上 下
2 / 23

転生

しおりを挟む
 俺が目を覚ました時、暗闇の中にいた。
 それはとても長く、永い暗闇だった。

 しかも、とても狭い場所のようで、きゅうきゅうと体をキツく締め付ける。

 体の自由が効かず、思わず声をあげようとするが、うまく声は出てこない。というか呼吸ができない。

 いったい、俺の体はどうしてしまったのだろうか?

 と言うか俺はここで何をしていたんだっけ?全く思い出すことができない。

「§∥∬Ω∞!!」

 次の瞬間だった。
 何を話しているのかは理解することができなかったが、人の話し声が聞こえ、目が潰れてしまいそうなほどの眩い光が俺の瞳孔を襲った。

 ま、眩しい。

 それと同時に、空気が肺の中に入り込んできた。
 俺の意思に反して、俺は声を上げた。
 ギャーギャー、と言葉にならない叫び声のようなものだ。


 なぜそうしたのかは、俺自身にもよくわからない。

「ω∂£∂」

 何を言っているのかわからない言葉?が、俺の耳朶じだを刺激する。

 ゆっくりと瞳を開き、声のした方に視線を向けると、20代半ばとおぼしき男がこちらを見ていた。
 その男はなぜか涙を流している。

 何事かを呟き続ける男、しかし、やはりと言うべきか、俺にはその言葉の一切を理解することができなかった。


 それとほぼ同時、男とは別の方向、俺の背後から女性の声がした。
 男の声とは違い、落ち着いていて、どこか不思議な感じのする声色だった。

「━━━━━━━━」

 女性が何事かを言い終えた瞬間だった!

 俺の頭上に小さな水?の玉のような物が現れる。
 どんどんとその球体は体積を広げて行き、直径50センチほどにまで成長。
 そして、その球体は俺の体に向かって飛んでくると俺の顔を除く首から足先までの全てをすっぽりと覆い尽くしてしまった。

 なぜか首を動かす事ができないから直接目視で確認することはできないが、触感で感じる事ができた。
 俺の体に纏わりつく水球はとても暖かい。
 今までの経験に照らし合わせるのなら、湯船に浸かっているような感覚。

 水球は俺の体の周りを循環するように流動していたが、しばらくすると女性がまた何事かを呟く。

「━━━━━━━━」

 すると、水球は俺の体を離れ、再度頭上へと集まり、最後は音を立てることもなく、完全に消えてなくなってしまった。とても不思議な光景だった。

 何が起こっているのか理解できず呆然としていると、ふわりと体が宙を舞った。

 はっ!?あまりの非現実を突き付けられて、脳の処理が追い付かない。

 空中に浮かんでいる間、ベットに横たわり疲れきった表情の女性、泣いている男、黒い法衣のような物を纏う女性二人の姿が確認できた。

 ふわりふわりと舞う俺の体は、ベットに横たわる女性の真横に置かれているバスケットの中にすっぽりと収まった。

 これでこちらから回りの様子を伺うことができなくなってしまったが、疲れきった表情をした女性が体を起こして、優しい笑みをたたえこちらを覗き込んでいた。

 なんでかはわからない。その女性の微笑みは俺に強い安心感を与えた。

 女性は手を伸ばし、俺の体を優しく抱き上げると優しい口調で呟いた。

「ロウエ」と
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

アイドルグループの裏の顔 新人アイドルの洗礼

甲乙夫
恋愛
清純な新人アイドルが、先輩アイドルから、強引に性的な責めを受ける話です。

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

今さら言われても・・・私は趣味に生きてますので

sherry
ファンタジー
ある日森に置き去りにされた少女はひょんな事から自分が前世の記憶を持ち、この世界に生まれ変わったことを思い出す。 早々に今世の家族に見切りをつけた少女は色んな出会いもあり、周りに呆れられながらも成長していく。 なのに・・・今更そんなこと言われても・・・出来ればそのまま放置しといてくれません?私は私で気楽にやってますので。 ※魔法と剣の世界です。 ※所々ご都合設定かもしれません。初ジャンルなので、暖かく見守っていただけたら幸いです。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

プリンセスクロッサー勇と王王姫纏いて魔王軍に挑む

兵郎桜花
ファンタジー
勇者になってもてたい少年イサミは王城を救ったことをきっかけに伝説の勇者と言われ姫とまぐわう運命を辿ると言われ魔王軍と戦うことになる。姫アステリアと隣国の王女クリム、幼馴染貴族のリンネや騎士学校の先輩エルハと婚約し彼女達王女の力を鎧として纏う。王になりたい少年王我は世界を支配することでよりよい世界を作ろうとする。そんな時殺戮を望む壊羅と戦うことになる。

処理中です...