上 下
16 / 96

長髪のイケメン副社長 彰

しおりを挟む
そして商店街の『端っこ』に到着した玲は、一旦自転車を降りた後

トムと呼ばれたカラスを捜して狭い道路をグルグルと歩き回ってみたけれど

電線に止まったカラスの『どれ』がトムなのか、

と言う一番重要な事が全くサッパリ分からなかったので

*****

(どうしよう…どのカラスも全部トムに見えてきちゃったよ~)

と密かに呟く諦めの早い玲は、もうこのまま家に帰ろうとしていたのに

この後いきなりPrrrr!とポケットの中から

お婆ちゃん的な携帯電話がブルブルしながら鳴り響いたので


(えっ、何この番号?知らない番号からの着信は取っちゃダメだよね)

と思った玲はこの着信を無視しようと思ったが、

でもひょっとしたら動物からの着信かもしれないし……

もしも可愛い動物が相手なら、そりゃあ喜んで話をしたいと思ったので

ここはひとつ勇気を通話ボタンを押した後

「も、も、もしもし!」

「玲か?今どこにいる?」

「えっと、こんにちはー!貴方は誰ですか?
犬ですか?猫ですか?それともカラスですか?」

「龍崎だ!お前、昨日の給料まだ貰っていないだろう?
直接手渡しで払ってやるから今すぐ桜が丘の第一公園に来てくれるか」

こうして犬でも猫でもカラスでもない

Clubベルサイユの関係者とカオスな会話をしてすぐに……


「えっと、はい、わかりました。
じゃあ あと15分位で公園に到着するので宜しくお願いします」

「わかった……」

と言う事で、このまま会話が終わった玲は

このあと再び自転車に乗って、初めての給料を貰う為に駅前の公園へと急いだが……

**********

この後10分で公園に到着した玲が見た人物は……

どこをどう見ても昨日の夜に事務所のソファーで

オレンジジュースを飲みながら会話をした無言イケメンの男性だったので

結構びっくりした玲は小さく頭を下げながら

(えっと どうして無言イケメンさんが この公園に居るの?
あっ、そうかー!やっぱりこの人もアルバイトだったのね。
それで今日は私の為にワザワザお給料を持ってきてくれたと言う事だから
じゃあ今すぐ彼に、お疲れ様です こんにちは…って感じの挨拶を言った方がいいよね?)

と心の中で自分なりに今の状況を整理して

早速あいさつをしてみようと思ったが、いざ本人を目の前にすると案の定……


「えっとぉ…あの~…い、い、一条ですぅ…はぃぃ」

とまぁこの様に……

やはり今回もコミュ障の玲には普通の挨拶が出来なかったから

(またやっちゃったよ~…どうしよう……)

て感じの玲は元気にヘタレながら

為す術もない状態で下を向いて固まっていたのに……

次の瞬間、玲の前に立っていた人物は、なぜか無言イケメンさんではなくて

「こんにちは 一条さん…」とめっちゃ優しい声を出す、

まるで少女漫画の世界から抜け出して来たかの様に美しい、

長い髪のモデル風イケメンだったから!

なんだか訳が分からない玲は冷凍コロッケみたいに固まっていたのに

*********

そんな玲とはまるで真逆の

威風堂々としたモデル風イケメンの男はこのままの勢いで、

「あぁ、私とした事が……
自己紹介が遅れてしまった様ですね?
申し遅れましたが私は円行寺彰と申します」

…って感じの丁寧な自己紹介をしながらニコニコと微笑んでいるので

いきなり初対面の人にニッコリされたヘタレの玲は更に固まっていたけれど

どうやら今は石像みたいに固まっている場合ではなさそうなので……


(えっと、円行寺彰さんってドコの誰?
…って言うか この人もClubベルサイユのバイトなの?
じゃあ何がなんだかイマイチ訳が分かんないけど
とりあえずこの人にも軽く頭を下げておこうかな?)

と思った対人スキルがゼロの玲は

今日も安定の無言で彰に向かって軽く頭を下げていると

今度はいきなり目の前に現れた無言イケメンさんに手を引っ張られながら

「行くぞ…玲」と無愛想な態度でドコかへ連れて行かれそうになったので

(えっ?…何?)

とは言えない玲は、勿論めっちゃ動揺しながら

思わずついつい正直に……


「あの!ちょっと待って下さい無言イケメンさん!」 

と心の声を漏らしていたが、

 (あっ!ヤバッ!どうしよう……
無言イケメンさんって言っちゃったよーー!)

と心で呟く万年無言女の玲は、この時もう既に……


「無言イケメン……
これは可愛らしい…クックックック!」

こうして秒で彰に爆笑されたので

これである意味 吹っ切れた玲はこのままの勢いで


「ご、ご、ごめんなさい!
でも私、この人の名前を知らなくて…それで あの!
わざわざお給料を届けて下さった事を…その…とても感謝しています」

と珍しくまともな会話が出来たのに

次の瞬間、哀れな玲は、とにかくメチャメチャ運悪く……!


「えっと皆さん、今日は色々と…ぐうぅ……
ありがとうございましたー…ぐううぅぅーーー!」

と突然このタイミングで……

空腹の限界を迎えたお腹が突然大きな音を出したから!

*****

もうこのまま消えてしまいたいレベルの最悪な状況の中で……

(どっ!どっ!どうしよう!!
今度は勝手にお腹が鳴っちゃったよ~!!
確かに今日は朝ご飯を食べなかったけど……
…って言うか、どうして私のお腹は空気が読めないの?)

とは言えない真っ赤な顔のみっともない玲は

このまま無言で下を向く事しか出来なかったのに

そんな玲をジッと見つめるモデル風イケメンは……

この後なぜか、いきなり唐突に……!


「では一条さん、もし宜しければ…… 
これから一緒に御食事でも如何いかがでしょうか?」

と更に胡散臭い笑顔でニコニコしながら

万年ぼっちの玲をいきなり食事に誘ってきたので

もちろん玲はこの後すぐに……!

「いえ、お構いなく!今からコンビニに行く予定ですから!」

こうして即座に彰の誘いを断った。

なぜならどんなイケメンが相手でも、ぼっちでコミュ障でオタクの玲は

見知らぬ初対面の男達と食事に行ける度胸どきょうなんて、1ミクロンも持っていないからだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

この度、青帝陛下の番になりまして

四馬㋟
恋愛
蓬莱国(ほうらいこく)を治める青帝(せいてい)は人ならざるもの、人の形をした神獣――青龍である。ゆえに不老不死で、お世継ぎを作る必要もない。それなのに私は青帝の妻にされ、后となった。望まれない后だった私は、民の反乱に乗して後宮から逃げ出そうとしたものの、夫に捕まり、殺されてしまう。と思ったら時が遡り、夫に出会う前の、四年前の自分に戻っていた。今度は間違えない、と決意した矢先、再び番(つがい)として宮城に連れ戻されてしまう。けれど状況は以前と変わっていて……。

お知らせ有り※※束縛上司!~溺愛体質の上司の深すぎる愛情~

ひなの琴莉
恋愛
イケメンで完璧な上司は自分にだけなぜかとても過保護でしつこい。そんな店長に秘密を握られた。秘密をすることに交換条件として色々求められてしまう。 溺愛体質のヒーロー☓地味子。ドタバタラブコメディ。 2021/3/10 しおりを挟んでくださっている皆様へ。 こちらの作品はすごく昔に書いたのをリメイクして連載していたものです。 しかし、古い作品なので……時代背景と言うか……いろいろ突っ込みどころ満載で、修正しながら書いていたのですが、やはり難しかったです(汗) 楽しい作品に仕上げるのが厳しいと判断し、連載を中止させていただくことにしました。 申しわけありません。 新作を書いて更新していきたいと思っていますので、よろしくお願いします。 お詫びに過去に書いた原文のママ載せておきます。 修正していないのと、若かりし頃の作品のため、 甘めに見てくださいm(__)m

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

溺愛彼氏は消防士!?

すずなり。
恋愛
彼氏から突然言われた言葉。 「別れよう。」 その言葉はちゃんと受け取ったけど、飲み込むことができない私は友達を呼び出してやけ酒を飲んだ。 飲み過ぎた帰り、イケメン消防士さんに助けられて・・・新しい恋が始まっていく。 「男ならキスの先をは期待させないとな。」 「俺とこの先・・・してみない?」 「もっと・・・甘い声を聞かせて・・?」 私の身は持つの!? ※お話は全て想像の世界になります。現実世界と何ら関係はありません。 ※コメントや乾燥を受け付けることはできません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される

奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。 けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。 そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。 2人の出会いを描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630 2人の誓約の儀を描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

イケメン彼氏は警察官!甘い夜に私の体は溶けていく。

すずなり。
恋愛
人数合わせで参加した合コン。 そこで私は一人の男の人と出会う。 「俺には分かる。キミはきっと俺を好きになる。」 そんな言葉をかけてきた彼。 でも私には秘密があった。 「キミ・・・目が・・?」 「気持ち悪いでしょ?ごめんなさい・・・。」 ちゃんと私のことを伝えたのに、彼は食い下がる。 「お願いだから俺を好きになって・・・。」 その言葉を聞いてお付き合いが始まる。 「やぁぁっ・・!」 「どこが『や』なんだよ・・・こんなに蜜を溢れさせて・・・。」 激しくなっていく夜の生活。 私の身はもつの!? ※お話の内容は全て想像のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※表現不足は重々承知しております。まだまだ勉強してまいりますので温かい目で見ていただけたら幸いです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 では、お楽しみください。

淫らな蜜に狂わされ

歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。 全体的に性的表現・性行為あり。 他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。 全3話完結済みです。

処理中です...