だから俺は璃音の親友として、きみと璃音を守る為に、
悪いけど君の進学には反対の立場を取っていたんだ。
でも璃音は最後の最後まで、たとえ強面こわもての護衛を付けてでも
きみが願書を出そうとしていた国立の大学に、玲ちゃんを進学させようとしていたんだよ?」

と自分自身の正直な気持ちと璃音の苦労を語ってくれたので

普通はこんな雰囲気になれば、璃音と彰に向かって一言

「この度はお手数をおかけしてごめんなさい。
そして就職の件も色々とありがとうございました」

ぐらいの事は言えて当然なんだけど、長いオタクの人生を歩んできた玲は

こんな感じのまともな会話が一切出来ない、残念すぎるコミュ障なので……

どの角度から見ても とにかく美しい彰の話を黙って聞いているうちに なんとなく


(護衛~…ですか……つまり私が大学に進学していたら、
どこぞのヤクザ小説でお馴染みの幸薄系ヒロインみたいに、
毎日コワモテのSP軍団に囲まれて登下校していたって事ですよね?)

なんと、このタイミングで

最強ヤクザの意味不明なネット小説を思い出しながら


(だから去年の秋に私が大学に行きたいって言ったら、
ママもパパも先生も学食のお姉さんも、みんなで一斉にスクラムを組んで
私の進学を断固反対したんですね?私を最強ヤクザのヒロインにさせない為に……)

な~んて感じのアホな事を想像していたが、

こう見えても玲は一応、有名人の娘なので

それを口に出す程のアホではないし、

そもそも今は無難な返事をした方が無難であると判断したから


「えっと、あの~…大学って待ち時間が多いから
私みたいなボッチのコミュ障にとっては高校よりも大学の方が
よっぽどツラい場所になるって、えっとその、知恵袋に~じゃなくて、
学校の廊下の掲示板とかに~…か、か、書いてたから……」

だから全然大丈夫ですと、

自分でもサッパリ訳がわからない返事をしたのに

この後なぜか、どう言う訳か、いきなり元気に活発に!

「だから私は円行寺さんの……
じゃなくて円行寺社長の会社に就職する事が出来て、凄く幸せです!」

と最後だけは自分の意見をはっきりと言えたのは

もしかしたら真っ赤に煌めくカーネリアンホールに赤い女神が下りてきて

キラキラと輝くクリムゾンライトの奇跡を起こしてくれた『せい』なのかもしれないが……

きっとそれは、また別の『お話』なので

赤い女神の事なんて何も知らないヘタレの玲はこの後すぐに

璃音と二人で大きなソファーを立ち上がり、

そしてカーネリアンホールのオーナーである彰と握手をした後で

*****

なんだかメッチャ優しい眼差しの璃音に見つめられながら、

「そうか、無事に就職が決まって良かったな
お前が毎日笑って過ごしてくれるなら、それだけで俺も幸せだ……」

て感じの嬉しい言葉をかけてもらい、そしてこのままの勢いで


「じゃあ彰、それと桐生、4月になったら俺の玲は
事務員として、お前達の部下になる事が決定したから、
二人とも俺の妻をどうか宜しく頼む。じゃあ そろそろ食事に行こうか玲」

と早くも玲の事を妻と呼んだ璃音と一緒に、サッサと部屋を出て行こうとしたのに

この後なぜか彰はいきなり、スタスタと歩いて璃音のもとに向かいながら

「おいおい璃音、この後のライブを見てから帰る約束だろ?」と何やら文句を言ったので


「んん?あぁ確かそんな事も話していたよなぁお前。
悪い悪い、最近忙しいから、すっかりその話を忘れていたよ……
それで彰がイチオシしている人気バンドのライブとやらは、一体いつ始まるんだ?」

って感じでふと気が付けば

いつの間にか璃音と彰は楽しそうにタメ語で話を始めたから

もちろん玲は黙って下を向きながら、毎日メッチャ仲が良い彼等の話を聞いていたけれど

このあと彰は何故だか急に、真面目な社長モードの雰囲気で

「あと15分で開演だから、
このまま黙ってホールに行ってくれよ璃音、
それと玲ちゃんは、4月になったらこの店のスタッフになるんだから
今夜は是非、シャノワールのステージを見てやってくれないかな?
実は彼らは今ね?ちまたで人気がナンバーワンの、超売れっ子ロックバンドなんだよ?」

と真剣な眼差しで玲を見つめながら

今すぐシャノワールのステージを見て欲しいと言ったので……


(本当はロックバンドのライブとか、全くぜんぜん興味がないけど、
でも私はカーネリアンホールの事務員的なスタッフなんだから
人気バンドの演奏会なら、今すぐ見学した方がいいに決まってるよね!)

と早くもヤル気マンマンで、まだ1日も働いていないのに、

もうすっかりスタッフの一員になったつもりで明るく爽やかに

「はい、さっそく勉強させて頂きます!」と笑顔で返事をした迄は良かったが

まさかこの後、金髪の弟、一条蓮と

桜ヶ丘高校で一番の人気を誇る3年A組の早瀬翔から、

トンデモナイ情熱的な愛のステージを見せられる事になるとは夢にも思っていなかった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

この度、青帝陛下の番になりまして

四馬㋟
恋愛
蓬莱国(ほうらいこく)を治める青帝(せいてい)は人ならざるもの、人の形をした神獣――青龍である。ゆえに不老不死で、お世継ぎを作る必要もない。それなのに私は青帝の妻にされ、后となった。望まれない后だった私は、民の反乱に乗して後宮から逃げ出そうとしたものの、夫に捕まり、殺されてしまう。と思ったら時が遡り、夫に出会う前の、四年前の自分に戻っていた。今度は間違えない、と決意した矢先、再び番(つがい)として宮城に連れ戻されてしまう。けれど状況は以前と変わっていて……。

お知らせ有り※※束縛上司!~溺愛体質の上司の深すぎる愛情~

ひなの琴莉
恋愛
イケメンで完璧な上司は自分にだけなぜかとても過保護でしつこい。そんな店長に秘密を握られた。秘密をすることに交換条件として色々求められてしまう。 溺愛体質のヒーロー☓地味子。ドタバタラブコメディ。 2021/3/10 しおりを挟んでくださっている皆様へ。 こちらの作品はすごく昔に書いたのをリメイクして連載していたものです。 しかし、古い作品なので……時代背景と言うか……いろいろ突っ込みどころ満載で、修正しながら書いていたのですが、やはり難しかったです(汗) 楽しい作品に仕上げるのが厳しいと判断し、連載を中止させていただくことにしました。 申しわけありません。 新作を書いて更新していきたいと思っていますので、よろしくお願いします。 お詫びに過去に書いた原文のママ載せておきます。 修正していないのと、若かりし頃の作品のため、 甘めに見てくださいm(__)m

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

溺愛彼氏は消防士!?

すずなり。
恋愛
彼氏から突然言われた言葉。 「別れよう。」 その言葉はちゃんと受け取ったけど、飲み込むことができない私は友達を呼び出してやけ酒を飲んだ。 飲み過ぎた帰り、イケメン消防士さんに助けられて・・・新しい恋が始まっていく。 「男ならキスの先をは期待させないとな。」 「俺とこの先・・・してみない?」 「もっと・・・甘い声を聞かせて・・?」 私の身は持つの!? ※お話は全て想像の世界になります。現実世界と何ら関係はありません。 ※コメントや乾燥を受け付けることはできません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される

奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。 けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。 そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。 2人の出会いを描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630 2人の誓約の儀を描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

イケメン彼氏は警察官!甘い夜に私の体は溶けていく。

すずなり。
恋愛
人数合わせで参加した合コン。 そこで私は一人の男の人と出会う。 「俺には分かる。キミはきっと俺を好きになる。」 そんな言葉をかけてきた彼。 でも私には秘密があった。 「キミ・・・目が・・?」 「気持ち悪いでしょ?ごめんなさい・・・。」 ちゃんと私のことを伝えたのに、彼は食い下がる。 「お願いだから俺を好きになって・・・。」 その言葉を聞いてお付き合いが始まる。 「やぁぁっ・・!」 「どこが『や』なんだよ・・・こんなに蜜を溢れさせて・・・。」 激しくなっていく夜の生活。 私の身はもつの!? ※お話の内容は全て想像のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※表現不足は重々承知しております。まだまだ勉強してまいりますので温かい目で見ていただけたら幸いです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 では、お楽しみください。

淫らな蜜に狂わされ

歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。 全体的に性的表現・性行為あり。 他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。 全3話完結済みです。

処理中です...