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第3章 不穏な影

第32話 フィルと訓練、クリスティスミアの布告!?

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 ハイパーからとんでもない話を聞き、どうにかその事を忘れたかったので、フィルのリハビリを兼ねての訓練をするために訓練場に入った。

「前から思っていたけどマンシュって何者?こんな辺境に軍の訓練場並みに、優れた訓練場を持っているなんて?」
「ただの貴族の息子だよ。ちょっと化け物のクラスの両親を持つ。」
「ハハハハ、確かにそうだね。おまけにあの兄妹もレベルおかしいし。」

 フィルが遠い目をしながら言った。
 父さんは、帝国でも有名みたいだし、エルとリルもフィルが震えるくらいの殺気を放った時点で、ある意味化け物クラスの家族かも知れない。

「それより、新しい武器使いたいんだろ?さっさと始めるぞ?」
「分かったよ。」

 二人で訓練場の空いているスペースに向かって歩いて移動した。

「それじゃ、始めようか?」
「うん!それじゃあ行くよ?」

 フィルは刀を鞘から抜き、地面を蹴って加速しながら上段から切りかかって来た。
 それを太刀ではなく、腰に吊るしていた大型ナイフと刀の下にしまっていた中型ナイフの2本で受け止めた。

「あれ?その大きな刀じゃないの?」
「大きな刀じゃなくて太刀な。お前の速度ならこっちの方が捌きやすい。」
「ふーん。それじゃまだまだ行くよ!」

 一度後ろに再び、切りかかって来た。先より速度を上げて。
 前回と同じようにやっても勝負が付かないので、スキル鷹の目ホークアイを発動した。このスキルは、遠くが良く見える以外に、対象の動きがスローモーションに見える能力がある。
 前よりもハッキリとフィルの斬撃が見えるそれに合わせて、ナイフで防ぐ。隙を見てはナイフを切りかかり、攻撃した。それを繰り返していると再びつばぜり合いになった
 
「マンシュ、何かスキル使てない?」
「よく分かったな。俺は確かに今スキルを使ってお前の攻撃に対応している。」
「前よりも明らかに防ぐ速度が上がって、全く隙が見えなくなったもん。」
「それじゃあ、今度はこっちの番だ!」

 押し返すと左手に持っていた中型のナイフをフィルに向かって投げた。
 それに意識を向けた隙にナイフを仕舞い、鎌槍を召喚した。
 フィルがナイフを弾いたのと同時に槍で突きを放った。

「ッ!ちょ、ちょっと!どこからそんなん出してきたの!?」
「フィルが目を離した時に召喚したんだよ!」
 
 すかさず突きを繰り出す。
 フィルはそれを刀で受け流すか、体を反らして、避けた。
 そのまま、隙を見てはフィル独特の方向を変える斬撃を受け流し、フィルが刀で、こちらの突きを受け流そうとした瞬間を狙い刀をからめ取り、刀をフィルの手から飛ばし、槍を喉元に突き付けた。

「あはは、ボクの負けだよ。降参。」
「ふー、やっぱり、慣れない武器は扱いにくいな。」
「あんなに上手く扱えてて、それを慣れてないとかどんだけ強いの!?」
「いや、父さん相手に剣だけじゃ勝てないと思たから剣以外にもナイフや槍とか色々、」
「マンシュも規格外なのは良く分かったよ。」

 フィルはそう言いながらため息をついた。

「「「おおおー!!」」」

 俺とフィルの手合わせを見ていた兵士たちから歓声が上がった。

「マンシュ様!相変わらず器用ですね。」「あんたもスゲー技術だな!」「次は俺と手合わせしてくれ。」「マンシュ様、また、俺と手合わせを!」

 俺やフィルと手合わせを申し出る兵士が相次いだ。俺自身はよく一緒に訓練をやっているんで、全員とやったことあるが、フィルがここに来るのは初めてなので、いい経験が詰めるだろう。
 俺は、予定があると言って、その場を後にして、家に向かった。
 クリスティミア公国が出した布告の事をティアに確認するため、家に急いだ。

「たただいま。ティア話があるんだがいいか?」

 玄関から早足にリビングに向かった。

「お帰りマンシュ、フィアとの訓練はどうだった?」
「やっぱり独自の剣術で、慣れないとやりにくいな。」
「そうなんだ。それで、話って?」

 ティアに訓練場でハイパーから聞いたことを話した。
 その話を聞いて、ティアは少し嫌そうな顔をした。

「はー、やっぱり大事になったか。」
「やっぱりって・・・予想してたのか?」
「うん・・お父さんとお姉ちゃんがちょっと過保護でって、話は前にしたよね?」
「そういえばしてたな。そのせいで、今まで城から出たことなかったって、」
「うん、城を抜けてからもう結構立つしね。流石に心配かけたかな?」
「いやいや・・・かけたとかそう言うレベルじゃないだろ!?」

 ティアの発言に思わずツッコんでしまった。

「で、どうするんだ?」
「出来れば、一度国に帰りたいしね。でないといい加減、情報部隊を動かしそうだし。」
「それなら明日王都に帰るぞ。ギルドにクエストの報告と陛下に話して、クリスティミアに行くぞ。」
「はーい。もう少し冒険したかったけど仕方ないわね。」
「その事を父さんと母さんに伝えなきゃ。ティア、2人が何処にいるか知ってるか?」
「ロメルさんは、書類仕事をするために執務室にいるわよ。シルフィさんは町に買い物に出かけたわよ。」
「そうか、父さんに先に知らせに行ってくるよ。母さんは帰って来てから伝えるよ。」
「エルとリルはどうするの?」
「2人は父さんと母さんに任せるよ。親の愛情は必要だと思うからね。」
「確かにね。2人の境遇を聞いた時はホントに酷い扱いを受けていたと知って、泣きそうになったもん。」
「だから2人にはここに残ってもらう。クリスティミアに行くのは俺とティアとフィルの3人だ。」
「はーい。分かっわ。すぐに準備しておくね。」
「俺は父さんに伝えに行ってくる。」

 そのまま、執務室に向かい。父さんに報告した。
 その時、今回の件をまとめた報告書と手紙を預かった。
 その後は、自室で荷物のチェックをしつつ、夕食の時間になったので、食堂に向かった。

「マンシュ、あなたまた、面倒事に首突っ込もうとしているでしょ?」

 母さんにはっきりと言われた。

「仕方ないだろ。ティアの件は陛下から受けた命令なんだから。でも、まさかあんなことになっているとは、思いもしなっかたっよ。」
「ごめんなさい。私が抜け出したばっかりに。」
「それは別にいいじゃない。お城の中だけじゃなく、外の世界も見るべきよ。
「ありがとうございます。シルフィさん。」

 その後も7人で楽しく食事をして、ティアとフィル、リルとエルはそれぞれの部屋に戻って行った。
 俺は父さんに話があると言われ残った。

「マンシュ、クリスティスミアに行くなら気を付けろよ。」
「分かってますよ。あの国に行くには船で2週間は掛るから海賊や海洋モンスターに気を付けるよ。」
「そうじゃなくてだな、今あの国は帝国と度々小規模だが戦闘が行われているんだ。巻き込まれないようにしろよ?」

 どうやら帝国と公国は仲が悪いらしい。
 小規模ではあるが海戦が起きているとの情報を父さんが教えてくれた。

「それは帝国軍で間違いないですか?」
「正確には帝国が認めている海賊だ。奴らがそれぞれの国に向かう船を襲撃して少なからずの被害が出ている。その関係で、公国海軍と戦闘が起きているそうだ。」
「巻き込まれないように注意します。」
「無事に帰って来いよ?」
「分かってますよ。」

 話が終わり、部屋に戻り眠りについた。


 この時、父さんと母さんの心配が現実になるとは思いもしなかった。

















    
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