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スローライフ?

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……いい、これこそが求めていたものだ。

朝寝坊をして、犬もとい、狐を連れて散歩する。

「これがスローライフってやつか」

「コンッ!」

「うむうむ、可愛いやつよ」

フーコは楽しいのか、時折飛び跳ねたりしている。
尻尾も振られ、明らかにご機嫌な様子だ。
俺は魔法で周りを暖かくしつつ、領内にある畑や家々を回る。

「領主様! 今日もありがとうございます!」

「なに、気にするでない。それより、何か困ったことはないか?」

「なんとお優しいお言葉を……はい! 野菜も順調に採れてきてますし、魔獣を狩って来てくれるのでひとまずは平気です!」

「それなら良かった。それでは、他を回るとしよう」

なんというか、心なしか人に優しくなれる気がする。
これももふもふ効果というやつか。
そして、相変わらずフーコは人気者らしい。

「あぁー! フーコちゃんだっ!」

「ほんとだっ!」

「コンッ!」

子供達が寄ってたかって、フーコを撫で回している。
本人もまんざらではないようで、されるがままになっていた。
すると、それに気づいたお母さんが駆け寄ってくる。

「こ、こら! いけません! 領主様はお仕事中なのですから!」

「いや、気にしないで良い。散歩も兼ねた休憩のようなものだ。それより、寒くはないか?」

「は、はい! 領主様が魔石に込めてくださったヒート?ですか? あれがあるので、外に出ても平気ですし、寝るときも助かっております」

「そうか、足りなくなったらいうが良い」

「か、感謝いたします!」

どうやら、俺が作ったホッカイロもどきは評判らしい。
ただもうほとんど魔石が無いので、早急に用意する必要がある。
出来るだけ家や畑を回って、直で火を灯して節約はしているが。

「フーコちゃん! あれやって! 今なら暖かいし!」

「コンッ!」

「ん? なんだ? ……ほう、流石は風の申し子か」

フーコの風によって、子供達が少しだけ空に浮いている。
おそらく下から風を送り、宙に浮かせているのだろう。

「わぁーい! すごーい!」

「浮いてるー!」

「いつもこうやって遊んでくれるみたいで……子供たちの笑顔なんて久々に見ました」

「ふむ、そうなのか。まあ、子供達は領地の宝だ、元気なのは良いことだ」

「領主様……! なんという……そのような方がいたなんて」

なにせ彼らが、俺の老後を支える労働力となるのだから。
俺のスローライフのためにも、元気に成長してもらわねばなるまい。
そのためには、たくさん遊ばせて食べさせなくては。
いわゆる、先行投資というやつだ。

「ん? 待てよ? 人が浮くくらいの風が吹けるということは……」

「領主様?」

「いや、何でもない。引き続き、子育てを頑張ってくれ。こちらも出来る限り、補助はさせてもらう」

「は!はい! よろしくお願いいたします!」

俺は子供達を説得して、再びフーコを連れて歩きだす。
そして、とある考えが浮かんだ俺はドワーフのダイン殿の元に向かう。
ちょうど、外で作業をしているのを見つけたので声をかける。

「おっ、ここにいたのか」

「むっ、アルス様か。フーコもよくきたのう」

「コンッ!」

「そうかそうか、散歩させてもらって良かったのう」

フーコを撫でる姿は、好々爺といった感じだ。
普段の厳格な姿はどこにもない。
やはり、もふもふは癒しの効果があるか。

「ところで、わしに何か用だろうか?」

「ああ、今は大丈夫か?」

「うむ、ここにある建物のチェックをしておるだけだわい」

「実は頼みがあってな」

俺は先程思いついた内容を、ダイン殿に伝える。
といっても、話自体は単純なことだ。
エアコンのようなものを作れないか提案した。
フーコの風属性と、俺の火属性を合わせれば暖房ができるのではないかと。

「ふむふむ……なるほどのう。確かにそれができれば快適な生活ができるか」

「温度調整なんかもできるので、畑とかにも応用が効くはずだ」

「ほう? ……お風呂場をあっためたりもできますな」

「おっ、確かに。いや、サウナとかもできるか……」

「むむっ、サウナですかい? それは一体どういうもので?」

「えっと、サウナというのは……」

ひとまず、俺が知る限りのサウナの形を伝える。
詳しい構造はわからないが、きっと彼ならわかるはず……丸投げだ。
すると、彼がフーコを撫で回しながら考え込んでしまったので、手持ち無沙汰になる。
なので、特に何も考えずに建物の扉に手をかける。

「ここは……風呂か? ん、ということは……」

「きゃっ!? ア、アルス!? 何をしてるんですの!?」

そこには、タオルを巻いただけの姿のエミリアがいた。
その生足は水滴で艶めかしく映り、胸元には谷間が出来ている。
綺麗な金髪は肌に張り付きしっとりし、まさしく絶世の美女といっても過言ではない。

「あっ、いや、これは……いい湯だな(キリッ)」

「こんの……いい湯だなじゃありませわ!!アクアショット!!

「ギャァァァァァ!?」

巨大な水の弾を喰らい、扉の外に放り出される!
そして、すぐにドアが閉められた。

「つ、つめてぇぇぇ……!」

「アルス様、何をやってるんじゃ? まさか、覗いたのか?」

「の、覗いたつもりはなかったさ! ただ、何の建物なのかと……」

「あっ、言ってなかったわい。ここが女湯じゃよ」

「……まだ掘っ建て小屋じゃない? 中には小さい脱衣所と湯船しかなかったが?」

その小ささゆえに、俺が入った男湯と一緒の建物とは思ってなかった。

「いや、いきなりお嬢ちゃんがきて風呂に入りたいと……男湯の方を進めたら、それは無理とのことじゃった。なのでまだ完全ではないが女湯があると言ったら、入らせてくれと頼まれてのう」

「あぁー……そういうことね。いや、公爵令嬢であるエミリアなら仕方ないか。すまん、うちの連れがわがままを言ったようだ」

「いや、気にしてないわい。言い方も丁寧にじゃったし、貴族の女性なら仕方あるまい」

自分の身体を魔法で温めつつ、ダイン殿の話を聞いていると……ドアがゆっくり開く。
そこには、耳まで真っ赤になったエミリアがいた。

「み、見ましたわね?」

「いや、あれは……違うな。ああ、すまなかった」

言い訳するのは男らしくないので、潔く頭を下げる。
どんな理由があろうとも、俺が覗いたことは事実だ。

「い、いえ、話は聴こえてましたわ……それに私が無理を言って鍵ができる前に入ってしまいましたから」

「それに関してはわしもすまない。つい、アルス様の話に夢中になってしまった」

「そうか……まあ、良いものを見れたわ」

「も、もう! からかわないで!」

「いや、からかってないさ。それより、何かお詫びがしたい。何か願いがあるなら聞こう」

水魔法をくらったが、それでも俺の気が済まない。
それに、ここで貸しを作っておくと面倒だし。

「……何でも良いですの?」

「ああ、俺にできることなら」

「それじゃ……して欲しいことがありますわ」

俺はその願いを聞いて、快く了承する。

すぐに準備を済ませ、行動を開始するのだった。


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