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中年男性と女子生徒の怪しい関係1
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「いらっしゃいませ」
那奈の声かけと共に入店をしてきたのは、制服姿の女子高生と中年のスーツ姿の男だった。
思わず身構えてしまう。
まさか、ここ最近、snsなんかでよく見聞きするパパ活……じゃないでしょうね。
なんて邪推をしながら、二人の姿を横目で見送ると、私の座る席のすぐ後ろのテーブル席に通された。
那奈は海がよく見える、国道沿い側の二階席のテーブル席を提案したようだけれど、それを中年男性は断って、私のすぐ近く、奥の方の席へとやってきた。
怪しい。どうも怪しい。人に見られたらヤバイ関係。そういう事なのだろうか。
しかも、女子生徒の方は私が一年ほど前まで通っていた腰越高校の制服に身を包んでいる。
つまり、女子生徒は私の後輩だと言うことになる。
やきもきした気持ちを抱えながらも、私が直ちに口を挟むことでもないと見なかったふりをする。
もし、何かあった場合に高校には連絡をすべきか、なんて考えながら聞き耳を立ててみる事にした。
「リナは何にする?」
「……私は紅茶」
女子生徒の名前はリナと言うらしい。
紅茶を頼むなんて中々にセンスが良いわね。
リナは恥ずかしいのか、男性に興味が無いのか、スーツ姿の男性の方には目もくれず答えた。
男性は店員、もとい那奈を呼びつけると、アイスコーヒーと、紅茶、付け合せにモンブランケーキを一つ注文した。
モンブランケーキはこの店の名物だ。この中年男性、このお店の下調べはしているらしい。余計に怪しい……
那奈が注文を取り去っていくと、優しげな笑みを浮かべながら男性はリナにこう質問をした。
「どうだ?最近はお母さんとは上手くいっているのか?」
「……まあ普通」
リナはさして興味なさそうに答えた。
この男性はリナの母親とも面識があると言う事か。
……それって大問題なんじゃ。
色々な物が壊れかねない。
横目でチラリと見てみれば、男性の左手の薬指に指輪ははめられていない。
つまり男性の方は婚姻関係にはないと言う事。結婚していながら外しているだけかもしれないけれど、それはそれで確信犯だ。
もうこれは確定で良いのでは。うーん。声をかけるべきか、どうか、しかし、他人の私がそんなに踏み込んで良いものか。
そんな葛藤をしていると、男性は思い出したように、持ってきていた革の鞄に手を伸ばす。そして茶封筒を一枚取り出し、それをテーブルの上に置いた。
「あー、そうだ。会えるのも三ヶ月ぶりだからね」
男性はにこやかな笑顔だが、あの中に入っているのはおそらく現金。
もはや躊躇している時間はないだろう。
カウンター席に手をついて立ち上がろうとすると、カウンター越しに那奈が首を横に振っていた。
きっと那奈だって私の様子。男性とリナの様子を窺っていたはずだ。
そんな那奈がやめろと言っている。
店内で騒ぎを起こすなと言う事だろうか。
たしかに、ここで私がここで声を上げてしまえば、パパ活が事実であったにせよ、迷惑をかけてしまう事になる。
過去に汐音にしてしまった過ちを思い出し、私は再度席に腰を降ろした。
とすれば通報をするしかないかな。
女子生徒の名前はわかっている。リナ。あとは学年さえわかればなんとでもしてあげられる。
「……いつも言っているけどさ、そういうのいらないから」
話の流れが変わった気がした。
純愛……なの?
リナは純粋にこの中年男性に恋をしていると言う事なの?
まさかここまで知っていて那奈は私を止めたの!?
「このくらいしかしてあげられないんだ。頼むから受け取ってくれ」
男性は深々と頭を下げ、それをしげしげと見つめていたリナは、一つため息を付いてから封筒に手を付けた。
「……わかった」
うーん。この場合はセーフなのアウトなの?
純愛だったとしても金銭の授受が合った場合、法律的にはこれは援助交際にあたるの?
でも、リナは本気みたいだし、私がどうこうする話でも……
ここで注文の品を持った那奈が二人の元を訪れる。
リナはバツが悪そうに、那奈から視線を逸らす。
ちょっと待って、リナがそういう態度を取るって事は、リナの方に後ろめたさがあるって事よね?
純真な男性を騙して金品をだまし取っているのはリナの方ってこと?
この場合はどっちが悪いことになるの!?
もう私の頭はパンク寸前だった。
男性とリナの会話が全く耳に入ってこないくらいには。
「愛華さん。邪推はやめてくださいね」
気がついたら紅茶のおかわりを持った那奈が真横に立っていた。
「わっ!?」
あまり唐突な事に、素っ頓狂な声を上げてしまった。
「怪しいことなんて全くないですから、黙って執筆活動の方をしてくださいね」
「は、はい」
柔らかな笑顔を称えて、那奈は定位置へ戻っていく。
まさか店もグルって事?
それってかなりまずくない?テレビにも取り上げられるような有名店なのよ。
「私どうしたらいいのかしら」
心の中でつぶやくはずの言葉が、思わず口から溢れていた。
「だーれだ」
考え込む私の視界が唐突に温かい何かに覆われた。
那奈の声かけと共に入店をしてきたのは、制服姿の女子高生と中年のスーツ姿の男だった。
思わず身構えてしまう。
まさか、ここ最近、snsなんかでよく見聞きするパパ活……じゃないでしょうね。
なんて邪推をしながら、二人の姿を横目で見送ると、私の座る席のすぐ後ろのテーブル席に通された。
那奈は海がよく見える、国道沿い側の二階席のテーブル席を提案したようだけれど、それを中年男性は断って、私のすぐ近く、奥の方の席へとやってきた。
怪しい。どうも怪しい。人に見られたらヤバイ関係。そういう事なのだろうか。
しかも、女子生徒の方は私が一年ほど前まで通っていた腰越高校の制服に身を包んでいる。
つまり、女子生徒は私の後輩だと言うことになる。
やきもきした気持ちを抱えながらも、私が直ちに口を挟むことでもないと見なかったふりをする。
もし、何かあった場合に高校には連絡をすべきか、なんて考えながら聞き耳を立ててみる事にした。
「リナは何にする?」
「……私は紅茶」
女子生徒の名前はリナと言うらしい。
紅茶を頼むなんて中々にセンスが良いわね。
リナは恥ずかしいのか、男性に興味が無いのか、スーツ姿の男性の方には目もくれず答えた。
男性は店員、もとい那奈を呼びつけると、アイスコーヒーと、紅茶、付け合せにモンブランケーキを一つ注文した。
モンブランケーキはこの店の名物だ。この中年男性、このお店の下調べはしているらしい。余計に怪しい……
那奈が注文を取り去っていくと、優しげな笑みを浮かべながら男性はリナにこう質問をした。
「どうだ?最近はお母さんとは上手くいっているのか?」
「……まあ普通」
リナはさして興味なさそうに答えた。
この男性はリナの母親とも面識があると言う事か。
……それって大問題なんじゃ。
色々な物が壊れかねない。
横目でチラリと見てみれば、男性の左手の薬指に指輪ははめられていない。
つまり男性の方は婚姻関係にはないと言う事。結婚していながら外しているだけかもしれないけれど、それはそれで確信犯だ。
もうこれは確定で良いのでは。うーん。声をかけるべきか、どうか、しかし、他人の私がそんなに踏み込んで良いものか。
そんな葛藤をしていると、男性は思い出したように、持ってきていた革の鞄に手を伸ばす。そして茶封筒を一枚取り出し、それをテーブルの上に置いた。
「あー、そうだ。会えるのも三ヶ月ぶりだからね」
男性はにこやかな笑顔だが、あの中に入っているのはおそらく現金。
もはや躊躇している時間はないだろう。
カウンター席に手をついて立ち上がろうとすると、カウンター越しに那奈が首を横に振っていた。
きっと那奈だって私の様子。男性とリナの様子を窺っていたはずだ。
そんな那奈がやめろと言っている。
店内で騒ぎを起こすなと言う事だろうか。
たしかに、ここで私がここで声を上げてしまえば、パパ活が事実であったにせよ、迷惑をかけてしまう事になる。
過去に汐音にしてしまった過ちを思い出し、私は再度席に腰を降ろした。
とすれば通報をするしかないかな。
女子生徒の名前はわかっている。リナ。あとは学年さえわかればなんとでもしてあげられる。
「……いつも言っているけどさ、そういうのいらないから」
話の流れが変わった気がした。
純愛……なの?
リナは純粋にこの中年男性に恋をしていると言う事なの?
まさかここまで知っていて那奈は私を止めたの!?
「このくらいしかしてあげられないんだ。頼むから受け取ってくれ」
男性は深々と頭を下げ、それをしげしげと見つめていたリナは、一つため息を付いてから封筒に手を付けた。
「……わかった」
うーん。この場合はセーフなのアウトなの?
純愛だったとしても金銭の授受が合った場合、法律的にはこれは援助交際にあたるの?
でも、リナは本気みたいだし、私がどうこうする話でも……
ここで注文の品を持った那奈が二人の元を訪れる。
リナはバツが悪そうに、那奈から視線を逸らす。
ちょっと待って、リナがそういう態度を取るって事は、リナの方に後ろめたさがあるって事よね?
純真な男性を騙して金品をだまし取っているのはリナの方ってこと?
この場合はどっちが悪いことになるの!?
もう私の頭はパンク寸前だった。
男性とリナの会話が全く耳に入ってこないくらいには。
「愛華さん。邪推はやめてくださいね」
気がついたら紅茶のおかわりを持った那奈が真横に立っていた。
「わっ!?」
あまり唐突な事に、素っ頓狂な声を上げてしまった。
「怪しいことなんて全くないですから、黙って執筆活動の方をしてくださいね」
「は、はい」
柔らかな笑顔を称えて、那奈は定位置へ戻っていく。
まさか店もグルって事?
それってかなりまずくない?テレビにも取り上げられるような有名店なのよ。
「私どうしたらいいのかしら」
心の中でつぶやくはずの言葉が、思わず口から溢れていた。
「だーれだ」
考え込む私の視界が唐突に温かい何かに覆われた。
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