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冬馬君は遅れたものを取り戻す

冬馬君は久々の放課後デートをする

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 俺はなんとか真兄を押さえこみ、午後の授業を受ける。

 そして、放課後を迎える。

 つまり……久々の学校帰りにデートというわけだ!

「よし、いくとするか」

「うん!愛子!加奈!またねー!」

「綾、しっかりやるのよ?」

「綾~、頑張ってね~!」

「ん?何を頑張るんだ?」

 今日は頑張るような場面はないと思うが……。
 ただ、ふつうにデートの予定だったよな?

「ううん!わ、私はいつも頑張るの!」

「そ、そうか」

 なんだが言い返せる雰囲気じゃないな……。
 まあ、様子を見るとしますか。



 校門を出たところで、今日の予定を決める。

「さて、今日はどうする?何かリクエストとかはあるか?」

「う~ん……あっ——新しく出来た総合施設に行きたいかも。運動もできるし、色々なゲームもできるって」

「あぁー……確か、学校近くにできたって聞いたことあるな」

「そうなの!私も身体動かすの嫌いじゃないから行きたかったんだけど……ていうか、行ったんだけどね……」

「なるほど……まあ、綾はドジっ子だが運動神経は良いからな」

「むぅ……否定ができないです……」

「俺はそんなところも好きだけどな?で、男共が寄ってきたわけだ?」

「す、好きって……う、うん……そうなの。それで、加奈や愛子にまで寄って来ちゃって……」

「まあ、2人とも容姿が良いからな。もちろん、俺は綾が1番可愛いがな」

「……えへへ~、嬉しい……言われ慣れてるのに、なんでこんなに嬉しいんだろうね?」

「そんなの……綾が俺を好きだからだな」

「自分で言った!?……で、でも、そういうことなのかも」

「ちなみに、俺も綾にかっこいいとか言われるのは嫌いじゃない」

「か、カッコいいです!私の彼氏は世界一です!」

「いや、それは言い過ぎだろ……」

「ううん!私にとってはそうだもん!」

「お、おう」

「えへへ、照れ顔だぁ~」

「はいはい、負けましたよ」



 そんな会話をしながら、入り口に到着する。

 ……だが、入り口にて問題発生だ。

「おい?あれって……」

「桜田高校のマドンナ……いや、この一帯のマドンナ……」

「清水さんだ!か、彼氏ができたって噂は本当だったのか……」

「信じたくないから確認しなかったのに……」

「どんな男かと思ったけど……なんだ?お似合いに見える……?」

「男の方も男前だが、清水さんに釣り合うかと言われるとそうは見えないのに……」

「なんだろ?空気感?一緒に並んでて違和感がない……」

「ハァ……しかも、清水さんめっちゃ笑顔じゃん……」

「ベタ惚れって噂は本当だったんだ……」

   
 ……なるほど、これはこれないわけだ。
      
「他校の生徒が多いな……まあ、田舎だから遊ぶ場所が被るわな」

「はぅぅ……み、見られてるよぉ~」

 フゥ……さて、綾に楽しんでもらうためには……。
 意識的に威圧感を発揮する……!
 手こそ出さないが、目で殺すつもりで……!

「ヒィ!?」

「な、なんだ!?」

「ゾワってしたぞ!?」

 男共が退いていき、受付までの道が開ける。

「か、カッコいい……好き……」

 腕を組まれた際に、柔らなモノが当たるが気にしてはいけない。
 少しでも気にしたらダメだ!にやけてしまう……!



「フゥ、なんとかなったな」

「えへへ、ありがとう!冬馬君!」

「いいってことよ。さて、何からやる?」

「あれやりたい!ローラブレード!」

「へぇ、そんなのもあるのか」




 料金を払って準備を済ませる。

「スケートの要領なら……うん、問題なしだな」

「冬馬君!すごい!経験者なの!?」

「いんや、初めてだ。まあ、アイススケートはやったことあるけどな」

「わわっ~!た、立てないよぉ……どうやって立ったの?」

「ほら、手を出して」

「は、はぃ……」

「なぜ頬を染める?」

「だ、だって……その仕方ないなぁみたいな言い方……好きなんだもん、キュンとしちゃうんだもん……」

「そ、そうか」

 ……俺の方がキュンとしてるっつーの!!
 なんだ!?その可愛い言い方は!?

 動揺を抑えて、綾の手を引く。

「あわわっ、と、冬馬君!」

「大丈夫だ、離さないから」

「は、はぃ……あれ?冬馬君……後ろ向きで平気なの!?」

「ん?ああ、問題ない。コツさえつかめばな」

「や、やっぱり運動神経良いんだね……ひゃあ!?」

 バランスを崩した綾を、抱きしめる形で受け止める。
 ……やらかいし!良い匂いするし!ヤバイ!

「だ、大丈夫か?」

 俺のアレは大丈夫じゃないですけどねー。

「う、うん……ごめんなさい。これじゃ、冬馬君が楽しめないね……」

「シュンとすることはない、俺は十分楽しんでいるさ。俺は綾がいれば楽しいよ」

「わ、私もです……はぅぅ……最近、ホントにストレートだよぉ~」

「嫌なら控えるが?」

「……その顔……むぅ……イジワル……わかってて聞いてる」

「ククク……バレたか。悪いな、俺の存外に楽しいみたいだな」

「そうなの?」

「ああ、綾がいるのももちろんだが……こういう青春を過ごして来なかったからな……一年の時は人に関わって来なかったからな……」

「あっ——それ……事情は違うけど、私もかも……」

「ん?ああ、そういうことか。前も言っていたな。友達はいたけど、中々自由には行動できないって」

「うん……さっきみたいな状態になっちゃうから……」

「まあ、前にも言ったが……好きなことをしていいからな。俺は何にでも付き合うから。それが、俺が楽しい事でもあるし」

「冬馬君……えへへ、嬉しい!じゃあ、2人で青春を謳歌しようね!」

「おっ、それ良いな。さて、では楽しむとしますか」

「でも、私上手くできないよ?」

「……あっ——それで行こう。綾、俺の腰に掴まると良い」

「え?う、うん……こう?」

「しっかり掴まってろよ?」

「うん!」

「よっしゃー!行くぜ——!!」

 足に力を入れて、軽快に走り出す!

「わぁ~!!すごいすごい!遊園地みたい!」

 綾を引っ張りつつも、全力でレーンを走る!

「ふははは!どうだ!?これならば問題ない!」

「は、速いよぉ~!でも……楽しい!」

 ……ホッ、良かった。

 好きな子には笑顔でいて欲しいからな。

 ……ただ……これ、いつまでやれば良いのだろうか?
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