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異次元のリア充達

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そしてこの後

長い長い数学の授業が終わり……

やっとの思いで放課後を迎えた玲は急いで教室を出てすぐに、

今日もサッサと自転車に乗って真っ直ぐ自宅に向かっていたけれど……

信号待ちで自転車のブレーキを握る度に、

怪我をした指先が痛くて気分が落ち込んでしまうので、

(なんだか今日は、まだ家に帰りたくないなぁ……)

と思った玲は少し気持ちを落ちつかせる為に、今からどこかへ寄り道をしようと思ったが、

一年を通してボッチの玲が今から気軽に行ける場所なんて

もちろんドコにも存在しないから

*****

とりあえず自転車を降りた玲は街の舗道を歩きながら

今世紀最大級に暗い心を治す為、今日も密かに心の中で、

(じゃあ今からどこに行こうかなぁ……
駅前のゲーセンは常に変な人が居るし、
商店街のファーストフードも変な学生だらけだし~……)

と残念な独り言を呟きながら

自分が一番変な学生である事をシレッと無視して

今からドコへ行くべきなのかを真剣に悩んだけれど

結局、コミュ障の玲が独りで行ける所なんて……

(やっぱ静かな公園とかネットカフェとかお墓とか……
あとはそうだなぁ…動物達が大好きな、桜川の河川敷かせんじき~…とか?)

て感じの浮浪者みたいなスポットだけなので……


(じゃあ取り敢えず~やっぱ河川敷にしようかな?
あそこならお年寄りだらけで気が楽だし、タダで休憩出来るから経済的だし!
…って事で今日は河川敷に決定したから、今すぐ自販機で緑茶~、じゃなくて、
ちょっとオシャレなレモンティーを買って、そしてそのまま一人で河原かわらにレッツゴーだね!)

こうしていつもの様に

意味不明な負け犬理論を脳内でまとめた後すぐに

さっそく夕暮れの河川敷へと向かった迄は良かったが……

古いボロボロのベンチに座ってペットボトルの紅茶を飲んだその瞬間!

*****

ブルン!ブルン!ドドドドドーー!

と煩いバイクのエンジン音が鳴り響き、

そして玲の目の前で、いきなり2台の大きなバイクが同時に止まり、

しかもこの後、唐突に……!

「ねぇねぇ彼女~、こんな所で何やってんの?
ひとりでバードウォッチング?じゃあ俺も仲間に入れてよー」

て感じの派手な弟 一条蓮と、偶然ばったり遭遇したので

とにかく運が悪すぎる地味子の玲は、もちろん密かに心の中で

(もう今日は最悪!何をやっても最悪じゃん私!
やっぱ放課後の寄り道とか、似合わない事をするんじゃなかったよ~)

と呟きながらも、一応平静を装って……


「お、おっ、お腹が空いたから、
えーと今からお弁当とか食べるんだから、あっちに行ってよね!」

とツンデレ的な発言をした直後、

このタイミングで今日は昼ご飯を食べていない事を咄嗟に思い出したので

もう既にいたんだ危険な弁当を膝の上に置きながら、

とにかく目立つ弟の蓮を追い払おうとしたけれど、

次の瞬間、なんと蓮の後ろから!


「えっ?まさかそのヤバい弁当を今から本気で食うつもりなの?
もう夕方の5時を過ぎてるし、マジでお腹を壊すからやめときなよ一条さん」

と心配そうな眼差しの早瀬翔が

何故かいきなり余計なお世話を焼いてきたので、

もちろん玲は翔に向かってドヤ顔で


(別に私がお腹を壊しても早瀬くんには関係ないじゃん。
…って言うかそんな事よりも、なんか早瀬君って最近さぁ、
うちの蓮と一緒にロックバンドをやっているみたいだけど、
はっきり言ってアンタ達二人は別世界の人間だからさ?
悪いけど私の事は、未来永劫ずーーっと放っといてよね!)

…と この際、はっきり言ってやろうと思ったが

桜が丘で女子の人気が常に一位のイケメンで、

リア充の申し子みたいな翔を相手にそんな事が言える日は

未来永劫ずーーっと訪れる事は絶対にないのだから

結局この後2秒でヘタれた負け犬の玲は、今日も元気に下を向きながら


「ぇーっと~…そのぉ…ぉ、ぉ、お構いなく~……」

こうして蚊が泣く様に小さな声で残念すぎる返事をした後、

異次元のリア充達が居なくなるのを一人でジッと待っていたのに

そんな玲の元に向かって足早に歩いてきた蓮は、

何故か優しい顔で玲を見つめて、このままの勢いで


「あのさぁ玲、あんまり上手く説明できないけど、
『あの龍崎璃音』と付き合うって事は、つまりこう言う事だから……
これに懲りたら、あんな有名人と個人的に逢うのはもうやめな?
だって地味な一般人の玲がさぁ、あんなスゲェ御曹司の『本命』になれる訳がないだろ?
どうせ軽~く遊ばれた後で、空き缶みたいにポイ捨てされて終わりだよ玲……」

と常識的なアドバイスをしてくれたから

一応 玲も常識的に

「うん、わかったー」と適当な返事をしてすぐに、今日も無難な心の中で、

(あぁもう私の弟、メッチャうざいなぁ全くもう!)と文句を呟いていたけれど

そんな事よりも派手な金髪の蓮は、この後ついに、

やっと今にもドコか遠くへ行ってくれそうな雰囲気で

「て言うか、お前まだ昼メシ食ってないんだろ?
さっきコンビニで玲の好きなサンドイッチを買ったからさ?
とりあえずコレを食べて元気を出しなよ玲。それと来週の体育祭は絶対に休めよ?」

とニッコリ微笑みながら

コンビニの手提げ袋を玲に手渡した後すぐに


「じゃあ今からスタジオ行って、あの曲を仕上げようぜ翔」

「あぁ、もちろんそのつもりだよ蓮」

こうしてA組の早瀬翔と話をしながらヘルメットをかぶり、

そして銀色のバイクに乗って河川敷から離れてくれたので、

これでやっと一人になれたボッチの玲は密かに胸を撫で下ろしながら

オレンジ色の夕焼け空を今日も独りで眺めていた。
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