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シンデレラVS集金ヤクザ 後編

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そしてこの後、その怪しい気配は更にハッキリと

カツッ…カツッ…カツッ…!

と不気味な靴音を立てながら、ボロい階段をジワジワと確実に上がってきて

そして謎の銀縁メガネを掛けたモヤシみたいな男が不気味に微笑みながら

202号室の手前で急にピタッと立ち止まり、しかもキモい裏声で、

*****

「こんばんは星野恵さん、私は剛力組若頭の剛力竜と申します。
今日は可愛い貴女をお迎えにあがりました。しかし こんなに可愛らしい女が
我が剛力組の武闘派組員を手こずらせていたとは正直驚きましたねぇ、ウフフッ」

と無駄に長い自己紹介をした後で、チビの恵を見下ろしながら


「でもね恵さん、うちの大切なフロントの一つである
バンブーファイナンスの集金業務をココまで邪魔された以上は
残念ですが貴女もハルカと同じ風呂に沈んで頂く事になりますから……
では早速俺と二人で、楽しいお風呂屋さんに行きましょうかねぇ、ウフフ~」

こうして早くも初対面の恵を風呂に沈めると宣言したのだが

当の本人はここまでハッキリいかがわしい事を言われても

結局やっぱり恐ろしい石鹸水から離れる事が出来ないので、

風呂に沈めるイコール、風呂で潜水以外の解釈を持たないアホの恵は

今夜も冴え渡るトンデモナイ脳内で……


(じゃあこの男は何?
私と一緒に石鹸水の風呂に沈んで潜水で勝負をするつもりなの?)

と見事な推理をかましていた事は今さら言うまでもないけれど……

そんな事よりも取り敢えず今は、目の前の敵を倒さなければならないから、


「はぁあ?どうして私が初対面のアンタと一緒に
楽しい健康ランドで潜水バトルをしなきゃいけないの?
そんな事をしてもお互い一文いちもんの得にもならないでしょうが!
て言うか剛力組だかなんだか知らないけどさぁ、私はアンタよりも確実に強いから、
今度ハルカさんに何かをすれば、アンタもスカジャン男も全員まとめて病院送りにするからね!」

と今回も一応親切に、

私はアンタよりも強いと言う事をしっかりと教えたその上で、

あいかわらずニヤニヤしている男に向かって正義の拳をかまえたのに

なぜかモヤシみたいな剛力竜は、熱い眼差しでチビの恵を見つめてきて


「なんて可愛い女なんだ貴女は……
こんな出逢いじゃなかったら、剛力組の本家の臭い犬小屋で
大切に大切に貴女を囲って本気の腹パンをしてあげたかったよ……」

と小さな声で訳が分からない事を呟いた後すぐに

突然クルクルと右手を回して不思議なムエタイの儀式を始めながら、

まるで太極拳みたいな動きでコチラに向かってジリジリとカニっぽく歩いてきて、


「でも生憎オレはね?剛力組の若頭ですから、
全員まとめて病院送りにされたら困るんですよお嬢さん。
だからそんな大口を叩く前にウフフ~、まずはこの俺をぉ!
楽しい病院に送ってみれば如何いかがですかぁ?うらあぁああーー!」

と嬉しそうな声でオレを病院送りにして下さいと叫びながら

さらにクルクルと回って恵の顔に右ストレートを出した迄は良かったが


(うわぁ、めっちゃカッコ悪いパンチだなぁ)

と密かに呟く最強シンデレラには、

若頭の眠たいパンチはあまりにも遅すぎたから

いとも簡単に男のパンチを避けた恵は勿論このままの勢いで


(でもこの人はさぁ、まわるパンチがカッコいいと思っている訳でしょ?
それなら私も今回のバトルを記念して、正しい回り方を教えてあげるよクルクル若頭!)

こうして早くもトンデモナイあだ名を付けた若頭に向かってニコッと微笑みながら

物凄い早さで華麗なローリングエルボーを10回ぐらい噛ましたついでに

もうこの時点で半分意識が飛んでいる銀縁メガネの若頭を軽~く蹴り飛ばし、

そしてこの後わずか3秒で、

ガタン!ガタン!ゴットーン!と派手な音を立てながら

ボロボロの階段を転がり落ちた若頭は勿論この後

運転手の組員に介抱されてトットとサッサと退場したので、

*****

今回も余裕で剛力組のヤクザを狩った恵はヒーローみたいに階段の上から

クルクル若頭の黒いベンツが駐車場から消えた事をしっかりと確認した後で

まるで犬猫戦隊のエンディングみたいにエヘッと照れながら、

「さてと~…これで終わりかな?」

と余裕な態度で急いで201号室へと戻ってすぐに、

鞄の中からバームクーヘンを取り出して、

そしてこのままダッシュでお隣さんを訪ねてみたら

☆☆☆☆☆

コンコンコン!失礼しまーす。

あっ、恵ちゃん?ほらほら早く入って入って~。

…と朗らかなムードで部屋の中に案内されたので、

この勢いで安物のバームクーヘンを出した恵はニコニコと微笑みながら


「再びこんばんはハルカさん。
約束通り全員やっつけましたから、
今から皆で夜食のバームクーヘンを食べませんか?」

て感じの常識的な挨拶をしたのに、

なんと、この後、いきなり唐突に!

「ありがとう恵ちゃん、でもお爺ちゃんはもう寝ちゃったからぁ、
今からハルカの部屋においでよ~、えっと私のマンションわぁ、
青空荘の目の前にあるからさ?…って言うか恵ちゃんってプー太郎なんでしょ?
じゃあさぁ、これも何かのえんだからぁ、
Clubベルサイユでメンバーさんをやってみない?
うちの店は結構時給がいいからぁ、次の仕事が決まる迄のバイトには最適だと思うよ~?」

と可愛い声のハルカに突然、

Clubベルサイユでホールメンバーのバイトをやってみないかと誘われてしまったが……


(えっ?Clubベルサイユのメンバーさんって何?)

とは言えない田舎育ちの恵には

ハルカの話す日本語が微妙に理解できないので


「えっと、もちろん行ってもいいけど
でもこんな時間にお邪魔をしていいの?」

て感じの適当な返事でこの会話をごまかしてみたけれど、


「うん、全然平気だよぉ?えっと私の部屋にはね?
お店の写真が沢山あるから~、写真を見ながら仕事の説明をしてあげるよん?
…て事で今からハルカの広ーい部屋でぇ、
一緒にバームクーヘンを食べてぇ、美味しい紅茶を飲もうよ恵ちゃん」

と何故かノリノリのハルカに腕を組まれてお願いされたので

もうこうなったら断れない恵はこの後すぐに

ハルカの部屋へとお邪魔する事になったのだが

そもそも恵は玲と全く同じ様に、

お水のカテゴリが何なのかをサッパリわかっていないから


(えっと倶楽部ベルサイユ?のバイトがサッサと決まれば
まぁ当面はなんとか食い繋ぐ事が出来るから、
ここはひとつハルカさんに甘えて、怪しいクラブでバイトをしてみようかな?)

と心の中で呑気に喜んでいたけれど、

まさかClubベルサイユのオーナーが、初体験のゆきずりの、

しかも鬼嫁から逃げ回っている円行寺彰である事は全く気付いていなかった。
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