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餼羊編

ep10 記憶の叫び

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メアリーside


少女は人が変わったかのように動きのキレが増した
いや、本来の力を取り戻したという方が正しいようだ
一瞬で距離を詰められ喉を切り裂かれたのだ


( 私が…… 出し抜かれた……………? )


反射的に少女を押し飛ばし私は一度後ろに下がる
抉られた首から血液が噴き出ている


「ぐっ…………… 」


私は左手で首を押さえて圧迫するが
赤い液体はブシュブシュと音を立てて流れ続ける


「血塗られのメアリーという異名を持つ貴女が
自身の血で塗り飾られるのはどんな気分?…
返り血より綺麗だわ……メアリー姉さん 」


先程の弱々しい雰囲気とは似ても似つかない彼女は
聞き慣れた無機質な声を発しながら距離を詰める 
身構える私の前で



「 消 え て  」



そう聞こえるとほぼ同時に



バシュッッ………!!



部屋の電気が消されたように一瞬で視界が暗くなった
そして遅れて裂けるような激痛が走る


(眼を、、やられたっ…………!?!?… )


生じる目からの激痛に絶えつつ危険を察知して
再び後ろへ跳んで距離を取ろうとすると



ゴシャッ、、!!



間髪入れずに腹部を殴られ身体がくの字に曲がる
体勢を崩しながら私の身体は後ろに押されたが
一歩引いていた左足で踏み込み



「ァア"ア"ッ …………!! 」



気配からおおよそ彼女の位置は解っていた
反射的に叫び私は暗闇の中で右脚を蹴り上げる



































しかし………放った右脚の蹴りは 空振り に終わる



(  、、、!
脚に彼女を捉えた感覚がないッ………!)



「メアリー姉さん……… 後ろよ 」



背後からアリシアの声が聞こえ
振り上げていた右足を素早く戻し振り向くが



バギャアッ………!!



振り向いている途中で拳が叩き込まれたのだろう
鋭い打撃を叩き込まれた首元に鋭い衝撃が走った後 
次第に意識が定まらなくなり闇に包まれた 


~~~~~~~~~


リータ/アリシア side


「はぁっ… はぁっ……………… 」


意識を取り戻した時、私は仰向けに倒れており
ぼんやりと視界には綺麗な空が映っていた
すぐに起き上がり辺りを確認すると彼女が倒れている
気絶しているのか少しも動かなかった
何とか勝てたらしい


「……傀銀…だったかな………… ?
とりあえず… 封じないと………! 」


右腕に巻き付くように生成されている銀色の物質…
硬くて光沢のあるソレをただ見つめながら
私はひたすら呼吸を整える 


(戻れ… 戻れ戻れ戻れッ………!! )



ピキッ… ビキビキッ……………………



硬いものに亀裂が入るような音がなった後に
腕や脚に生成されていた傀銀が消えていく
その様子は氷が水に溶けていくようだった


「身体がっ…………熱"いッ……!! 」


傀銀を生成した代償なのか全身に痛みが走る
耐えながら辺りを見回すと校門の側にガクトさん
そしてその近くにセイシロウさんが横たわっていた


「………………………  」


私はうつ伏せで倒れるセイシロウさんへ駆け寄り
彼の側に落ちていた大型ナイフを拾い上げ
動かなくなった銀髪の少女の方へ歩みだした



「彼女にトドメをッ…………!  」



疲労と痛みで蝕まれている左足を引きずりながら
なんとか私は彼女の側に立ち尽くす
そして覚悟を決めた私は震える手を振り上げて


「…………うああッ…………………!! 」


荒げた声を発しながら
勢いのまま彼女の喉にナイフを刺そうとした瞬間



ズキィッ、、!!



激しい頭痛に襲われ身体がよろめいた
後頭部を鈍器で何度も何度も殴られるような
重々しく継続した痛みだ



「 嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だッ…………!!
私"の…居場所を…………奪うな"ッ…!!  」



私の脳内に直接干渉するかのように
少女の悲痛の叫びが響いた


「わ、私と……同じ声?……アリシアさん…………」


私は声を上げてナイフを捨てた
もう何をどうすればいいのかさえわからない
ただ今は静かな場所で寝たかった


カランッ……………


地面に刀身を打ち付け転がる大型ナイフ
ソレを見て何故か複雑な気持ちになってしまう



「とりあえず… 帰りましょう、、皆で……… 」



私はそう呟いきながら再度ナイフを拾って
セイシロウさんに声をかける
するとセイシロウさんは目を覚まし



「う…うーん、、 リータ、、 ? 」


目が少し虚ろではあったが 
どうにか意識を取り戻したようだった 
彼のその様子を見た私は安堵感に溺れそうだった


~~~~~~~~~


誠士郎 side

自分がゆっくりと目を覚ますと
視界には顔も身体も傷だらけのリータが居た


「リータ… なんで……………?? 」


自分がそう言いつつリータを注意深く見ると 
彼女の腕や脚は痣ができ血で滲んでいる
元々彼女は肌が色白なこともありすぐにわかった


「ちょっと 無茶してしまいました…… 」


ボロボロな彼女は笑顔で返してくれた
傷跡と相まって余計に痛々しく見え不安になるが
とりあえず命に別状は無さそうだった


(そうか、、自分はメアリーに……!)


漸くここで自分が何故気絶したのか思い出した 
血塗られのメアリーに挑んで負けたのだ


「メアリーは………!? 」


急かすようにリータに聞くと
彼女は右へ目配りして


「あそこで気を失っています…
私が駆けつけた時にはほとんどあの状態で…… 」


「そっか…………なら、、 」


不明瞭な状況のなか自分はそう言って立ち上がる
背中に激痛が走るも構わずに歩いた



「ここで殺しておく……… 」



自分は呟いてポケットナイフを取り出して構える
そして余力を全て使って振り下ろそうとすると



「そこら辺で勘弁してくれないかな 」



自分達の背後から低い男の声が聞こえた
リータと共に反射的に振り向いて自分は問う



「誰だ… お前は、、 」



黒い服装にサングラスをかけた男が立っていた
肌は少し焼けていおりベルトにナイフがある
何かワケありなのは間違いなかった


~ ep10完 ~

    
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