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冬馬君は遅れたものを取り戻す

お互いに萌える

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 昨日の帰り道は、特に何事もなく帰ることが出来た。

 意識してみたが、俺の感覚的にも見られているような感じはしなかった。

 とりあえずは、毎日一緒に帰ること。
 バイトの帰りは、人の多い場所を通ること。
 親父さんにも、俺の方から連絡を入れておいた。
 綾のお母さんにも伝えたし……。
 あとは、歯がゆいが様子をみるしかない。

 何処のどいつか知らないが……覚悟しろ。
 俺の大事な女を怖がらせたこと、後悔させてやる……!



 そんなことがあったので、気を張っていたが……。

 放課後にて、そんな俺の気は——緩んだ。

「ど、どうかな……?」

「……………」

「おい、清水さん……パネェな」

「似合いすぎだろ……」

「脚長っ!綺麗……」

「エロ……」

 俺は——そいつらをひと睨みして黙らせる。

「冬馬君……あの、目が怖いよ……?」

「やべぇ」

「え?」

「俺にはこの可愛さを表現できない……!ヤベェという陳腐な言葉しか……!」

「あ、ありがとぅ……褒められてるんだよね……?」

「当たり前だっ!!」

 完成したメイド服に着替えた綾は……可愛い。
 いや、綺麗?天使?女神?
 とにかく、そんな感じだ。

「え、えへへー……は、恥ずかしいけど、頑張って良かったぁ~」

 カチューシャも良く似合い。
 黒のニーソは言うまでもなく、長い脚に似合い。
 ミニスカートから見える太ももは——もはや、凶器である。
 さらには……学校の規定に従い、あえて胸元は隠してあるタイプのメイド服。
 しかし……それが余計にエロスを醸し出している……。

「あ、綾……お、お帰りなさいませって言ってくれるか?」

「う、うん……ご主人様、お帰りなさいませ」

「グハッ!!」

 言うまでもなく、俺は膝から崩れ落ちる……!

「だ、大丈夫!?」

「あ、ああ……これって……貰えるのか……?」

「え……?う、うん……貰えるって……」

 え?これでアレがアレでアレしてもらえたら……ダメだ!
 そんな変態みたいなことを要求できるかっ!
 俺は吉野冬馬!男の中の男を目指す男だっ!

「チ、チクショョ——!!」

「と、冬馬君!?」

 俺は教室を出て、廊下を駆け抜けるのだった……。


 ぐるっと一周して帰って来た時、綾は上からセーターを着ていた。

「あっ——冬馬君、お帰りなさいませ……間違えちゃった……」

「いや、合っている。何回でも聞きたいくらいだ」

「吉野ー、綾に着せといたからねー。男子の視線が凄かったからー」

「全く……まあ、無理もないことね」

「ナイスだ!森川!良くやってくれた!」

 もう少し見ていたかったが、仕方あるまい。

「でもね……吉野……当日は、もっと見られちゃうよ?」

「……………」

 そ、そうだった——!!
 ど、ど、どうする!?
 今から辞めさせる!?
 いや……綾は楽しみにしているし、意外と楽しんでいる。
 これは……俺の全力を尽くして守るしかあるまい……!

「冬馬君……嫌かな……?冬馬君が嫌なら……」

「綾」

「は、はぃ……」

「俺を見損なうなよ?そんな器の小さい男に成り下がるつもりは——毛頭ない。遠慮なく着て楽しむといい。それを邪魔する奴は——俺が排除する」

「うん!ありがとう!冬馬君!実は、すっごく楽しみなのっ!こういうイベントとか、去年は出れなかったから……」

「うん?どういう意味だ?」

「綾がねー表に出ちゃうと……人が押し寄せて、収拾がつかなくなっちゃうからねー。でも、今回はアンタがいるから平気でしょー」

「そういうことか……ああ、もちろんだ」



 その後、順番ということで俺たちの番となる。

 つまりは、執事服に着替えた。

「はぅぅ……か——カッコいいです……」

「そうか?普通じゃないか?」

「ううん!肩幅あるから、すごく似合ってるよ!姿勢も良いから、凄くそれっぽいし!」

「なら良かったよ」

「そ、それに……眼鏡が……オシャレ眼鏡だから……素敵……」

「綾お嬢様、ありがとうございます」

「はぅ!あぅぅ……」

 耳元で囁くと……今度は、綾が膝から崩れ落ちた。
 ふふ……やったぜ!

「ねえ?アンタら?ここ、教室だからね?」

「無駄よ、愛子。もう諦めましょう」



 その後、お互いに記念写真を撮る。

「うわぁ……!良いっ!」

「綾はサイドテールがよく似合うな」

「そ、そうかな?」

「ポニテも捨てがたいが、サイドテールが1番好きかもしれん……」

「ちょっと!?冬馬!?」

「げげっ!?小百合!?」

 「どうやら、間に合ったようね……綾さん……貴方のメイド姿……カハッ!?」

 小百合も綾のメイド服姿に崩れ落ちた。
 無理もないことだ、最早——テロだ。

「さ、小百合さん!?」

「で、どうした?」

「メイド服姿を撮りに来たに決まってるわ……!当日は、私にそんな暇はないもの……!」

 まさしく……鬼気迫る表情だ。

「綾、悪いが撮らせてやっていいか?」

「う、うん……」
 
「冬馬!感謝するわ!持つべきものは可愛い彼女持ちの友達ね!」

「……ブレない奴……」



 その後、写真を撮ったが……。

「おい?どうした?」

「次は貴方よ。その姿……いいわね——萌えるわ」

「おい?……ネタにするなよ?」

「冗談よ。それを宣材写真にしましょう。ミスターコンテストの」

「あっ——素敵ですね!良いと思う!」

「まあ……別に構わないが」

「では、撮っていきましょう」

「どうても良いが……お前、撮るの慣れ過ぎじゃね?」

「愚問ね……コスプレマニアでもある私は——カメコでもあるわ!」

「そ、そうか……」

 こうして文化祭の準備が整った。

 後は、前日に皆で最期の仕上げをするだけとなる。

 ……さて、文化祭が始まる前には片をつけたいが……。
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