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7月の雨
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そしてトムを見送った後、
急いで二階に上がって自分の部屋に入った玲は
ベランダの端に置いてある、避難はしごの箱から大きな封筒を出して
(じゃあえっと~、この封筒に入っている~
5枚の書類が時の砂の設計図って事だから~、
えっと秘密の設計図は~、とりあえず……
クローゼットの一番奥に隠しておこうかなぁ……
あっ!でも、えっと、クローゼットに行ったら~
ビデオカメラも出しておいた方がいいよね~?)
とフワフワしている睡眠不足の頭の中で
今からするべき事を考えながらウォークインクローゼットに向かったが
*****
けっこうゴチャゴチャしているクローゼットの棚の中から
さっそく高性能なビデオカメラのセットを取り出した玲は、
慣れた手付きでこのカメラが壊れていないかを確認した後で
「はい はい、全然大丈夫みたいですねぇ。
じゃあ次はバッテリーを充電しましょうかね~」
えっとコンセントはどこだっけ~
って感じのハイテンションな独り言を呟きながら
早速バッテリーの充電を開始したのに、この直後
(あれっ?どうして頭の中で除夜の鐘が鳴ってるの?ん?あれれれ?
なんか急に視界がグルグル回転してきたから…ちょっとだけ仮眠を取ろうかな?)
なんと いきなり、強烈な睡魔に支配された残念な頭の中が
ハンドベルのコンサートみたいな騒がしい状況になったので
これは流石に今すぐ寝なきゃ本気でヤバいと思った寝不足の玲は、
このあと慌ててベッドに直行したけれど……
そもそもオタクのコミュ障に完徹オールナイトは無理ゲーなのだから
人生初の朝帰りで大人になったつもりのヘタレが今から出来る簡単なお仕事は……
せいぜい今すぐ布団に潜って爆睡タイムに入るだけの
プライスレスなバイトだけしかない事は、もちろん今さら言うまでもない。
*****
そして午後の2時までたっぷりと睡眠を取った寝太郎の玲は
目覚めた直後にお婆ちゃん的な携帯電話をパカッと開いて時計の表示を見た途端
(えっ?もうこんな時間になってたの?
朝の7時から午後の2時まで爆睡するとか有り得ないでしょ?
どんだけ疲れてたのよ私!だからこんなに喉がカラカラに渇いているの?)
なんて流暢な独り言を心の中で呟きながらも
とにかくメッチャ喉が渇いていたから、ベッドを出た後いそいで1階の台所に向かい、
冷蔵庫から取り出したミネラルウォーターをリビングのソファーに座ってゴクゴクと飲んでいたのだが
次の瞬間、なんだか、妙にザワザワと
(えっ?……誰か居るの?)
なんとなく人の気配を感じたので、
慌てて後ろを振り向いてみたら、まさにこの直後……!
「お・は・よぉ……夕べはお盛んで?」
なんと!自分の真後ろに立っていた蓮から
めっちゃ鋭い目付きで見下ろされていた事に気が付いたので!
「んぐっ!?」
思わず水を吹き出しそうになった玲は今日も元気に真っ赤な顔で
「そ、そ、そんなんじゃないもん!」
またしても少女漫画的なヒロインをやってしまった挙句の果てに
「もう蓮なんか知らない!」
と顔をそむけて最悪なムードのリビングを出て行こうとしたけれど
この後ついに、ド派手な金髪の弟は……!
なんと、いきなり、ヘタレの玲を白い壁に追い込みながら、壁に肘をついた状態で
「へぇ 龍崎さんって一見硬派に見えるのに……
こんなにフローラルな香りのシャンプー使ってんだねー……」
なんて意味深な言葉を呟きながら
玲の髪を一房手に取って、本当にフローラルな髪の香りを確認した後
「あのさぁ…お前マジで何考えてんの?
また龍崎璃音のセフレ女に苛められたいわけ?
俺はあの時に、河原でヘコんでいた玲に言ったよな?
あの男とはもう二度と逢うなって!はっきりと忠告した筈だよな?」
一応正論をかましながらも今度は玲の顎に手をかけて
壁ドン&顎クイを実演しながらジワジワと玲に迫ってきたから
「ちょっ!何やってんのよ蓮!
痛いから離してよ!それと私の事は全面的に放っといてよー!」
と珍しく大きな声を出した玲はこのままの勢いで
ほぼゼロ距離の蓮を振り切った後すぐに
やっとの思いで玄関に向かって家を飛び出していたが
ピンクのスウェット姿で外出をして10分も経たない内に……
ポツッ…ポツッ……ザァーーッ!!
今にも降ってきそうな灰色の空から大粒の雨に打たれた玲は、
あっと言う間にズブ濡れの、見るも無残な怪しいピンク女になったので……
*****
7月の雨に打たれてズブ濡れになった玲は雨宿りをする為に
自分の家から一番近い公園を目指してダッシュで走った後すぐに
ドーム型の山みたいな遊具の中でチョコンと座って
ザーザーと降り続いている雨が止むのを静かに待っていたけれど
次の瞬間、なぜか、いきなり、唐突に!
「ねぇ…そんなところで何やってんの?」
今度は突然、なんの前触れもない状態で
玲の目の前に3年A組の早瀬翔が現れたから!
(えっ?なんでA組の早瀬くんが残念な公園に居るの?
もしかして早瀬くんも山の遊具で雨宿り?いやいや、そんな訳がないでしょ!
どう考えても蓮を迎えに来たんだよきっと。だって最近うちの蓮は、
早瀬くんと一緒にロックバンドをやってるみたいだし…ん?うちの蓮?
いやいや あんな壁ドン太郎は私に全然関係ないし…って言うか早瀬くんもさぁ、
桜ヶ丘で唯一のボッチで有名な私の事なんて、未来永劫ずーーっと放っといてくれないかなぁ)
と今日も元気に無難な心で吠えまくり、そしてこのあと遊具の中を覗き込む、
クールなイケメン男子の早瀬翔と目が合った瞬間に、これまたいつもの震える声で
「えーっと……あのー……
一人で、その~、か、か、かくれんぼを~……」
もはや正気の沙汰とは思えない返事をしてしまったのに
「へぇ、かくれんぼしてたんだ~。
じゃあ俺が見つけたから…一条さん見っけ~……だね?」
こんなピンクのスウェットで、ズブ濡れ状態の怪しい玲を見ても尚、
いつもと変わらない爽やかな笑顔の早瀬翔は何故かこのままの勢いで
狭いドームの中へと入ってきてすぐに、優しい笑顔で玲の隣にチョコンと座った。
急いで二階に上がって自分の部屋に入った玲は
ベランダの端に置いてある、避難はしごの箱から大きな封筒を出して
(じゃあえっと~、この封筒に入っている~
5枚の書類が時の砂の設計図って事だから~、
えっと秘密の設計図は~、とりあえず……
クローゼットの一番奥に隠しておこうかなぁ……
あっ!でも、えっと、クローゼットに行ったら~
ビデオカメラも出しておいた方がいいよね~?)
とフワフワしている睡眠不足の頭の中で
今からするべき事を考えながらウォークインクローゼットに向かったが
*****
けっこうゴチャゴチャしているクローゼットの棚の中から
さっそく高性能なビデオカメラのセットを取り出した玲は、
慣れた手付きでこのカメラが壊れていないかを確認した後で
「はい はい、全然大丈夫みたいですねぇ。
じゃあ次はバッテリーを充電しましょうかね~」
えっとコンセントはどこだっけ~
って感じのハイテンションな独り言を呟きながら
早速バッテリーの充電を開始したのに、この直後
(あれっ?どうして頭の中で除夜の鐘が鳴ってるの?ん?あれれれ?
なんか急に視界がグルグル回転してきたから…ちょっとだけ仮眠を取ろうかな?)
なんと いきなり、強烈な睡魔に支配された残念な頭の中が
ハンドベルのコンサートみたいな騒がしい状況になったので
これは流石に今すぐ寝なきゃ本気でヤバいと思った寝不足の玲は、
このあと慌ててベッドに直行したけれど……
そもそもオタクのコミュ障に完徹オールナイトは無理ゲーなのだから
人生初の朝帰りで大人になったつもりのヘタレが今から出来る簡単なお仕事は……
せいぜい今すぐ布団に潜って爆睡タイムに入るだけの
プライスレスなバイトだけしかない事は、もちろん今さら言うまでもない。
*****
そして午後の2時までたっぷりと睡眠を取った寝太郎の玲は
目覚めた直後にお婆ちゃん的な携帯電話をパカッと開いて時計の表示を見た途端
(えっ?もうこんな時間になってたの?
朝の7時から午後の2時まで爆睡するとか有り得ないでしょ?
どんだけ疲れてたのよ私!だからこんなに喉がカラカラに渇いているの?)
なんて流暢な独り言を心の中で呟きながらも
とにかくメッチャ喉が渇いていたから、ベッドを出た後いそいで1階の台所に向かい、
冷蔵庫から取り出したミネラルウォーターをリビングのソファーに座ってゴクゴクと飲んでいたのだが
次の瞬間、なんだか、妙にザワザワと
(えっ?……誰か居るの?)
なんとなく人の気配を感じたので、
慌てて後ろを振り向いてみたら、まさにこの直後……!
「お・は・よぉ……夕べはお盛んで?」
なんと!自分の真後ろに立っていた蓮から
めっちゃ鋭い目付きで見下ろされていた事に気が付いたので!
「んぐっ!?」
思わず水を吹き出しそうになった玲は今日も元気に真っ赤な顔で
「そ、そ、そんなんじゃないもん!」
またしても少女漫画的なヒロインをやってしまった挙句の果てに
「もう蓮なんか知らない!」
と顔をそむけて最悪なムードのリビングを出て行こうとしたけれど
この後ついに、ド派手な金髪の弟は……!
なんと、いきなり、ヘタレの玲を白い壁に追い込みながら、壁に肘をついた状態で
「へぇ 龍崎さんって一見硬派に見えるのに……
こんなにフローラルな香りのシャンプー使ってんだねー……」
なんて意味深な言葉を呟きながら
玲の髪を一房手に取って、本当にフローラルな髪の香りを確認した後
「あのさぁ…お前マジで何考えてんの?
また龍崎璃音のセフレ女に苛められたいわけ?
俺はあの時に、河原でヘコんでいた玲に言ったよな?
あの男とはもう二度と逢うなって!はっきりと忠告した筈だよな?」
一応正論をかましながらも今度は玲の顎に手をかけて
壁ドン&顎クイを実演しながらジワジワと玲に迫ってきたから
「ちょっ!何やってんのよ蓮!
痛いから離してよ!それと私の事は全面的に放っといてよー!」
と珍しく大きな声を出した玲はこのままの勢いで
ほぼゼロ距離の蓮を振り切った後すぐに
やっとの思いで玄関に向かって家を飛び出していたが
ピンクのスウェット姿で外出をして10分も経たない内に……
ポツッ…ポツッ……ザァーーッ!!
今にも降ってきそうな灰色の空から大粒の雨に打たれた玲は、
あっと言う間にズブ濡れの、見るも無残な怪しいピンク女になったので……
*****
7月の雨に打たれてズブ濡れになった玲は雨宿りをする為に
自分の家から一番近い公園を目指してダッシュで走った後すぐに
ドーム型の山みたいな遊具の中でチョコンと座って
ザーザーと降り続いている雨が止むのを静かに待っていたけれど
次の瞬間、なぜか、いきなり、唐突に!
「ねぇ…そんなところで何やってんの?」
今度は突然、なんの前触れもない状態で
玲の目の前に3年A組の早瀬翔が現れたから!
(えっ?なんでA組の早瀬くんが残念な公園に居るの?
もしかして早瀬くんも山の遊具で雨宿り?いやいや、そんな訳がないでしょ!
どう考えても蓮を迎えに来たんだよきっと。だって最近うちの蓮は、
早瀬くんと一緒にロックバンドをやってるみたいだし…ん?うちの蓮?
いやいや あんな壁ドン太郎は私に全然関係ないし…って言うか早瀬くんもさぁ、
桜ヶ丘で唯一のボッチで有名な私の事なんて、未来永劫ずーーっと放っといてくれないかなぁ)
と今日も元気に無難な心で吠えまくり、そしてこのあと遊具の中を覗き込む、
クールなイケメン男子の早瀬翔と目が合った瞬間に、これまたいつもの震える声で
「えーっと……あのー……
一人で、その~、か、か、かくれんぼを~……」
もはや正気の沙汰とは思えない返事をしてしまったのに
「へぇ、かくれんぼしてたんだ~。
じゃあ俺が見つけたから…一条さん見っけ~……だね?」
こんなピンクのスウェットで、ズブ濡れ状態の怪しい玲を見ても尚、
いつもと変わらない爽やかな笑顔の早瀬翔は何故かこのままの勢いで
狭いドームの中へと入ってきてすぐに、優しい笑顔で玲の隣にチョコンと座った。
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