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愛しい貴女へ
やさしい夢から醒める時 3
しおりを挟むもくもく、と口を動かす。
今は昼時で"食事"をしているところだ。
「はぁ……私、どうすればいいんだろ。」
呟いて、もう一輪花を摘むと口にいれる。これが、私の"食事"。花を食べる。花弁と、花芯と、たまにがくまで食べてしまうけど、緑の部分は大体美味しくない。苦いか青臭いか、酸っぱいか。
私は"花喰い"だ。人の形をした化け物だ。遠い昔の記憶で、母親がこう呼んだ。
「花喰いちゃん。花喰いの安珠ちゃん。私の、醜い化け物ちゃん。」
と。
そう、飢饉の原因は私だ。私が、花を食べるから。花を食べないと生きていけないから。私が、生きているから。
飢饉が起きるし、苦しむ人も出る。
かろうじて今はまだ飢饉にはなっていないが、齢十六を過ぎて、爆発的に食欲が増してきている。今まで村の害にならない様に道端や山に咲いている花を食べていたが、もう、それでは足りないのだ。
だから先月、柿の花を食べてしまった。他人の家の柿の花を、それも何軒も。
……………あれは本当に間違えた。花喰い以前に、人として問題があった。生きる為としても、やってる事は盗みではないか!
あの事のせいで、村人は腹を立てている。柿も収入の一部だったから。ちょっと、いや、かなり食べ過ぎてしまったので、今年の柿の収入は無さそうなのだ。
しかも、食欲は少しも満たされていない。申し訳なく思いながらも、少しずつ他人の畑の花をいただいている。花が無ければ実はならない。私がこのまま食べ続ければ、確実に飢饉になる。
杏花が街に嫁に行くのも、飢饉の時に村の支援をしてもらうための人質なのだ。
杏花の側にいたい。でも私のせいで杏花は街に行かないといけない。もし私が花を食べなければ、杏花は街に行かないのかな。でもそんな事したら私は死んでしまう。結局、杏花の側にいられない。
どうしたらいいのだろう。どうしたらいいのかわからない。私が"花喰い"なばっかりに……
天高く輝くお天道様がギラギラと下界を照らす。山の中にいても、やはり暑い………。頭がぼーっとして、変な事が頭に浮かんだ。
「一度死んで、花喰いじゃなくなれば…」
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