上 下
50 / 59

カラスのトムとサムライ猫の蛍丸 

しおりを挟む
そして長い夜が明けた翌日の朝5時に

今日もバッチリと目を覚ました恵はこのままの勢いで

グッスリと寝ている彰を起こさない様にそ~っと寝室を出た後で

めっちゃ広いリビングのソファーで冷たいお茶を飲んでいたけれど

今日はとても良い天気だから、思い切って大きなカーテンを開けた後すぐに


(今日もいい天気だなぁ。
て言うか彰さんは昼に出社をするそうだから、
私も今日の午後は青空荘に帰ってみようかな?
一日も早くお婆ちゃん達をココに連れてきてあげないと可哀想だからね。
じゃあちょっと早いけど、今から窓を開けて掃除を始める事にしようかな?)

て事を考えながらリビングの大きな窓を開けてみると

*****

『つうか驚くなよ蛍丸…なんと、あの彰がさぁ、
自宅であるこのマンションにチビの女を連れ込んでいるんだぜ?』

『なっ!それはまことかトム殿よ!つまり難攻不落の彰殿が
セフレ専用で有名な、卑猥なセフレマンションの女子おなごを連れてきたと仰るのか?』

『うんうん、そう言う事ー。けっこう凄いスクープでしょ?へへへ~』

なんと、なんと!

広いベランダのガーデンセットに停まった一羽のカラスと

侍みたいな言葉を話す大きな銀色の猫が

彰の噂話で盛り上がっている所をハッキリと目撃したので……


(セフレ専用の卑猥なマンションって何?
…て言うかドコの誰がそんな部屋を借りるの?
そんな部屋を借りる人が居るとすれば、
セフレ希望のコスプレ軍団しか居ないじゃん。やっぱ過激派は怖いね~)

こうして今日も冴え渡る残念な頭でセフレ専用マンションの存在を知った恵はこの後も


『しかしトム殿よ…なぜ彰殿は今も尚、あのルビーを取り返そうとしないのだ?
たかが剛力組のチンピラやくざを怖がっているようでは
彰殿の宝物であるクリムゾンライトもいつの日か、奴らに盗まれてしまうのではないのか?』

『まぁ実は俺も蛍丸と同じ事を思ってるけど、
いかんせん今の彰は完全にナメられているからさぁ、
ぶっちゃけどうしようもないよね~?そんでもってぇ、
地下2階のCDRを盗まれたらその時は、可哀想だがきっと彰は壊れちまうだろうな』

て感じのトンデモナイ話を聞いたから!

居ても立っても居られない恵はスリッパを履いたままの状態で

めっちゃ広いベランダに向かって足早に歩きながら


「クリムゾンライトって何?地下2階のCDRがクリムゾンライトって事なの?
それともカーネリアンホールの地下ではない、別の地下の話をしているの?
て言うかルビーは絶対に私が取り戻すし、クリムゾンライトも必ず私が守るから、
だからえっと、トムと蛍丸~だっけ?その話をもっと詳しく聞かせてくれないかなぁ」

と恵は単刀直入に、

カラスのトムと猫の蛍丸に向かって真剣な表情で

もっと詳しい話を聞かせて欲しいと言ってみると……


『お聞きなされたかトム殿よ!
また再び玲殿と同じ奇跡が起きて、
我らの言葉が分かる人間が現れたと言う事ですぞ!』

『まぁ確かにこの状況はどう見ても「アレ」だよな?
でも一応とりあえず~、玲の時と同じ質問をしてみるからさぁ、
今回の奇跡を喜ぶのは、俺の質問にこの子が答えた後にしようよ蛍丸』

『なる程なる程、それは良いアイデアでござるなぁトム殿よ』

『じゃあ行くよーおチビちゃん、
3秒で答えてちょうだいね?日本の首都はドコでしょうかー!3,2,』

「はいはい、東京、東京!」

『おぉー!凄い凄い、ビンゴじゃ~ん!
て事で俺の名前はトムでぇ、この猫の名前は蛍丸だから
このノリでおチビちゃんの名前もフルネームで教えてもらおうかな?』

と自然な流れで名前を聞いてくれたから

もちろん恵はいつもの様に明るい声で


「名前を聞いてくれてありがとう皆!
私の名前は星野恵です。つい最近、彰さんの恋人になったんだけど、
色々と事情があって、彰さんのルビーを盗んだマシンガン男を警察に突き出したから、
肝心のルビーがドコにあるのか分からなくて困っているところだけど……
でも剛力組のクルクル若頭に特攻をかければルビーの在処ありかは簡単に分かるから、
とりあえずルビーの件は私がなんとか出来るけど、でもさっきトムと蛍丸が話していたクリムゾンライトが
なんの事だかサッパリわからないからさ?今ここでクリムゾンライトの事を詳しく教えて欲しいの」

こうして一気に話の幅を広げながら


『クルクル若頭とは傑作でござるなぁ恵殿。
そなたの真っ赤な強いオーラは拙者せっしゃにも伝わっておりますぞ?
では説明の上手いトム殿よ、クリムゾンライトの詳細をお願いしてもよろしいか?』

『OK,OK,、じゃあ俺が説明をするね?えっとクリムゾンライトは彰の未発表曲で、
けっこうナルシーの彰が何よりも大切にしている幻の名曲だから、
危機感の薄い彰はその曲のCDRと楽譜をカーネリアンホールの地下2階に隠しているんだよ。
でも地下1階のルビーが盗まれた以上はさ?あの曲が盗まれるのも時間の問題だと思うから、
カーネリアンホールの情報を詳しく知りたいなら俺達に話を聞くよりも、
名誉店長のアベルに色々と聞いた方が絶対に手っ取り早いと思うよ恵』


て感じの有力な情報を色々と教えてもらったが

いきなり彰が作った曲の話をされても恵にはサッパリ訳が分からないから


(CDRと楽譜って事はつまり……
彰さんは作詞作曲が出来る伝説のコスプレイヤーだったの?
それともオブシディアンはコスプレ軍団ではなくて、本物のロックバンドなの?)

と真顔で真剣に悩んでいたけれど

ここでウダウダと考えていても埒が明かないので

(じゃあ明日の初出勤でなんとか一人の時間を作って
名誉店長のアベルに彰さんの話を聞けば、全ての真実が分かるって事だよね?)

と密かに心で呟きながら……


『まぁ乗り掛かった舟だからさ?この際俺がちからになってやるよ恵』

『もちろん拙者も喜んで協力をさせていただきますぞ恵殿』

「皆ありがとう!じゃあ私は地下の調査を頑張るから
皆はクルクル若頭とマシンガン男の情報を集めてくれる?」

こうして出逢った頼もしい友達と力を合わせて

彰の宝物を守る事になったけど、あいにく初出勤は明日からなので……


『じゃあ剛力竜の情報が手に入ったらまた来るからさ?これから宜しくな~恵』

「うん分かったー、ありがとう皆!」

て事で彼らを見送った恵はこの後サッサとリビングに戻り、


「さてと、じゃあ本格的な調査は明日から始める事にして……
とりあえず今日は今から部屋の掃除を済ませて朝食を作って、
彰さんと一緒にマンションを出た後で仏壇ワールドを取る為に
3日ぶりの青空荘へ帰ってみようかな?」

と早速今日の予定を立てながら、

部屋の掃除と朝食の準備を始めたが、この時の恵はまだ、

今日と言う日がとんでもなくワイルドな一日になる事を全く気付いていなかった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

五人姉妹の上から四番目でいつも空気だった私は少々出遅れていましたが……? ~ハッピーエンドへ走りたい~

四季
恋愛
五人姉妹の上から四番目でいつも空気だった私は少々出遅れていましたが……?

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を

澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。 そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。 だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。 そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

わたしは婚約者の不倫の隠れ蓑

岡暁舟
恋愛
第一王子スミスと婚約した公爵令嬢のマリア。ところが、スミスが魅力された女は他にいた。同じく公爵令嬢のエリーゼ。マリアはスミスとエリーゼの密会に気が付いて……。 もう終わりにするしかない。そう確信したマリアだった。 本編終了しました。

婚約者が不倫しても平気です~公爵令嬢は案外冷静~

岡暁舟
恋愛
公爵令嬢アンナの婚約者:スティーブンが不倫をして…でも、アンナは平気だった。そこに真実の愛がないことなんて、最初から分かっていたから。

処理中です...