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第三章 エスケープ・エスケープ

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「ぺヨーーーー!!」

 大きな叫び声にびっくりして、豪雨の中外へ飛び出した!


 雨は朝よりも酷くなっており視界が1~2メートルほどまでしかちゃんと見えない。

「どうしたの!?えっさほいさ!!どこにいるの!?」

 よく見えない中で、えっさほいさを必死に探す。

「えっ さほいさ、ど こ~」

 足元からマリンの声が聞こえてきた。

「マリン!あなたは危ないからテントの中に戻りなさい!」

「いや!マリ ン も  えっさほいさ みつけ  る!」

 雨が酷く小さいマリンの体は吹き飛ばされそうになっており、しゃべる事もままならないのに地面にしがみついてその場から動こうとしない。


「強情なんだから!わかった、私にしっかりつかまって!絶対に離しちゃダメだからね!」

 マリンを抱えあげ、肩に乗せる。ぎゅうぎゅう首にしがみついて来て苦しいが吹っ飛ばされるよりはマシ!と考えて、えっさほいさを探す。

「えっさほいさー!!」

「ぺヨーー!!」「ぺヨーー!」

 声からどうやら2人いるっぽい事がわかった、声がする方に近づいていくと回収BOXの近くで野菜を抱えた、えっさほいさを見つける事ができた。

「えっさほいさ!こんな日まで野菜持ってこなくていいからー!しっかりして、テントまで避難するよ!」

 マリンよりも小さい、えっさほいさ達は雨の中必死に野菜を守っているように見える、貴方達そこまでして野菜を守るなんて!でも今は命のが大事だから!と抱えて避難しようとすると…

「ぺヨ!ペッペッ!」

 えっさほいさが、指を背後に向けて必死になにか訴えているように見える

 「なに?どうしたの?そんな事してる場合じゃない早く避難しよ!後ろになにがあるの!?」

 なかなか逃げようとしない、えっさほいさが指指す方に目を向けると






 豪雨の中、黒っぽい塊がこちらへ向かっていずってくるように見える…

「ぇ…」

ザー!!!という、雨の音の中かすかに他の音が聞こえてくるのに気づいた

「ヴァァ………ヴァ…」
ズルズル、ズリ、ず…り  ビチャ、ぶちゃ…ぐちゃ


 恐ろしくて声が出てこない。

「………ッ」

 マリンもえっさほいさも、しがみついてくる。

 4人でしがみつきあって得体のしれないものから目を反らす

 やめて、こないで!!私達に近づかないでよ!これからイルオーレに行かないといけないし、家にも帰らないといけないし!やることいっぱいあるんだから!

 
「ブ………ヴァァァァ!!」
 
ビチャビチャビチャ



 やめてーーーーーーーーー!!!

















「……ん?」

 なにも起きない?え、怖い…どうしよう…

 

 恐る恐る片目をうっすら開けてみる………。

 相変わらずの雨ではあるが先程よりは弱まった気がする、ピークは過ぎたのかもしれないと思いつつ反らした目を元の場所に戻すと、そこには白い塊があるだけだった。

「……は?」

「…………え??なんで??なにこれ?」


 雨の中、少し回りに散らばっているが一ヵ所に多く白い何かの塊がある。

 とりあえず、命の危険は無さそうと考えて皆で白い塊に近づいてみる。

「さっきの黒いやつなんだったんだろ…この白いのもよくわからないけど…」

 ひとまず安心?と白い塊を見ていると横では

「ぺヨー??」

「もうだいじょーぶ?えっさほいさいたい?」

「ぺヨ、ぺヨ」

「よかったねー」

「ぺヨー」

 和やかに話が進んでいた。

 もう、危機は去ったのねあなた達…相変わらず危機感足りないんだから…



 雨の勢いが弱まり、回りもよく見えるようになってきた。とりあえず大丈夫かな?

「えっさほいさ、こんな雨が酷い日に来なくていいから、危ないよ…びっくりしたよ」

「ぺヨー………」

えっさほいさ達も、まさかこんな事になるとは思っていなかったらしい

「皆で温泉いこうか~、雨凄かったから濁ってそうだけど…」

「いく~」

「ぺヨ!ぺヨ!」

 和やかに話しているその後ろで白い塊がカタカタと動き出した事に気づくものはいなかった。

一一一一一一一


 のんびり温泉に浸かり、テントに戻ってくると…テントの前に人形の骨が膝を抱えて座っていた

「ギャー!!」
「きゃー!!」
「ぺヨー!!」

「ヴァ」

叫び声でこちらに気づいたのか、骨が近づいてきて

「ヴァ……ザ、ザイン」

「ギャー!!………え!ザイン?」

 まさか、まさかまた!?もしかして…

「ヌルゾン!?」


「ヴァーァァ」

ペコリ。と骨ゾンビは挨拶した。



 骨ゾンビ…どうやら頼んだ品物を届けに来てくれたらしい、彼?または彼女?は届けに来てくれたものの、ものすごい雨で腐った肉体が洗い流されたらしく、動けるようになるまで時間がかかったらしい、白い骨がまぶしい。

「ヴァ…ザ…イン」

「あ、ありがとうございます。」

 相変わらず怖いけど、普段の腐った感じよりまだましかも、雨ヤバいわ

 ヌルゾンじゃなくてホネゾンだけど。

 ガクガクしかながら帰っていくのを見送り、ため息をついているとマリンとえっさほいさがこちらを見ていた。

「ごめんって」

 まさか、あんな事になるなんて思わないじゃん!


一一一一一一一


 気を取り直して、届いた物を確認!今回はマリンにプレゼントがあるんだもんね~喜ぶかな~。


「マリン~見てみて!マリンのお洋服だよ!」

「おようふく?」

 トコトコ近づいてきたマリンにポンチョを着せる。

 ほのかな光に包まれ、静かに光が収まると…そこには黒い小猿がいた。

「ぺヨー!?」「ペヨ?」

「まぶちい…」
光に驚いて目を閉じていたマリンが目をこすろうとして、自分の手が黒い事に気づいた。

「!?!」

「…………いやー!!」

 大きな叫び声が聞こえてきたと思ったら、そのまま走り去って行ってしまった


「え?」


「ペッペヨ…」「ペヨ」

 呆然とする、私とえっさほいさを残しマリンはいなくなってしまった。

「どうしよ…」

 すぐに、近くの遊び場など普段のお気に入りの場所を探してみたがマリンは見つからなかった…


「ペヨ!」「ペヨ!」

 事情を説明し、どうしてこんな事になったかは理解してもらえたが…えっさほいさに怒られている

「わかった…私が悪いよ、まさかあんなに嫌がるなんて思わなかったの、わー色が変わるなんてすごい~ってなると思ったんだもん!」

「ペヨ!」「ペヨ!」

 ガサガサッ!

 えっさほいさに追い詰められていると、後ろから草をかき分ける音がして振り返って見ると

 目にいっぱいの涙を貯めたマリンがいた。

「マリン…」

「ふぇ、ぐす……マリン…へんになっちゃったの…もうアイリと一緒にいられないかもちれない…あらってもおちないの…」

 そのまま、ひっくひっくと泣き出してしまった…

「ペヨ~!」「ペヨ~!」

 えっさほいさが、マリンをなぐさめているのを見て、とてつもない罪悪感を感じる…

こんなはずでは…

「マリン…本当にごめんなさい。可愛いお洋服におもしろい機能が付いてたからプレゼントしたら喜ぶと思ったの」

 ひっく、ひっくと泣きながら私を見上げてくる、いつもと違う黒いマリンだけど綺麗な緑の目は変わらずキラキラしていて…

 そうだよね、知らないうちに急に自分の身体の色が変わるなんて怖いよね…

「本当にごめんね…」

 そう言いながら、ポンチョを脱がせていくと着用した時とは違い光もなく静かにもとの色に戻っていった。

「ペヨ!」「ペヨ!」

 えっさほいさに身体を指さされ、マリンも自分の変化に気づいたのか、ますます泣き出してしまった

「マリンもとにもどった?もうだいじょうぶ?」

「マリン大丈夫!病気じゃないし、マリンは元気!一緒にいられるからね!ごめんねマリンー」

 謝りながら、泣いているマリンをぎゅっと抱きしめると、えっさほいさ達もくっついてきて、その日はそのまま皆で一緒に眠った。


 
一一一一一一

 その後キチンと理由を説明して、マリンはマリンのままでいいの!と怒られ…こうした買い物はちゃんとマリンに聞いてからにする!と約束した。


 カメレオンケープは返品し、普通の帽子付きポンチョを購入。ベージュに白い縁取りがあるポンチョにマリンはかなりご満悦で巾着バッグは開いて閉じて、開いて閉じて、中に木の実などしまっている。


 プレゼントって難しい…特にちょっと変わったプレゼントは相手に聞いてみてから。とかしないと迷惑になっちゃう事もあるっていう教訓になった。


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