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冬馬君の自制心は……
冬馬君は今更気付く
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さて、いよいよ夏休みも、あと1週間くらいだ。
今年は、特別な夏休みになったな……。
まさか、俺に彼女ができて、その彼女に夢中になってしまうとは……。
去年までの俺では、考えられないことだな。
そして、今日は綾のバイトデビューを果たしたようだ。
無事に面接を受け、きちんと受かったようで一安心である。
あそこなら、安心して任せられる。
……だったのだが、気になるものは気になる。
すぐにでも見に行きたかったが、矢倉親子に止められた。
せめて、少しは待てと。
綾が仕事に集中出来ないからと。
そして、三度目の出勤日の今日、ようやく許可がおりた。
俺は矢倉書店に向かい、入店する。
「いらっしゃいませ……冬馬君!あれ!?まだ、終わるまで時間あるよ?」
「おう、綾。頑張ってるみたいだな。いや、気になってしまってな」
「そうなんだ……うん!おかげさまで、働きやすいよ!多少のアレはあるけど……」
「アレ?なんかあったのか?」
「あらあらー、冬馬君。やっぱり早く来たのねー。そのまま、裏に行っていいわよー。お父さん、待ってるから。綾ちゃんの仕事終わるまで、よかったら相手してあげて」
「わかりました、邪魔はしたくありませんから。じゃあ、綾。また後でな」
「うん!あと少し頑張るね!」
矢倉書店は8時には閉まるから、稼ぎは低いかもしれないが働きやすくはあるだろうな。
平日に定休日も2日あるし、一回で働くのは三時間くらいでいいらしいし。
今日は3時から6時で、今は5時半くらいだ。
俺はノックをし、裏口に入る。
「失礼します」
「ふっ、心配で来たのか?」
「まあ、そんなところですね」
「あの子のおかげで売り上げが伸びて、こっちはなかなか大変だ」
「え?そうなんですか?」
「ああ、可愛い子がいるってな。もちろん、タチの悪いのは俺が排除した」
「ありがとうございます。俺も安心できます」
「ただな……」
「ん?そういえば、綾が何か言いかけてましたね……何か問題が?」
「……あそこに監視カメラがあるから、少し見てろ」
「はぁ……わかりました」
大人しく椅子に座り、監視カメラを眺める。
すると、とある男性が綾に近づく。
何やら花束を持っている。
そして、なにかを申し込んでいる。
ただ、すぐに消沈して去っていく。
「えっと……どういうことですか?」
「……俺も驚いている。まさか、3日目でこうなるとは。どうやら、真剣交際の申し込みをしているようなのだ。同じ男として、さすがにそれを咎めることはできん」
「……なるほど、そういうことですか」
どうしよう……物凄くモヤモヤするぞ?
「……嫉妬か?独占欲か?自信がないのか?」
「違い……いや、そうかもしれませんね。俺は男を磨かなくてはなりませんね」
「そうだな。彼女はお前のために色々努力をしているようだぞ?俺にまで、冬馬君はどういう服が好きとかわかりますか?とか聞いてきたぞ」
「それは……すみません」
その後談笑をし、6時になる。
「冬馬君!お待たせ!店長!お疲れ様でした!」
「ああ、お疲れ……丁寧な対応で良いと思う」
「あっ、ありがとうございます!」
「じゃあ、親父さん。失礼します」
「……また、こい」
その後綾を連れて、喫茶店アイル入店する。
マスターに挨拶をし、いつもの席に座る。
そして、飲み物がきて先程の話になる。
「で、アレか……」
「うん……そうなの。彼氏いるって言ったんだけど……冬馬君、怒ってる……?ごめんなさい」
「なに……?怒っていないが……何故だ?」
「え?だって……眉間にシワが……」
「え?……マジか……」
怒ってはいないはず……綾は悪くない。
ただ、俺の器が小さいだけだな……。
「うん……いやかな?やっぱり……」
「待て待て。綾が謝ることなど何もない。ただ、アレだ」
「アレ?」
「あー、なんだ……ただの醜い嫉妬心というやつだ。俺の器が小さかったということだ。むしろ、謝るべきなのは俺の方だ。すまん」
きちんと手をふとももに置き、頭を下げる。
「えぇ!?し、嫉妬……その、嬉しいです……」
「そうなのか?器小さくてダサくないか?」
「そんなことないよ。好きな男の子に嫉妬されるなら嬉しいもん。だ、だって……私のこと、好きだってことでしょ……?」
「そりゃもちろん。好きに決まっている」
「決まっているんだ……ふふ、やったね」
「あー……そっか。これから、それを見ることになるのか……」
その笑顔を見ながら、とても今更なことに気づく。
「え?どういうことかな?」
「いや……学校始まったら、また告白されるだろう?」
「う、うん……私も、そのことで相談がありまして……冬馬君が、私の彼氏って言っていいのかな?」
「それは、アレだな?俺を気遣ってのことだな?」
「うん……冬馬君に迷惑かけちゃうから……でも、私……」
「それ以上はいい。綾のためなら、俺の平穏な日々など捨ててやる」
「え……?いいの?だって……自分で言うのもなんだけど、私の彼氏ってわかったら大変だよ?」
「ああ、いい。俺だって綾と弁当食べたり、登下校時に一緒にいたいしな」
「ホント!?そうなの!私もそれがしたいの!」
「それなら良かった……何よりアレだ……」
「ん?」
「少しは、告白が減るんじゃないかと……俺は、どうやら独占欲もあるくせに、嫉妬心まであるようだからな……俺が嫌なんだよ……」
綾は一瞬ポカンとした後、意味を理解したのか、みるみる頬が赤くなっていく。
「………はぅ……ど、どうしよう……ドキドキが止まらないよぉ……!」
……俺のセリフだーー!!
……さて、これにて平穏な日々が終わるかもしれん。
だが、不思議と悪い気はしない……。
綾の存在が、俺の中で大きくなっているということなのだろう。
正直言って、どうなるか想像がつかない……。
後は、出たとこ勝負だな……。
綾の照れ顔を見ながら、俺はそんなことを考えていた。
今年は、特別な夏休みになったな……。
まさか、俺に彼女ができて、その彼女に夢中になってしまうとは……。
去年までの俺では、考えられないことだな。
そして、今日は綾のバイトデビューを果たしたようだ。
無事に面接を受け、きちんと受かったようで一安心である。
あそこなら、安心して任せられる。
……だったのだが、気になるものは気になる。
すぐにでも見に行きたかったが、矢倉親子に止められた。
せめて、少しは待てと。
綾が仕事に集中出来ないからと。
そして、三度目の出勤日の今日、ようやく許可がおりた。
俺は矢倉書店に向かい、入店する。
「いらっしゃいませ……冬馬君!あれ!?まだ、終わるまで時間あるよ?」
「おう、綾。頑張ってるみたいだな。いや、気になってしまってな」
「そうなんだ……うん!おかげさまで、働きやすいよ!多少のアレはあるけど……」
「アレ?なんかあったのか?」
「あらあらー、冬馬君。やっぱり早く来たのねー。そのまま、裏に行っていいわよー。お父さん、待ってるから。綾ちゃんの仕事終わるまで、よかったら相手してあげて」
「わかりました、邪魔はしたくありませんから。じゃあ、綾。また後でな」
「うん!あと少し頑張るね!」
矢倉書店は8時には閉まるから、稼ぎは低いかもしれないが働きやすくはあるだろうな。
平日に定休日も2日あるし、一回で働くのは三時間くらいでいいらしいし。
今日は3時から6時で、今は5時半くらいだ。
俺はノックをし、裏口に入る。
「失礼します」
「ふっ、心配で来たのか?」
「まあ、そんなところですね」
「あの子のおかげで売り上げが伸びて、こっちはなかなか大変だ」
「え?そうなんですか?」
「ああ、可愛い子がいるってな。もちろん、タチの悪いのは俺が排除した」
「ありがとうございます。俺も安心できます」
「ただな……」
「ん?そういえば、綾が何か言いかけてましたね……何か問題が?」
「……あそこに監視カメラがあるから、少し見てろ」
「はぁ……わかりました」
大人しく椅子に座り、監視カメラを眺める。
すると、とある男性が綾に近づく。
何やら花束を持っている。
そして、なにかを申し込んでいる。
ただ、すぐに消沈して去っていく。
「えっと……どういうことですか?」
「……俺も驚いている。まさか、3日目でこうなるとは。どうやら、真剣交際の申し込みをしているようなのだ。同じ男として、さすがにそれを咎めることはできん」
「……なるほど、そういうことですか」
どうしよう……物凄くモヤモヤするぞ?
「……嫉妬か?独占欲か?自信がないのか?」
「違い……いや、そうかもしれませんね。俺は男を磨かなくてはなりませんね」
「そうだな。彼女はお前のために色々努力をしているようだぞ?俺にまで、冬馬君はどういう服が好きとかわかりますか?とか聞いてきたぞ」
「それは……すみません」
その後談笑をし、6時になる。
「冬馬君!お待たせ!店長!お疲れ様でした!」
「ああ、お疲れ……丁寧な対応で良いと思う」
「あっ、ありがとうございます!」
「じゃあ、親父さん。失礼します」
「……また、こい」
その後綾を連れて、喫茶店アイル入店する。
マスターに挨拶をし、いつもの席に座る。
そして、飲み物がきて先程の話になる。
「で、アレか……」
「うん……そうなの。彼氏いるって言ったんだけど……冬馬君、怒ってる……?ごめんなさい」
「なに……?怒っていないが……何故だ?」
「え?だって……眉間にシワが……」
「え?……マジか……」
怒ってはいないはず……綾は悪くない。
ただ、俺の器が小さいだけだな……。
「うん……いやかな?やっぱり……」
「待て待て。綾が謝ることなど何もない。ただ、アレだ」
「アレ?」
「あー、なんだ……ただの醜い嫉妬心というやつだ。俺の器が小さかったということだ。むしろ、謝るべきなのは俺の方だ。すまん」
きちんと手をふとももに置き、頭を下げる。
「えぇ!?し、嫉妬……その、嬉しいです……」
「そうなのか?器小さくてダサくないか?」
「そんなことないよ。好きな男の子に嫉妬されるなら嬉しいもん。だ、だって……私のこと、好きだってことでしょ……?」
「そりゃもちろん。好きに決まっている」
「決まっているんだ……ふふ、やったね」
「あー……そっか。これから、それを見ることになるのか……」
その笑顔を見ながら、とても今更なことに気づく。
「え?どういうことかな?」
「いや……学校始まったら、また告白されるだろう?」
「う、うん……私も、そのことで相談がありまして……冬馬君が、私の彼氏って言っていいのかな?」
「それは、アレだな?俺を気遣ってのことだな?」
「うん……冬馬君に迷惑かけちゃうから……でも、私……」
「それ以上はいい。綾のためなら、俺の平穏な日々など捨ててやる」
「え……?いいの?だって……自分で言うのもなんだけど、私の彼氏ってわかったら大変だよ?」
「ああ、いい。俺だって綾と弁当食べたり、登下校時に一緒にいたいしな」
「ホント!?そうなの!私もそれがしたいの!」
「それなら良かった……何よりアレだ……」
「ん?」
「少しは、告白が減るんじゃないかと……俺は、どうやら独占欲もあるくせに、嫉妬心まであるようだからな……俺が嫌なんだよ……」
綾は一瞬ポカンとした後、意味を理解したのか、みるみる頬が赤くなっていく。
「………はぅ……ど、どうしよう……ドキドキが止まらないよぉ……!」
……俺のセリフだーー!!
……さて、これにて平穏な日々が終わるかもしれん。
だが、不思議と悪い気はしない……。
綾の存在が、俺の中で大きくなっているということなのだろう。
正直言って、どうなるか想像がつかない……。
後は、出たとこ勝負だな……。
綾の照れ顔を見ながら、俺はそんなことを考えていた。
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