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冬馬君は自重……

冬馬君はハイスペック男子

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 翌朝起きると、時間がいつもより早いことに気づく……。

「あれ?なんで、目覚ましがいつもより早いんだ……?あっ、そうか……」

 髪型をセットするから、10分早く目覚ましをかけたんだな……。

 一階に行き、朝の支度を済ませる。

 そして、最後に髪をセットする。

「お兄!……うん!いいね!じゃあ、おっ先ー!!」

「はいよ、気をつけてな」

 俺もセットを済ませ、学校へ向かう。




「冬馬君!おはよ!」

「おう、おはよ」

「今日は、体育あるね。どうするの?」

「ん?ああ……綾は、どうして欲しい?」

「え?……中々に複雑です……カッコいいところ見たいし、でもモテちゃうし……」

「モテないから。仮にモテても関係ないな。俺は……綾に夢中だからな」

「と、冬馬君……エヘヘ、わ、私も……」

 ……おっと、いかんいかん。
 ここは公共の場であった。
 我慢しなくてはな。




 そして午前中、体育の授業の時間になる。

 バスケか……久々だな。

「おい!吉野!」

「ん?どうした?奥村」

 オラオラ系のサッカー部のやつだな。
 ……まだ、認めてない奴筆頭だな。

「あぁ!?なに、タメ口聞いてんだよ!?」

「はぁ?お前は馬鹿か。なんで、同級生に敬語使わなきゃならん」

「な、なんだと!?お前、調子に乗るんじゃねえぞ!」

「ほら!そこ!なにやってる!!」

「チッ!名倉か……まあ、見た目と頭は良くなったみたいだな。だが、運動神経はどうだかな。今日は、女子が隣にいるからな。恥かかせてやる」

「あっそう、ご自由に」

「て、テメー……!」

「奥村!まずいって!名倉さん睨んでるぜ」

「佐々木……まあ、いい。楽しみだぜ」

 ……やれやれ、イキらないと自分を保てないのか?
 面倒だな……潰すか。
 完膚なきまでに……。

 そして、試合が始まる。

 俺は田中君と、その他のメンバーの5人だ。

 長身で線の細い好青年の、バスケ部の中野。
 長身でガタイが良く平凡な見た目の、陸上部の加藤。
 身長が低いが可愛い系の、茶道部の藤田。

 この5人が、即席チームだな。
 これは、真司さんが振り分けて決めたものだ。

 対戦チームには、佐々木と奥村がいるな。
 これは、ちょうどいい。

「よし!始めるぞ!」

 真司さんがボールを持って、コートの中央に立つ。

「吉野君、随分雰囲気違うけど、バスケは?」

「中野君か……まあ、そこそこできるかな」

「そっか……じゃあ、お試しも兼ねてボール渡すから」

 そう言い、コートの中央に行く。
 相手から、奥村が出てくる。

「よし、いいな。では、行くぞ!」

 真司さんがボールを上に投げる!

「ハァ!」

「クソッ!」

 中野君が空中戦を制し、俺にボールを渡す。

 ……よし、やるか。
 俺は全力で走り、一気にゴール下に向かう!
 そして、佐々木とその他を抜き去る!

「はぁ!?早えぞ!?」

「おい!佐々木!抜かれてんじゃねえよ!」

 そしてそのまま跳躍し、ダンクを決める!

 ……よし、なまってないようで安心だ。
 これならいけるな。

 ……ん?なんか静かだな。

「す、すげーー!!吉野君!今からでも、うちに来ないか!?」

「いやいや!あの足の速さは陸上部だろ!!」

「な、なんだ……?あのやろう、運動神経までいいのかよ……!」

「すまんな、2人とも。俺は、本気の部活には入れないんだ。まじめにやってる人達に失礼だからな。ただ、そう言ってくれるのは単純に嬉しい。ありがとな」

「……へぇー、こっちが本当の吉野君か。じゃあ、遊びならいいかな?」

「ああ、それならいつでも」

「おっ!いいね!」

 まあ、この2人は悪い奴ではないからな。
 無理に断る必要もないだろう。
 それに、円滑な人間関係のためにもな。

 その後も、俺は点を取り続ける。
 そして終盤になった時、悲鳴が聞こえた。

 俺がそちらを振り向くと、綾が膝を押さえてしゃがんでいた。
 俺は迷わずに、女子側のコートに行く。

「綾!どうした!?」

「と、冬馬君……ちょっと、転んじゃって……捻っちゃったみたい……」

「あらあら、彼氏さん。運動神経まで良かったのね。綾ったら、見とれて怪我したみたいよ?」

「ちょっと!?加奈!!」

「黒野、それは本当か?」

「アタシも見てた。もう、見とれちゃってたね。まあ、気持ちはわかるけどねー。吉野、アンタはハイスペック男子だったんだねー」

「森川……では、俺の責任だな」

「え!?ち、違うよ!冬馬君は悪くないよ!わ、私が……カッコイイなって思って、見とれちゃっただけなの……」

「相変わらず、可愛い奴だな……俺の彼女は」

 俺は綾の足と肩に手を回し、ゆっくりと持ち上げる。

「え?ひゃあ!?と、冬馬君!?」

「「「キャーーー!!!」」」

「いいから、首に手を回しな……よし、しっかり掴まってろ」

「あら……綾、良いわね。お姫様抱っこだなんて……憧れよね」

「ヒュー、やるじゃん!」

「真司さん!俺、保健室行ってきます!」

「あいよ!」



 俺はゆっくりと、保健室へ向かう。

「と、冬馬君……ご、ごめんなさい……」

「気にするな。むしろ、役得だ」

「えぇ!?そ、そ、そんなこと……お、重くない?」

「逆に軽すぎるくらいだ。俺の方こそ、ごめんな?綾の前で、カッコつけたかったんだよ」

「あ、え、そ、そうなんだ……か、カッコ良かったです……と、とっても……」

 綾の頬が赤くなる……可愛いな、おい。
 ……あー、ダメだ。
 これはダメだ。
 授業中だから、人はいない……よし。

「と、冬馬君……?ッーー!んっ……」

「すまん、我慢できなかった」

「キ、キスされちゃった……学校なのに……は、恥ずかしいよぉ……」

 ……もう一度したくなるな。

 ……だか、自重するとしよう。

 いや……すでに、自重できてないか……?

 ……まあ、いいか。
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