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冬馬君は彼女のために……

冬馬君はこれでもかと見せつける

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 俺の大好きな女の子が、真っ直ぐに俺を見ている……。

 何やら、ポーッとしているな……どうしたんだ?

「おい、綾……綾さん……?おーい、綾」

 俺は綾に近づき、頬に優しく手を当てる。
 そして、頬にそっとキスをする。

「ひゃい!?と、冬馬君!?み、みんな見てるよ!?」

「まあ、いいだろう。仕方あるまい、お前が可愛すぎるからだ」

「「「キャーーー!!!」」」

「え!?アレが!?」

「例の噂の奴か!?」

「全然つりあってんじゃん!男前じゃん!」

 とりあえず、外野は無視しよう。
 あとは、勝手にやってくれるだろう。

「あう……でも、でも……」

「まあ、いいじゃんか。よっ、綾。1位おめでとうだな。凄えな」

「と、冬馬君だよね……?」

「ああ、そうだ。なんだ?この格好変か?」

「ううん!か、格好いいです!と、とっても!でも……」

「そうか、ならよかったよ。ほら、行くぞ」

「あっ……は、はい……」

 頬を赤らめた綾の手を引き、教室に歩き出す。
 そして、騒がしい連中を通り抜けて教室に入る。

「あいつ、誰だ?」

「清水さんと手を繋いでいるぞ?」

「はぁ?ということは……」

「よう、クラスのみんな。改めて、自己紹介しておく。綾の彼氏の、吉野冬馬だ。綾に告白したい奴は、まずは俺のところに来い。正々堂々と潰してやるから」

「えぇぇぇーーー!!!???」

「アレあんなだったか!?」

「キャーー!!綾ちゃん良いなーー!!」

「あぅぅ……!」

「なんだ?綾。何かマズかったか?」

「し、心臓がもたないよぉ~……」

 すると、誰かに頭を叩かれた。

「ん?なんだ、真司さんか」

「騒がしいっつーの。ほら、席つけ」

 皆、大人しく席に着く。

「さて、テストも終わったな。次は体育祭だ。明日の道徳の時間に、誰が何やるか決めるからな。それぞれ考えておけ。冬馬!!」

「はいはい、何ですか?先生」

「お前の競技は俺が決める。借りがあるからな!断れないからな!」

「そんなにキャ……わかったよ、好きにしてくれ」

「よし!これで、勝率アップだ!」

 どうやら、どうしてもキャバクラに行きたいらしい。

「よ、吉野君だよね?あ、あの僕は……」

「よう、田中君。俺は俺だ。変わらず接してくれると嬉しいがな。せっかくの同士だからな」

「い、いいのかい?タイプが違いすぎなんだけど……」

「気にするな、周りには言わせておけ。大事なのは、本人同士がどう思うかだ」

「わ、わかったよ。これからもよろしくです」

「おうよ……ところで、綾……見過ぎじゃね?さすがに照れるのだが……」

「え!?み、見てないよ!いや、見たいよ!……あぅぅ……!」

「……いや、好きにしていいから。そんな可愛い顔されたら、もうどうでもいいな」

 その後、午前中の授業を終え、昼休みの時間になる。

「ねえねえ!吉野!」

「ん?森川か。どうした?」

「一緒に、飯食べよ!」

「そうね、私もご一緒したいわね」

「と、冬馬君、ごめんね……2人が話聞きたいって」

「おう、いいぜ。ここにするか」

 席を移動して、森川達がいつもいる席に着く。
 とりあえず、ちょくちょく食べながら話をする。

「ねーねー、吉野は綾のどこが1番好きなの?教えてよー」

「……それは難しい質問だな……」

「ちょっと!?愛子!?」

「私も気になるわね」

「加奈まで!?」

「あら?綾は気にならないのかしら?」

「えぇ!?そ、それは……気になります……」

「……やはり、笑顔だろうな。綾が笑うと、俺は幸せな気持ちになる。綾、いつもありがとな。おかげで俺は、毎日幸せだ」

「は、はいぃ……こ、こちらこそですぅ……」

「あー、これはあれか?綾がやられてるパターンなわけね」

「あらあら、そのようね。うーん、いい男ね。私に乗り換える気はない?」

「ちょっと!?加奈!!」

「悪いな、俺は綾以外に眼中がないんでね」

「……ヤバイ!私まで、良いなーって思っちゃったし!」

「……これは、中々の破壊力ね……」

「もう!2人共!やっぱりこうなったよー!」



「おい、あいつ……」

「ああ、我がクラスの三大美少女に囲まれて……」

「羨ましいが……」

「それ以上に、堂々としているのが凄えな……」

「「「「……あいつ、只者じゃないな……」」」」

 ……どうやら、意図しないところで認められたようだな。
 ……一部を除いてだがな。



 そして午後の授業を終え、放課後を迎える。

 ホームルームを終え、真司さんから鍵を受けとる。

「よし……綾、帰るか」

「うん!」

「やけに嬉しそうだな?」

「だって……冬馬君が、嬉しいこと言ってくれるんだもん!」

「俺は思ったことを言ったまでだ。ほら、行こうぜ?」

 俺は、綾に手を差し出す。

「うん!帰ろ!」

 手を繋ぎ、見せびらかすように歩く。
 綾に告白する奴が減るようにな。
 来るなら来い、全て叩き潰す……!

 校舎を出たところで、綾に話しかける。

「じゃあ、綾は下にジャージに着替えて、正門の前にいてくれ」

「ふえっ?そ、それって……」

「そういうことだ。後でな」



 真司さんの駐輪場に行き、バイクに乗る。
 そして正門の前で停まる。

「なんだ!?」

「あっ!今朝も見たわ!」

 俺はメットを取り、綾に声をかける。

「ほら、綾。これがしたかったんだろ?」

「え……?わ、私、言ったことあった……?」

「いんや、ないな。ただ、この間バイク通学しないのかって聞いたろ?あの時、多分そうだろうなと思ってな」

「う、嬉しい……!ちゃんと見ててくれたんだ……!」

「まあ、今日だけだからな。それで勘弁してくれ」

「うん!冬馬君、ありがとう!」

 綾は、俺が1番好きな表情になる。

「そうだよ、俺はその笑顔を好きになったんだよ」

「ふぇ?……はぅ……」

「まあ、照れ顔も可愛いがな。ほら、乗るといい」

 綾にメットを渡す。
   グローブやプロテクターを着用させる。

「し、失礼します」

「よし、行くか」

 バイクをゆっくり走らせ、周りの生徒に見えるようにする。

 そして、駅を通過したところで、スピードを上げる。

「よし……これで、少しはマシになるだろう」

「やりすぎだよー!でも、冬馬君大好き!!」

 ……どうやら、頑張った甲斐があったようだな。

 だが、まだまだだろう。

 これからも、綾に相応しい男になるために精進しなくてはな。
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