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洞窟に潜入
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翌朝、俺はすっきりした目覚めを迎えた。
しかし、他の奴らはそうではなかったらしい。
「の、飲みすぎたぜ……!」
「くっ、主人の前でなんたる醜態を……」
「わ、私、いつのまに寝たんですの? うぅー頭が痛いですわ」
「あれれ~? 目が回ります~」
「ったく、仕方がない奴らだ。ほら、順番にやるから待ってろ」
それぞれに蒼炎を施し、二日酔いを治していく。
毒が消えるということは、これにも効くはずだ。
案の定、皆が頭痛から解放されていく。
「そういや、ユキノは平気なんだな?」
「えへへー、ヴァンパイア族ってザルらしいです。何でも、目的の相手を酔い潰せるように」
「……その目的は聞かないことにしよう」
「ご主人様はお酒が効かないみたいなので残念ですねー」
今ほど、この蒼炎が発現して良かったと思ったことはない。
どうやら、酔わせてお持ち帰りコースはなくなったみたいだ。
昨日の残りの鍋を食べて、準備ができたら出発する。
「さて、どうにか成果が欲しいところだ」
「でも、この辺りには生き物が少ないですねー」
「多分っすけど、あいつが周辺のボスだったんじゃないっすかね?」
「まあ、あの強さなら納得か」
それが正しいのかはわからないが、順調に森を進んでいく。
すると、小さな洞窟を発見する。
「おっ、これは……もしや。皆、周辺に敵がいないか確認をしてくれ。後ろから敵が来たら厄介だ」
「うしっ! 俺も残りますぜ! 兄貴の背中を守るのが俺の役目!」
「はっ、見張り等は私にお任せください!」
「では残りの獣人と一緒に洞窟の入り口の見張りを頼む。俺とユキノ、ニールとエミリアで洞窟に入るとしよう」
俺は炎を灯して、洞窟内部に入っていく。
そこは天井が三メートルくらいで、道幅が二メートルくらいの場所だった。
「ご主人様~暗くて怖いです~」
「その棒読みやめんか。大体、お前を連れてきたのは夜目が効くからだろうが」
「はいはーい、わかってますよ」
「わ、私は怖くありませんことよ」
「ふぇ~ん、外で待ってれば良かったよぉ~」
能力的に選んだのだが……人選を間違えたかもしれん。
てっきり魔物でもいるかと思ったが、そのまま順調に進んでいく。
「……ご主人様、止まってください」
「何かあったか?」
「この先から空気の流れを感じます。おそらく、広い場所に出るかと」
「わかった。では、ここからはより慎重に進むとしよう」
全員が頷くのを確認し、ゆっくりと歩き出す。
しばらくすると、向こうから僅かに明かりが漏れているのが目に入る。
あそこが、ユキノが言っていた場所だろう。
すると、カランと何かを蹴る音がした。
「ん? 何か足元にあるな……」
「あつ、これは……骨ですねー」
「ひぃ……!? ほ、骨ですの?」
「ひ、人のですか?」
「んー、細かいですし何とも言えないですけど。この辺りから急に色々な骨が散らばってますね」
「……どうして、この辺りにだけ骨が散らばってる?」
ここに来るまでは魔物もいないし罠もなかったし、当然だが骨もなかった。
なのに、ここだけにあるのは不自然だ。
かといって罠があるような感じには見えない。
最悪何かあってもいいように、炎の幕を展開して先頭を進んではいるが。
「確かに変ですね」
「こ、この先にいる奴の仕業では?」
「でもでも、こっからまだ距離がありますよぉ~」
「この先……距離……敵がいるとして……っ!!」
その瞬間、慣れ親しんだ熱を感じる。
俺が向こうにいる敵だったら同じ事を考えるはず!
「エミリア! すぐに最大の水魔法を頼む!」
「えっ!? ど、どういうことですの!?」
「いいから俺を信じろ!」
「わ、わかりましたわ! すぅ……全ての者共よ、激流に飲まれなさい——タイタルウェーブ!」
俺の言葉を信じ、洞窟を埋め尽くすような津波が発現する。
それと同時に、向こうから熱波が押し寄せた。
水と火がぶつかり、激しく拮抗する!
「ひぃ~!? 何ですかぁ~!?」
「くっ……! アルス! どういうことですの!?」
「いいからそのままで! ユキノ! 炎が止んだ瞬間に広場に突入だっ!」
「わっかりましたー!」
「二人は後から来るように!」
俺とユキノは走り出す準備をし、その時を待つ。
間違ってもエミリアが負けるとは思っていない。
能力を制限されているとはいえ、仮にも作中最強クラスの魔法使いなのだから。
「ひぃー! お嬢様~!」
「エミリア! いけるな!?」
「当たり前ですわ! こんの——私を舐めないでくださいの!」
次の瞬間、炎を水がかき消す!
それと同時に俺とユキノは洞窟の奥に滑り込む!
そこには、三メートルを超える牛の化け物がいた。
太い手足に逞しい胴体、右手には斧、左手には盾を持っている。
「ブモォォォォォ!」
「ちっ、ミノタウロスかよ!」
「あちゃー、アレかなり強いんですよねー。ただ、炎なんて使えましたっけ?」
「わからん! もしかしたら上位種かもしれん! ただ、あの骨の理由はわかった」
「あそこまでおびき寄せた敵を、炎で一網打尽にしたってわけですね。あとは……焼けた肉を食べると」
「わかってるからいうなし。ったく、緊張感のない奴だ」
だが、お陰で冷静になる。
そのおかげか、視界が広くなり……とあるモノを発見する。
「ご主人様! アレ見てください!」
「ああ、わかってる。どうやら、逃げるという選択肢はなさそうだ」
「そもそも、逃げられます? 背を向けたらあの炎が追ってくるでしょうし」
「別に逃げるだけなら俺とエミリアがいれば問題ない……ただ、アレを見て逃げるのはあり得ん」
そう、奴の後ろの壁には……魔石が埋まっていた。
つまり、ここは鉱山の入り口の可能性が高いということだ。
しかし、他の奴らはそうではなかったらしい。
「の、飲みすぎたぜ……!」
「くっ、主人の前でなんたる醜態を……」
「わ、私、いつのまに寝たんですの? うぅー頭が痛いですわ」
「あれれ~? 目が回ります~」
「ったく、仕方がない奴らだ。ほら、順番にやるから待ってろ」
それぞれに蒼炎を施し、二日酔いを治していく。
毒が消えるということは、これにも効くはずだ。
案の定、皆が頭痛から解放されていく。
「そういや、ユキノは平気なんだな?」
「えへへー、ヴァンパイア族ってザルらしいです。何でも、目的の相手を酔い潰せるように」
「……その目的は聞かないことにしよう」
「ご主人様はお酒が効かないみたいなので残念ですねー」
今ほど、この蒼炎が発現して良かったと思ったことはない。
どうやら、酔わせてお持ち帰りコースはなくなったみたいだ。
昨日の残りの鍋を食べて、準備ができたら出発する。
「さて、どうにか成果が欲しいところだ」
「でも、この辺りには生き物が少ないですねー」
「多分っすけど、あいつが周辺のボスだったんじゃないっすかね?」
「まあ、あの強さなら納得か」
それが正しいのかはわからないが、順調に森を進んでいく。
すると、小さな洞窟を発見する。
「おっ、これは……もしや。皆、周辺に敵がいないか確認をしてくれ。後ろから敵が来たら厄介だ」
「うしっ! 俺も残りますぜ! 兄貴の背中を守るのが俺の役目!」
「はっ、見張り等は私にお任せください!」
「では残りの獣人と一緒に洞窟の入り口の見張りを頼む。俺とユキノ、ニールとエミリアで洞窟に入るとしよう」
俺は炎を灯して、洞窟内部に入っていく。
そこは天井が三メートルくらいで、道幅が二メートルくらいの場所だった。
「ご主人様~暗くて怖いです~」
「その棒読みやめんか。大体、お前を連れてきたのは夜目が効くからだろうが」
「はいはーい、わかってますよ」
「わ、私は怖くありませんことよ」
「ふぇ~ん、外で待ってれば良かったよぉ~」
能力的に選んだのだが……人選を間違えたかもしれん。
てっきり魔物でもいるかと思ったが、そのまま順調に進んでいく。
「……ご主人様、止まってください」
「何かあったか?」
「この先から空気の流れを感じます。おそらく、広い場所に出るかと」
「わかった。では、ここからはより慎重に進むとしよう」
全員が頷くのを確認し、ゆっくりと歩き出す。
しばらくすると、向こうから僅かに明かりが漏れているのが目に入る。
あそこが、ユキノが言っていた場所だろう。
すると、カランと何かを蹴る音がした。
「ん? 何か足元にあるな……」
「あつ、これは……骨ですねー」
「ひぃ……!? ほ、骨ですの?」
「ひ、人のですか?」
「んー、細かいですし何とも言えないですけど。この辺りから急に色々な骨が散らばってますね」
「……どうして、この辺りにだけ骨が散らばってる?」
ここに来るまでは魔物もいないし罠もなかったし、当然だが骨もなかった。
なのに、ここだけにあるのは不自然だ。
かといって罠があるような感じには見えない。
最悪何かあってもいいように、炎の幕を展開して先頭を進んではいるが。
「確かに変ですね」
「こ、この先にいる奴の仕業では?」
「でもでも、こっからまだ距離がありますよぉ~」
「この先……距離……敵がいるとして……っ!!」
その瞬間、慣れ親しんだ熱を感じる。
俺が向こうにいる敵だったら同じ事を考えるはず!
「エミリア! すぐに最大の水魔法を頼む!」
「えっ!? ど、どういうことですの!?」
「いいから俺を信じろ!」
「わ、わかりましたわ! すぅ……全ての者共よ、激流に飲まれなさい——タイタルウェーブ!」
俺の言葉を信じ、洞窟を埋め尽くすような津波が発現する。
それと同時に、向こうから熱波が押し寄せた。
水と火がぶつかり、激しく拮抗する!
「ひぃ~!? 何ですかぁ~!?」
「くっ……! アルス! どういうことですの!?」
「いいからそのままで! ユキノ! 炎が止んだ瞬間に広場に突入だっ!」
「わっかりましたー!」
「二人は後から来るように!」
俺とユキノは走り出す準備をし、その時を待つ。
間違ってもエミリアが負けるとは思っていない。
能力を制限されているとはいえ、仮にも作中最強クラスの魔法使いなのだから。
「ひぃー! お嬢様~!」
「エミリア! いけるな!?」
「当たり前ですわ! こんの——私を舐めないでくださいの!」
次の瞬間、炎を水がかき消す!
それと同時に俺とユキノは洞窟の奥に滑り込む!
そこには、三メートルを超える牛の化け物がいた。
太い手足に逞しい胴体、右手には斧、左手には盾を持っている。
「ブモォォォォォ!」
「ちっ、ミノタウロスかよ!」
「あちゃー、アレかなり強いんですよねー。ただ、炎なんて使えましたっけ?」
「わからん! もしかしたら上位種かもしれん! ただ、あの骨の理由はわかった」
「あそこまでおびき寄せた敵を、炎で一網打尽にしたってわけですね。あとは……焼けた肉を食べると」
「わかってるからいうなし。ったく、緊張感のない奴だ」
だが、お陰で冷静になる。
そのおかげか、視界が広くなり……とあるモノを発見する。
「ご主人様! アレ見てください!」
「ああ、わかってる。どうやら、逃げるという選択肢はなさそうだ」
「そもそも、逃げられます? 背を向けたらあの炎が追ってくるでしょうし」
「別に逃げるだけなら俺とエミリアがいれば問題ない……ただ、アレを見て逃げるのはあり得ん」
そう、奴の後ろの壁には……魔石が埋まっていた。
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