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冬馬君は天秤が傾き……

冬馬君は清水さんを誘う

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 さて、今日はいよいよ期末試験の最終日だ。

 え?告白はどうしたのかって?

 ヘタレたのかって?

 いやいや、そんなことはない……覚悟はいるがな。

 流石に、テスト前に言うわけにはいかないからな。

 あっちも困るだろうし……何より、自分が困る……。

 なにせ初めてだから、どういう状態になるのか、自分でもわからない……。

 とりあえず、今はテストに集中して、それからの話をだな。

 一応、タイミングなどは考えてはいる。

「お兄?大丈夫?難しい顔して……具合悪いの?」

「ん?いや、大丈夫だから。お前こそ、そんな顔するな。お前には笑顔がよく似合う」

「……えへへ、お兄ったら!」

「叩くな!」

「うんうん、母さん……今日も、兄弟仲良くしているよ。俺は、幸せだよ」

「ほら!お父さん!しみじみしてないで、ご飯食べて!遅刻しちゃうよ!?」

「何言ってるんだ?まだ、時間……何!?何故だ!?時間がない!」

 親父は、急いで飯を食べる。

「もう!私達のこと、じっと見てるからでしょ!」

「親父は相変わらずだな……さて、俺もさっさと食うか」

 俺も朝ご飯を食べ、学校へ向かう。





「吉野君、おはよう!」

「おはよう、清水さん」

 これにも、大分慣れては来たんだが……。
 口調は、どうしても学校モードになってしまうな。

 その後、テストが始まる。
 勉強会が功を奏したのか、得意ではない英語がスラスラ解ける。
 俺が国語を教えたかわりに、清水は英語を教えてくれたからな。

 そして、昼休みの時間になった。
 俺はいつも通りに、空き教室に向かう。

「よう、冬馬」

「ニヤニヤしやがって……こんにゃろうめ……」

「ハハ!良い顔だ!お前がグダグダ言ってるから、発破をかけてやったんだよ」

「……一応、ありがとうと言っておく」

「お?これはこれは……自覚したか?」

「まあ……そういうことになるのかな」

「ようやくか!全くよー、お前はよー。もうとっくに好きなはずだったんだよ。お前は、どんな事情があろうとも、気に入らなければ寄せ付けないはずだからな」

「……確かに、真司さんの言う通りかもな」

「お!今日は素直だな。で、いつやるんだ?」

「やらねーよ!はえーよ!てか、それ以前の問題だよ!」

「あ、間違えた。で、いつ告るんだ?」

「このおっさんめ……とりあえず、テストが終わってからかな」

「おっさん言うな!まだ、25だ!……懐かしいな。そうか……まあ、それが良いだろうな」

「……あ、そうだ。妹が、真司さんにお礼を言いたいってさ。その……俺のことで」

「ん?……ああ、話したのか。ふ……そんなものはいらん」

「そんなものはいらん」

 俺は、最後の部分を被せて言った。

「あ?」

「ハハ!言うと思ったよ!」

「このクソガキめ……こいつは、1本とられたな」

 その後教室に戻り、午後の試験を受ける。
 おそらくだが、順位が上がるだろうな。




 そして、最後のテストが終わった。
 さて、ここからが勝負だな……。

 俺は帰り支度をし、まずはバイトに向かった。

「店長、おはようございます」

「冬馬君、おはよう。テストお疲れ様」

「お休みもらってすみませんでした」

「いやいや、学生さんは勉強が本業だから。どうだった?」

「まあ、ぼちぼちですかね。学年で50位には入るかと」

「うわー、相変わらず凄いね。俺なんか、赤点ばっかで……」

「店長、仕事してください」

「友野さん、おはようございます。今日から、またよろしくお願いします」

「ああ、おはよう。こちらこそよろしくな。頼りにしてるからな」

「……はい!!俺、着替えてきます!!」

 クゥーー!!カッコイイな!サラッとああいうこと言えるんだもんなー!
 しかも、めちゃくちゃ嬉しいし。

「いいさ、どうせ俺は頼りにならないよ……」

「いい歳したおっさんが拗ねないでくださいよ……ほら、仕事しましょう」

「そうだね、頼りにされるように頑張るよ!」

 ……今更だが、俺は良い大人に恵まれているな……。
 俺も、そう思われるような大人にならなくてはな。




 その後、バイトを終えて、店長に相談があると伝える。

「どうしたの?珍しいね?ま、まさか!辞めないよね!?あ!でも、2年の夏休みで大学が決まるって聞いたことが……そうだね、冬馬君の邪魔をしちゃいけないよね……冬馬君、仕事できるし、真面目だし、残念だけど……」

 俺は、とりあえず頭にチョップを打ち込む。

「アイタッ!!何するんだい!?」

「人を勝手にクビにしないでくださいよ。それとも、遠回しに辞めて欲しいと言っているんですか?」

「違うよ!冬馬君居ないと、おじさん困っちゃうよ!?」

「今のは、店長が悪い。まだ、冬馬は何も言っていない。ちなみにだが……俺も、冬馬がいないと困るな。いつも助かっているからな」

「友野さん……!」

「あ、そうだね。ごめんね、冬馬君。で、どうしたの?」

「いや、辞めはしないんですけど……八月減らしても良いですか?そのかわりに、七月一杯の2週間は週5回でもいいんで……」

「それは、もちろん構わないよ。やっぱり、勉強するのかい?」

「いや……ちょっと……」

「まあ、店長。いいじゃないですか、冬馬が辞めるわけじゃないんだから」

 そう言うと、軽くウインクをしてくる。
 まるで、わかってるぜとでもいうように……カッケー……!

「まあ、それもそうだね。うん、無理しないでいいからね。じゃあ、お疲れ様」

「じゃあな、冬馬。しっかりやれよ?」

「はい、お疲れ様でした。失礼します」

 俺は、電車の中でメールを打つ。
 すぐに、返事は来た。
 よし、これでよしと。

 俺はドキドキするのを抑えながら、家に帰宅する。

 ご飯を食べて、風呂に入り、自分の部屋のベランダに出る。

 さて……緊張するな。

 だが、清水は勇気を出したに違いない。

 今度は、俺が勇気を出さなくては……!

 俺は、なんとか通話ボタンを押す……。

 すると、待っていたかのように、すぐにつながる。

「も、もしもし……」

 電話越しからでも、緊張が伝わってくる……。
 俺から電話するのは、初めてだからか?

「もしもし、今大丈夫か?」

「う、うん……この時間に電話するってメール来たから……」

「そうか………」

「吉野君……?」

 言え!言うんだ!これを言えないと、それ以前の問題だ!

「あー……西武遊園地って知ってるか?」

「え?……うん、行ったことあるよ」

「八月になると、花火を打ち上げているよな?」

「う、うん……」

「……良かったら、一緒に見に行かないか?」

 身体が熱い……!なんだ、これは!?

「……え!?え?え?今、なんて……」

「だから……よく、聞け。俺と一緒に、花火を見に行かないか?」

「……はい、行きます……」

 清水は消え入りそうな声で、そう呟いた。

「そっか。じゃあ、そういうことで。詳しいことは、後日メールする」

「………」

「おーい?聞いてるか?」

「にゃい!?え!?き、聞いてない!」

「詳しいことは、後日な。また、連絡する」

「う、うん、わかった。ま、待ってます……」

「 はいよ。じゃあ、またな」

「うん、また……」

 俺は電話をきり、部屋の中に戻る。

「ブハァーー!!緊張した……」

 だが、言えたぞ……後はその日を迎えるのを待つだけだ。

 俺は、清水に告白をする……!

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