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冬馬君は平和な日々を取り戻し……

冬馬君は学校の行事に参加する

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 翌日の放課後は、文化祭の準備をすることになった。

 部活連中は忙しいだろうから、こういう時は帰宅部が頑張らないとな。

 去年はそんなことも思わなかったのに、変われば変わるもんだな……。

 今は教室にて、田中君……敬介と看板作りをしている。

「敬介、釘を打つからそっち押さえてくれ」

「う、うん!わかったよ!と、冬馬君……」

「乙女か!何故照れる!?」

 名前呼びをすると、田中君は照れるのだ。
 しかも、俺の名前を呼ぶ時も吃るし……。

「だ、だって……友達を名前で呼んだことないから……呼ばれることも……」

「だから乙女か!!」

「ウンウン……守ってあげたい系田中君と、男前系の冬馬……悪くないわね」

「うおっ!?いつの間に!?」

「あ、あれ?生徒会長さん……?」

「失礼ね、冬馬。まるでバケモノに会ったかのような顔して」

「いや、ある意味あって……ないデスねー。はい、ごめんなさい」

 こいつは百合もいけるくせに、BLもいけるクチだからなぁ……。
 なんという恐ろしい女だぜ……!

「と、冬馬君が押されてる……凄いや……」

「ハァ、全く……田中君ね?一応名乗っておきましょう。生徒会長で、冬馬の腐れ縁の中条小百合よ。いつも悶えさせてもらってるわ、ありがとう」

「え?あ、はい、どうも……?」

「敬介、無視していいから。ていうか……お前か!諸悪の根源は!!中学の時だってアキと俺を変な風にしやがって……!」

 何やら最近俺と敬介が話していると、一部の女子がヒソヒソと話し出すのだ。
 てっきりタイプが違うとか、似合わないとか言われてると思っていたが……。

「あら?気づいた?創作意欲が湧いて……」

「ヤメロォォ——!!いや、ヤメテください!!」

「仕方ないわね、自重するわ」

「ハァ……で、何しに来たんだ?昨日会ったろうに……」

「何って可愛い子を見に来たのよ。このクラスは色々な意味で好きだわ」

「おい」

「冗談よ、冗談」

「全くそうには聞こえなかったのだが?ハァ——で、なんだ?」

「お金を管理してるのは誰かしら?材料費や当日の料金などについて聞きたいのよ」

「あっ!僕、呼んできますね!」

 敬介はそう言い、教室から出て行った。
 アイツは良いやつだよな。

「……生徒会長は、そういうのもするのか?」

「少し人手が足りなくて。だから、私が全体をフォローしている感じね」

「ご苦労さん。あぁ——あれだ……俺に出来ることがあれば言ってくれ。なんでもとは言えないが、少しは手伝うからよ」

「あら?どういう風の吹きまわしかしら?」

「いや、まあ……お前にも心配かけたからな。それに、今回の文化祭は楽しみにしてるんだよ。だから、俺に出来ることならしようかなと思ってな」

「そう……良い心がけね。では、早速頼み事があるのよ」

「……その顔……初めからそのつもりで来たな……?」

「いえ、気のせいよ」

「……全く、相変わらずだな。で、俺に何をしろと?」

「ミスターコンテストに出場してほしいわ」

「はぁ!?俺が!?」

「ええ、貴方が。去年の優勝者のアキも出るけど、対抗馬がいないと盛り上がらないし。かと言って、一年生には期待の新星はいなかったし。貴方なら、アキとはタイプが違うから良いと思うのよね。アキは優男イケメン、冬馬は正統派男前って感じで」

「……いや、それは……うーん……」

「これは貴方の為でもあるのよ?」

「ん?どういう意味だ?」

「まだ、清水さんとのことを認めてない……よく思ってない人はたくさんいるわ。告白だってされているでしょうね。きっと心優しい彼女は、色々な意味で辛いでしょうね。断るのもそうだし、冬馬にも悪いなと思っているでしょうね」

「……それは……そうだな。俺が出れば少しはマシになるということか……」

「ええ、貴方が本気を出せばね。見せつけてあげなさい、貴方の本気を」

「どこまでやれるかわからないが……やってみるか……!綾のために……!」

「まあ、一応彼女には許可を得なさいね。場合によってはイヤだろうし。あら……タイミング良いわね」

 廊下から綾の声が聞こえてくる……。
 確か衣装の確認をするとか言っていたな。
 だから家庭科教室に行ってくると……。

「は、恥ずかしいよぉ~!」

「何言ってんの!見てもらわないと!さっき自分で言ってたじゃん!」

「で、でもぉ~……」

 ……なんだ?メイド服でも来てきたのか?
 いや、まだ完成はしてないはず……。
 すると、教室の扉が開き……。

「綾、今すぐに写真を撮ろう」

「あ、あの……ふぇ?と、冬馬君……?」

「冬馬、良いこと言ったわね。綾さん、撮るわよ」

「あ、あのぅ……小百合さん……?2人とも目が……」

「「さあ!早く!!」」

「は、はぃ……」

 綾は……ワイシャツにセーターを着ていた。
 つまり、セーラー服ではないということだ。
 しかも、萌え袖だし。
 靴下はダボダボだし。
 終いには……超絶ミニスカートだ!!

「むむむ……!ギャル系ファションはどうかと思っていたが……可愛いな。ていうか、脚が長くて綺麗だ」

「あ、ありがとぅ……似合わないかなって思ったんだけど、愛子が着なさいって……」

「ふふ~ん!どうよ!」

「森川!ナイスだ!」

「森川さん!良い仕事したわね!」

 俺と小百合はシャッターを連打する。

「あ、あぅぅ……!」

「よし、これで勘弁してやろう……ていうか、何故お前まで?」

「いいじゃない。可愛い子を独り占めはズルいわよ」

「……まあ、お前なら良いけど。言っておくが……」

「悪用はしないわよ。約束するわ」

「なら良い。綾、ありがとな。俺のために着てくれたんだろ?」

「う、うん……そうです」

「ギャップ萌えというやつだな。ウンウン、可愛い」

「はぅ……で、でも……頑張って良かったぁ~」



 その後、綾達は着替えに戻って行った。
 こっちも敬介が戻って来て、作業を再開する。

「ヘェ~!ミスターコンテストかぁ……僕、応援するよ!」

「ありがとよ。まあ、綾の許可を得てからだけどな」

「あっ、そうだよね。冬馬君がモテちゃうのもあれだよね……」

「まあ、そんな心配はないんだかな。俺は、綾が好きということを全開でアピールしているからな」

「うわぁ~、カッコいいなぁ。僕も見習いたいな」

「ん?気になる子でもいるのか?」

「ううん、そういうわけじゃないよ。ただ、僕も変わっていかなきゃなぁと思って」

「いや、もう変わってるよ」

「え?」

「堂々と目を見て話すようになったし、運動部の奴らとも普通に会話してるだろ?」

「う、うん……まだ、少し緊張するけど……」

「何より……

「それって……あっ……そういうことかぁ」

「意識の変化ってやつだな」

「これも冬馬君のおかげだね!ありがとう!」

「いやいや、本人が頑張ったからだよ」

 ……でも、そうだよな。

 人は変われるし、変えられるんだな。

 ……よし!今度は皆の意識を変えてやる!

 ミスターコンテスト……正直言って、どこまでやれるかわからないが……。

 俺なりの全力を尽くして頑張るしかあるまい……!
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