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冬馬君は遅れたものを取り戻す
文化祭二日目~その1~
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一夜明け、文化祭2日目となる。
俺たちは、いつものように電車で待ち合わせをしていた。
「そういえばね……視線を感じた気がする……」
「ん? 何がだ?」
「いや、文化祭祭の時に……全身を見られているような感じ……最初はお客さんなのかなって思ってたんだけど……家に帰ってからよーく考えてみると……」
「気のせいじゃないと思ったってことか……」
「うん……ただ、嫌な感じがしなかった気がするの……うーん……観察されてるような?」
観察か……メモといい、ストーカーではないのか?
「そうか、実はな……」
言うつもりはなかったが、本人が気にしているようなので伝えることにした。
どっちしろ不安であることに変わりはないが、俺がしっかりしていれば良いことだ。
「メモを取っていた? うーん……」
「まあ、今は気にしなくて良い。何があろうと——俺が側にいる」
「冬馬君……うんっ! ありがとう! せっかくのデートだもんねっ!」
「そういうことだ」
気持ちを切り替えて、文化祭2日目の開催だ。
学校に到着した俺達は荷物を置き、そのままデートとなる。
「何から見ようかな!?」
「何がしたいんだ?」
「憧れてたのは、食べ物をあーんとか……景品があるような出し物とか?」
「まだ食うには早いから、景品系を攻めるとするか」
「うんっ!」
腕に柔らかなものが押し当てられる……!
「お、おい?」
「えへへ~」
まあ、綾が喜ぶならいいか。
まずは……知らない射的からのようだ。
「よーし! 私からやるねっ!」
「まあ、待て……これでよしと。それを見ていいのは——俺だけだ」
綾が鉄砲を打つ際に、スカートから脚線美が覗かれてしまうからな。
なので、俺が真後ろに立つ。
「あ、ありがとぅ……」
「いや、気にするな。俺の独占欲だし」
「はぅ……」
「ほら、やってみ」
「う、うん、狙いは貯金箱! ……えいっ!」
「……おい?」
明後日の方向に飛んでいったぞ?
「あれ? おかしい……もう一回……えいっ!」
カスリもしない。
「可愛いか!」
「えぇ!?」
「ほら、貸してみ」
「うぅー……」
「自分でやりたいのか?」
「う、うん……」
「仕方ない……ほれ、よく見ろ」
背中から抱きしめるように、一緒に銃を持つ。
「ひゃん!?」
「なんだ? 変な声出して」
「だ、だ、だって……」
いや、わかってるけどね?
アレが当たっているのは……せっかく、人が意識しないようにしてるっていうのに。
「ほら、集中しろ」
「は、はぃ……」
「行くぞ……そこだ!」
「えいっ!」
俺が狙いをつけて綾が撃った弾は——貯金箱に命中する。
「やったぁ!」
「おめでとうございます! はい、どうぞ」
「ありがとうございます! えへへー、楽しい」
「良かったな。しかし、なんで貯金箱なんだ?」
「えっと……これ、大きいでしょ?」
郵便ポストの形をした貯金箱は、確かにそこそこの大きさがある。
十万円貯金箱って書いてあるくらいだし。
「ああ、500円玉貯金とかもできそうだな」
「そうなのですっ!」
「ん?」
「あのね……これに、二人で貯金しない?」
「それは良いが、何に使うんだ?」
「何に使うかはわからないけど、いつか一杯になったらこれを使って二人で何かしたいなぁって………」
「これ、結構時間かかるぞ?」
「ダメかな……?」
「いや、ダメなことなどない。それに……嬉しいしな」
「え?」
「この先も一緒ってことだろ?」
「う、うん……そういう意味もあります……」
「じゃあ、いつか貯まったら……旅行でもいくか」
「うわぁ……! いいねっ! 楽しみ!」
その後はお化け屋敷、展示物、占いなどをしていく。
そして、小腹がすいてきたので、屋台で買ったものをベンチで食べる。
「んっ~! おいひい!」
「なんだろな? 祭りとか、こういう時に食う焼きそばとかって美味いよな」
「不思議だよねー。使ってるのはいつも通りなんだけど」
「お化け屋敷はしょぼかったな」
「私達は、前に遊園地の行ってるしね」
「確かに……また、行こうな」
「うんっ! 占いは良かったなぁ~」
「いや、アレは……」
「うん?」
「いや、何でもないです」
占う人を睨みつけていたからなぁ……。
あれじゃ、相性が悪いとか言えないだろうに。
そして、たこ焼きを食べていると……。
「あっ——忘れてた! あ~ん……」
「あーん……もぐもぐ……うん、さっきより美味い」
「えへへー、わ、私も……あーん……」
「あーん……」
「……もいひい!」
「おい、食べてからにしなさい」
「……美味しい!」
「ああ、そうだな。好きな人とすると、何でも楽しいし美味しいな」
「も、もぅ……ずるいです……いつも、不意にそういうこと言うんだもん」
「軽々しく言うものでもないしな。あっ——もちろん、言われるのは好きだぞ?」
「……す、好きです……改まって言うのは照れますね……」
その時、ピンポンパンポンという音が鳴る。
つまり、校内放送だな。
『ご来客の皆様にお知らせします。本日三時より、ミスターコンテストを開催いたします。興味のある方は、是非ご参加ください』
「近づいてきたな……ん? まずい!」
「え? ……一時になっちゃう!」
俺たちは、急いで教室へ向かうのだった。
俺たちは、いつものように電車で待ち合わせをしていた。
「そういえばね……視線を感じた気がする……」
「ん? 何がだ?」
「いや、文化祭祭の時に……全身を見られているような感じ……最初はお客さんなのかなって思ってたんだけど……家に帰ってからよーく考えてみると……」
「気のせいじゃないと思ったってことか……」
「うん……ただ、嫌な感じがしなかった気がするの……うーん……観察されてるような?」
観察か……メモといい、ストーカーではないのか?
「そうか、実はな……」
言うつもりはなかったが、本人が気にしているようなので伝えることにした。
どっちしろ不安であることに変わりはないが、俺がしっかりしていれば良いことだ。
「メモを取っていた? うーん……」
「まあ、今は気にしなくて良い。何があろうと——俺が側にいる」
「冬馬君……うんっ! ありがとう! せっかくのデートだもんねっ!」
「そういうことだ」
気持ちを切り替えて、文化祭2日目の開催だ。
学校に到着した俺達は荷物を置き、そのままデートとなる。
「何から見ようかな!?」
「何がしたいんだ?」
「憧れてたのは、食べ物をあーんとか……景品があるような出し物とか?」
「まだ食うには早いから、景品系を攻めるとするか」
「うんっ!」
腕に柔らかなものが押し当てられる……!
「お、おい?」
「えへへ~」
まあ、綾が喜ぶならいいか。
まずは……知らない射的からのようだ。
「よーし! 私からやるねっ!」
「まあ、待て……これでよしと。それを見ていいのは——俺だけだ」
綾が鉄砲を打つ際に、スカートから脚線美が覗かれてしまうからな。
なので、俺が真後ろに立つ。
「あ、ありがとぅ……」
「いや、気にするな。俺の独占欲だし」
「はぅ……」
「ほら、やってみ」
「う、うん、狙いは貯金箱! ……えいっ!」
「……おい?」
明後日の方向に飛んでいったぞ?
「あれ? おかしい……もう一回……えいっ!」
カスリもしない。
「可愛いか!」
「えぇ!?」
「ほら、貸してみ」
「うぅー……」
「自分でやりたいのか?」
「う、うん……」
「仕方ない……ほれ、よく見ろ」
背中から抱きしめるように、一緒に銃を持つ。
「ひゃん!?」
「なんだ? 変な声出して」
「だ、だ、だって……」
いや、わかってるけどね?
アレが当たっているのは……せっかく、人が意識しないようにしてるっていうのに。
「ほら、集中しろ」
「は、はぃ……」
「行くぞ……そこだ!」
「えいっ!」
俺が狙いをつけて綾が撃った弾は——貯金箱に命中する。
「やったぁ!」
「おめでとうございます! はい、どうぞ」
「ありがとうございます! えへへー、楽しい」
「良かったな。しかし、なんで貯金箱なんだ?」
「えっと……これ、大きいでしょ?」
郵便ポストの形をした貯金箱は、確かにそこそこの大きさがある。
十万円貯金箱って書いてあるくらいだし。
「ああ、500円玉貯金とかもできそうだな」
「そうなのですっ!」
「ん?」
「あのね……これに、二人で貯金しない?」
「それは良いが、何に使うんだ?」
「何に使うかはわからないけど、いつか一杯になったらこれを使って二人で何かしたいなぁって………」
「これ、結構時間かかるぞ?」
「ダメかな……?」
「いや、ダメなことなどない。それに……嬉しいしな」
「え?」
「この先も一緒ってことだろ?」
「う、うん……そういう意味もあります……」
「じゃあ、いつか貯まったら……旅行でもいくか」
「うわぁ……! いいねっ! 楽しみ!」
その後はお化け屋敷、展示物、占いなどをしていく。
そして、小腹がすいてきたので、屋台で買ったものをベンチで食べる。
「んっ~! おいひい!」
「なんだろな? 祭りとか、こういう時に食う焼きそばとかって美味いよな」
「不思議だよねー。使ってるのはいつも通りなんだけど」
「お化け屋敷はしょぼかったな」
「私達は、前に遊園地の行ってるしね」
「確かに……また、行こうな」
「うんっ! 占いは良かったなぁ~」
「いや、アレは……」
「うん?」
「いや、何でもないです」
占う人を睨みつけていたからなぁ……。
あれじゃ、相性が悪いとか言えないだろうに。
そして、たこ焼きを食べていると……。
「あっ——忘れてた! あ~ん……」
「あーん……もぐもぐ……うん、さっきより美味い」
「えへへー、わ、私も……あーん……」
「あーん……」
「……もいひい!」
「おい、食べてからにしなさい」
「……美味しい!」
「ああ、そうだな。好きな人とすると、何でも楽しいし美味しいな」
「も、もぅ……ずるいです……いつも、不意にそういうこと言うんだもん」
「軽々しく言うものでもないしな。あっ——もちろん、言われるのは好きだぞ?」
「……す、好きです……改まって言うのは照れますね……」
その時、ピンポンパンポンという音が鳴る。
つまり、校内放送だな。
『ご来客の皆様にお知らせします。本日三時より、ミスターコンテストを開催いたします。興味のある方は、是非ご参加ください』
「近づいてきたな……ん? まずい!」
「え? ……一時になっちゃう!」
俺たちは、急いで教室へ向かうのだった。
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