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嵐の前の七夕 後編

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そして自転車を飛ばして駅に到着した玲は、

さっそく 西口の通路に向かって足早に歩いていたけれど

なんだか今夜は いつもよりも気温が高くて蒸し暑いから

*****

ふと気が付けば 

いつの間にか駅の入口に向かって Uターンをしていた暑がりの玲は、

(ちょっとこれは~いくらなんでも暑すぎるから
とりあえず今から第一公園の100円自販機で、冷たいウーロン茶を買って、
いつものブランコで休憩をしてから、西口の短冊コーナーに行こうかなぁ。
だって今夜は七夕たなばただから、冷たいお茶を片手に星空を見ていれば、
何か良い事が起きるかもしれないし~…って事で今から公園にレッツゴーだね!)

こうして今夜も意味不明な言い訳を心の中で呟きながら

さっそく第一公園の敷地に置かれた100円の自販機でウーロン茶を買った後

いつものブランコに向かってテクテクと歩いていたのだが、

次の瞬間、玲の目の前で……!


『ええぇぇえー!?その話マジかよ銀次の兄貴!』

『おお、マジもマジ、大真面目な話なんだよアンコ』


なんと今夜も、銀次とアンコが花壇の中で

なにやらキナ臭い話で盛り上がっていたから

もちろん玲はこのまま無言でブランコに座った後すぐに

素知らぬ顔でペットボトルの蓋を開けながら、

今日も元気な銀次達の会話に耳を傾けていたけれど……

綺麗な夜空の星を眺めて、呑気にウーロン茶を飲んでいたら 

なんと、この直後!

*****

『じゃあつまり決行は、3日後の7月10日じゃなくて、
今日の24時になっちまう可能性もあるって事なんスか?』

『まぁそれはエスパーの腕次第だが……
今日の下見でシェルターの扉を開ける事が出来れば、
そのままの勢いで宝を奪う可能性もおおいにあるから、
きっと今夜で、全ての片が付く事になるだろうな……』


(えっ?何それ!下見?今日の24時?)

彼らの話は明らかに!

今までの計画とは全く違う内容に変わっていたので


『じゃあもしも今夜エスパーが、金塊の強奪に成功したら……
佐竹の親父はその後いったい、どうするつもりなんだよ兄貴』

『そりゃあ、サッサと闇ルートで金塊を売りさばいて~、
その後は~…トットとドバイあたりの海外に逃亡するんじゃね?
でもその場合…俺の運命は果たしてどうなっちまうんだろうなぁ……
恐怖の保健所か?でもうちの親父は公共施設が苦手だから、やっぱ野良猫確定か~?』

『そんな悲しい事を言わないで下さいよ銀次の兄貴ぃ~……
俺の飼い主のキャバ嬢に、兄貴の事も飼ってくれって相談しますから~』

『んなもん無理に決まってんだろうがアンコ!
テメェの飼い主は猫語がペラペラ喋れんのかよ!』


こうしてトンデモナイ話を聞いた玲は

この後すぐに自宅に帰って、大きな鞄の中にビデオカメラを入れた後


(行かなきゃ…たとえ私一人でも、今夜必ず画廊に行かなきゃ!)

と覚悟を決めて再び自転車で桜ヶ丘の駅に向かい

そしてそのままの勢いで、横浜行きの赤い電車に飛び乗ったけど

今から玲が行く場所は、チンピラ街で有名な早瀬地区の繁華街なので

初見しょけんの人には分かりにくい、ゴチャゴチャとしたガラが悪い商店街の中で、

今回の舞台である『画廊 時の砂』をたった一人で探さなければならないのに

玲の心は今なぜか、めっちゃハイテンションな イケイケの状態になっていたから


(大丈夫!大丈夫!レイピアが教えてくれた通りに画廊を歩けば、
必ず私は成功するから!だからいつもの様に落ち着いて、油断せずに行きましょう!)


なんて悠長な事を考えながら電車に揺られていたけれど……

まさかこの後、油断せずに行ったつもりの早瀬地区と呼ばれる街で

トットとサッサと迷子になってしまう事を、呑気な玲は全く気付いていなかった、
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