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恋するトマトはすき焼きの中 

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そして鋼牙の屋敷を出た恵は

行き先不明のイミフなバスに飛び乗って

バスの窓から全く知らない街の景色を一人でぼーっと眺めながら……

今日も元気に危機感ゼロの爽やかな脳内で

*****

(えっと、ここはどこ?とりあえず日本だよね?
…って言うか右も左も全然わかんないけど
都会のバスは殆どが駅に向かう奴ばっかりだから、
このままドコかの駅前でバスを降りれば問題ないよね~?)

と余裕をかましたが、この後5分も経たないうちに、

見知らぬ駅でバスを降りた恵は光の速さで迷子になったので

ここはひとつ気合いを入れて、適当な電車に乗りながら

便利なスマホで最寄り駅へのアクセスを調べてバスと電車を乗り継いで、

やっとの思いで彰のマンションに帰宅する事が出来たけど

メチャクチャ重い大きな鞄を廊下に置いたその直後、

今夜は美味しいすき焼きを作ると約束していた事を思い出したから、


(さてとー、もうすぐ夕方の4時になるから
ちょっくら彰さんの自転車を借りて近所の高級スーパーに行って、
ボッタクリ的なすき焼きの材料と明日の食材を買おうかな?
でも今後のお買い物は彰さんのアドバイスに従って
ネットスーパーでまとめ買いをした方がいいよね~きっと)

て事を思いながらも、とにかくダッシュで近所のスーパーに向かい、

今日も優雅なクラシック音楽が流れるイミフなスーパーの中を

一人でグルグル歩き回って高い高いと独り言を呟きながら

大量の食材と甘いデザートをごっそり買ってサッサとマンションに帰り、

そしてそのままの勢いでダイニングテーブルの上に大量のレジ袋をガンガン置きながら

なんとなく壁の時計を見てみると、なんと今は夕方の5時だったから……!


(えっ?もう5時になっていたの?
じゃあ今すぐ野菜を洗わないと手遅れになるじゃん!)

と一気に慌てたアホの恵は急いで台所に向かったが

*****

この後テキパキと作業を始めた手際の良い恵は一時間もしないうちに

めっちゃ豪華なすき焼きの準備と台所の掃除を終わらせる事が出来たので……

これでやっと一息つけると思いながらリビングのソファーに移動した恵は

テレビを見ながら冷たいお茶を飲んでいると

次の瞬間、ピンポーン!とインターホンが鳴り響いて、

そしてインターホンの画面には……

いつ見ても美しい彰の姿がバッチリと映し出されていたから


「おかえりなさい彰さん、今すぐドアを開けますね?」

とインターホンに向かって返事をした恵は勿論このまま玄関へと直行したのに

*****

帰宅早々、なぜか熱い眼差しの彰に見つめられた恵は案の定……


「ただいま恵さん……ん?おやおや?
もうすき焼きの準備が出来ているのかい?
でもまだ夕方の6時ですから晩飯の時間には少し早いし、
…て事で今から一緒に泡泡のお風呂に入って、お互いの身体を洗って遊びませんか?フフフッ」

「えっ?泡泡?わ、わ、わかりまし…きゃっ!」


と言う事で……

めっちゃ上機嫌な彰にお姫様抱っこをされてバスルームに向かった恵は

今日も元気に泡のお風呂でたくさん『遊んだ』後すぐに

お洒落なナイトウェアに着替えを済ませてキンキラキンのダイニングに移動して

そしてお待ち兼ねの豪華なすき焼きパーティーを彰と二人で開催したのだが


「ん?これは凄く美味しいすき焼きですねぇ。
トマトが入ったすき焼きなんて初めて食べたよ恵さん、
うんうん、これは最高にうまいから、ぜひ璃音にも教えてあげなきゃね?
…って事でお前もたくさんお肉をお食べ?お前は身体が小さいんだから、
肉も野菜もいっぱい食べて、もっともっと体力を付けてもらわないとね?フフフッ」

「わかりましたー。じゃあ私もお肉のおかわりを頂きますね」

て感じのトマトが入ったすき焼きパーティーがあまりにも楽しかったから

人生で初めての豪華なすき焼きをニコニコしながら食べている恵はこの時まだ……

美しい彰を手に入れる為ならば手段を選ばない、恐ろしい優香の執念に全く気付いていなかった。
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