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厨二病魔法学級開講

強いて言うなら年に数人の魔法使いがいる学校

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とある町のとある場所。

駅からは少し遠く、周りには住宅街と面積の小さな畑が散在する。

この町に住むおよそほとんどの子どもは自動的にこの中学へと進学する。

中学受験など実施していない公立校で、特に学業が飛び抜けて優秀だったり、スポーツや各種部活・クラブ活動でいわゆる名門と呼ばれるような強豪校でもない。

ごくありふれた、どこの地域にも存在する中学校の内の1つ市立旭川中学校がある。

強いて他の学校との違いを挙げるとすれば、年に数人は魔法使いがいることがあるということ。その程度のことだ。

町は、一瞬の栄華を満喫した薄紅色の花びらで地面を彩っていた。

3月も中旬。最高学年として肩で風を切っていた先輩を送り出し、期末試験も数日前に終えたばかり。

寒かった季節はいつの間にか、ぽやぽやとした柔らかな日差しで照らされ。少しづつではあるが、その輪郭を薄れさせてきているのが分かる。

「ーー今年も"あの時期"がやってきますね」

給食と昼休みを経て、生物として自然な微睡みを感じながら午後の授業を聞く生徒たち。

そんな時に、とある教師がクラスで授業をするでもなく、職員室で準備や採点等の雑務をするでもなく校長室を訪れていた。

厳かな装飾品が陳列する部屋に2人。

旭川中学の校長室である渋川は、革張りの椅子に腰掛け体育でグランドを駆ける生徒たちを見下ろしている。

一方の教師は応接用のソファに腰掛け、自分の目の前の机に広げた数枚の用紙に目を落としていた。

「今年もなかなか面白い子達が現れたんじゃないですか?」

渋川の問いに、口角をぐいっと上げた。そして、甲高いどうにも不快な笑い声をあげる。

「えひゃひゃひゃ、確かにますねぇこれは」

「そう、こじらせた彼らはこれから数々の試練を受けなければならない。それは、どんなファインダーで覗いてもほとんどは絶望に写るでしょう」

渋川は歴代校長の写真が並ぶ壁の向かい側、そこに飾られた数人の生徒たちを写したどこかの教室の写真を見て笑う。

そんな渋川の横顔をちらっと見て、ソファに座っていた教師は少し哀しそうな表情を浮かべていた。

「おっと、そろそろ5時間目が終わりますね。この内申書はお預かりします。大丈夫、今年も誰ひとり欠けることなく進級させますよ」

そう言って、目の前に広がっていたとある生徒たちの内申書の様な資料を手早く集め、勢いよくソファから立ち上がる。

「ーー先生」

5時間目の終了のベルが渋川の声をかき消した。

「私は、今年も信じて待っているよ」

渋川の声に返答は無かったが、閉じられた扉の向こうで「えひゃひゃひゃひゃ」と不気味な笑い声が小さく聞こえた。
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