1 / 3
厨二病魔法学級開講
強いて言うなら年に数人の魔法使いがいる学校
しおりを挟む
とある町のとある場所。
駅からは少し遠く、周りには住宅街と面積の小さな畑が散在する。
この町に住むおよそほとんどの子どもは自動的にこの中学へと進学する。
中学受験など実施していない公立校で、特に学業が飛び抜けて優秀だったり、スポーツや各種部活・クラブ活動でいわゆる名門と呼ばれるような強豪校でもない。
ごくありふれた、どこの地域にも存在する中学校の内の1つ市立旭川中学校がある。
強いて他の学校との違いを挙げるとすれば、年に数人は魔法使いがいることがあるということ。その程度のことだ。
町は、一瞬の栄華を満喫した薄紅色の花びらで地面を彩っていた。
3月も中旬。最高学年として肩で風を切っていた先輩を送り出し、期末試験も数日前に終えたばかり。
寒かった季節はいつの間にか、ぽやぽやとした柔らかな日差しで照らされ。少しづつではあるが、その輪郭を薄れさせてきているのが分かる。
「ーー今年も"あの時期"がやってきますね」
給食と昼休みを経て、生物として自然な微睡みを感じながら午後の授業を聞く生徒たち。
そんな時に、とある教師がクラスで授業をするでもなく、職員室で準備や採点等の雑務をするでもなく校長室を訪れていた。
厳かな装飾品が陳列する部屋に2人。
旭川中学の校長室である渋川は、革張りの椅子に腰掛け体育でグランドを駆ける生徒たちを見下ろしている。
一方の教師は応接用のソファに腰掛け、自分の目の前の机に広げた数枚の用紙に目を落としていた。
「今年もなかなか面白い子達が現れたんじゃないですか?」
渋川の問いに、口角をぐいっと上げた。そして、甲高いどうにも不快な笑い声をあげる。
「えひゃひゃひゃ、確かにこじらせてますねぇこれは」
「そう、こじらせた彼らはこれから数々の試練を受けなければならない。それは、どんなファインダーで覗いてもほとんどは絶望に写るでしょう」
渋川は歴代校長の写真が並ぶ壁の向かい側、そこに飾られた数人の生徒たちを写したどこかの教室の写真を見て笑う。
そんな渋川の横顔をちらっと見て、ソファに座っていた教師は少し哀しそうな表情を浮かべていた。
「おっと、そろそろ5時間目が終わりますね。この内申書はお預かりします。大丈夫、今年も誰ひとり欠けることなく進級させますよ」
そう言って、目の前に広がっていたとある生徒たちの内申書の様な資料を手早く集め、勢いよくソファから立ち上がる。
「ーー先生」
5時間目の終了のベルが渋川の声をかき消した。
「私は、今年も信じて待っているよ」
渋川の声に返答は無かったが、閉じられた扉の向こうで「えひゃひゃひゃひゃ」と不気味な笑い声が小さく聞こえた。
駅からは少し遠く、周りには住宅街と面積の小さな畑が散在する。
この町に住むおよそほとんどの子どもは自動的にこの中学へと進学する。
中学受験など実施していない公立校で、特に学業が飛び抜けて優秀だったり、スポーツや各種部活・クラブ活動でいわゆる名門と呼ばれるような強豪校でもない。
ごくありふれた、どこの地域にも存在する中学校の内の1つ市立旭川中学校がある。
強いて他の学校との違いを挙げるとすれば、年に数人は魔法使いがいることがあるということ。その程度のことだ。
町は、一瞬の栄華を満喫した薄紅色の花びらで地面を彩っていた。
3月も中旬。最高学年として肩で風を切っていた先輩を送り出し、期末試験も数日前に終えたばかり。
寒かった季節はいつの間にか、ぽやぽやとした柔らかな日差しで照らされ。少しづつではあるが、その輪郭を薄れさせてきているのが分かる。
「ーー今年も"あの時期"がやってきますね」
給食と昼休みを経て、生物として自然な微睡みを感じながら午後の授業を聞く生徒たち。
そんな時に、とある教師がクラスで授業をするでもなく、職員室で準備や採点等の雑務をするでもなく校長室を訪れていた。
厳かな装飾品が陳列する部屋に2人。
旭川中学の校長室である渋川は、革張りの椅子に腰掛け体育でグランドを駆ける生徒たちを見下ろしている。
一方の教師は応接用のソファに腰掛け、自分の目の前の机に広げた数枚の用紙に目を落としていた。
「今年もなかなか面白い子達が現れたんじゃないですか?」
渋川の問いに、口角をぐいっと上げた。そして、甲高いどうにも不快な笑い声をあげる。
「えひゃひゃひゃ、確かにこじらせてますねぇこれは」
「そう、こじらせた彼らはこれから数々の試練を受けなければならない。それは、どんなファインダーで覗いてもほとんどは絶望に写るでしょう」
渋川は歴代校長の写真が並ぶ壁の向かい側、そこに飾られた数人の生徒たちを写したどこかの教室の写真を見て笑う。
そんな渋川の横顔をちらっと見て、ソファに座っていた教師は少し哀しそうな表情を浮かべていた。
「おっと、そろそろ5時間目が終わりますね。この内申書はお預かりします。大丈夫、今年も誰ひとり欠けることなく進級させますよ」
そう言って、目の前に広がっていたとある生徒たちの内申書の様な資料を手早く集め、勢いよくソファから立ち上がる。
「ーー先生」
5時間目の終了のベルが渋川の声をかき消した。
「私は、今年も信じて待っているよ」
渋川の声に返答は無かったが、閉じられた扉の向こうで「えひゃひゃひゃひゃ」と不気味な笑い声が小さく聞こえた。
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
鬱病の治療は異世界で。
3156
ファンタジー
鬱病と診断された。
そして、その日に殺されてしまった。
そんな俺に与えられた環境は、知っている様で全く知らない世界。
『心の傷を治していらっしゃい。』
俺の鬱病治療が始まった。
ーーー
こんばんは。
賽子です、今布団の上で転がってます。
見付けて下さってありがとうございます。
この話は、鬱病をテーマにしております。
鬱病、本当に辛いですよね。
この時間にしんどくて眠れないかたの暇潰しになれたら幸いです。
気楽〜にどうぞ。
更新頻度は不定期ですが、時間は夜中の1時です。
拙い文で読み辛い所もあるかもしれませんが、貴方様のお時間をほんの少しだけ下さると嬉しいです。
┏○ペコン
連続勤務1854日の暗黒騎士はブラック生活を引退してスキル『食堂』でスローライフを満喫したい
影木とふ
ファンタジー
──16才で背負った罪、暗黒騎士(厨二設定)が21才になっても振り払えない──
「Sクラスモンスター、クイーンドラゴンも敵じゃあなかったな。これで俺にもやっと休息の日が……」
「……はいそうですね、暗黒騎士であるあなたの敵ではなかったですね。では次行きますよ暗黒騎士エイリット、楽しいお仕事が山積みです」
「ん、次ね……あと暗黒騎士呼びは恥ずかしいから今後禁止な。ちなみにだが俺の連続勤務って何日になっている?」
「……暗黒騎士エイリットの連続勤務は、今日で1829日、ですね」
こ、この……棒読み無表情+ため息+暗黒呼びで……!
──それから25日後の連続勤務1854日目、俺は暗黒騎士を辞めた──
16才で異世界に転移してきた主人公エイリット。ユニークスキル『大体なんでも真っ二つ』で名を成し国に騎士として誘われるが、厨二病全盛期だった彼はとある条件を出す。鎧は黒、剣も黒、もう下着すら黒で作ってもらい『暗黒騎士』を名乗り夢の暗黒生活を満喫する。それから5年が経ち21才、1日の休みもなく高レベルモンスターを倒し続けた彼の精神と、すっかり大人になり厨二病も卒業したのにいまだに『暗黒騎士様』と呼ばれる生活に限界を迎え騎士を辞めることに。もう暗黒は卒業と、食堂を開きスローなライフを送ろうとするが、騎士時代の相棒だった女性がくっついてきたり、食堂の名前が勝手に『暗黒食堂』と呼ばれそういう名前のギルドを立ち上げたと思われ強者が集まってしまう。
国内最大ギルドに命を狙われ簡単に振り払うが、それが国の混乱に乗じ悪事を働いていた当事者と分かり、王に騎士を辞めても国の為に尽くしてくれていると勘違いされてしまう。
そんなでさらに広まる『暗黒騎士』としてのエイリットの知名度。
イキっていた16才のときに背負ってしまった暗黒という負の遺産を、彼は振り払うことが出来るのだろうか。
*この作品は 小説家になろう、カクヨム様でも投稿しています
ヤンデレルートで無限ループ!
ひもがみ
恋愛
ーーー死に戻りーーー
気付いたらそれに巻き込まれていた。
死因は不明。なぜ死に戻りするのかも不明。
そんな日常を送っていた主人公にある日、一つの着信が入る。
それは自称:神の使いからだった!
『とりま、うちのヤンデレ神がオメェーとこに行ったから 』
そんな意味不明なことを言う自称:神の使いから詳しい話を聞くと、
1、ヤンデレの神に愛されたものは自分に好意を寄せている人全員がヤンデレになってしまう。
2、神は世界を改竄し、俺の周りにいること。
3、神を見つけなければこの死に戻りが終わらないこと。
こうして俺の命懸けの神探し生活が始まる。
魔法学のすゝめ!
蒔望輝(まきのぞみ)
ファンタジー
陸と海、自然に恵まれたとある惑星――
この星では、科学とともに魔法学が発展している。同時に、魔法を使える者とそうでない者との確執が絶えず生まれていた。
魔法大国の首都ペンテグルス、その外れに住むシュウ・ハナミヤは、日々の生活のためアルバイト三昧の生活を送る。しかし、偶然にも世界随一の魔法学専門学校《セントラル》の特進クラスに入学することとなる。
そこは、一流の魔法使いが集う女の子だけのクラスであった。
本作品は「小説家になろう」様でも掲載中です。
ncode.syosetu.com/n8296hi/
妹×僕・かいぎ
十四年生
ファンタジー
妹は小学一年生です。最近、右手の甲のところに、マジックで五芒星を描いています。
時折、腕がうずくらしいです。
お兄ちゃんはちょっと心配です。
でも、大丈夫お兄ちゃんもそれ描いたことあるから……ね?
ある日妹はくつろぐ僕に向かってこう言います。
「兄……かいぎをはじめます!」
え? それ何の会議?
「せかいのしんじつを知るかいぎです!」
え???
こうしてはじまった妹と僕の会議。通称『いもぼくかいぎ』。
それは実は、世界の真実を知る(妹談)ための、厨二病的な会議だったのです。
あぁ、そうそう、僕の妹はね、本当に可愛いんだよ。うん。
淫らな蜜に狂わされ
歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。
全体的に性的表現・性行為あり。
他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。
全3話完結済みです。
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる