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教会にて②
しおりを挟む彼女の蘇生には誰もが驚いていた。冷たい川に晒されたことで仮死状態となり、息を吹き返したのだと思われた。
暖炉のある部屋を用意してもらいベッドに寝かせる。清貧を重んじる教会はむやみに暖炉を使わないのと深夜というのもあり、火がついている部屋はなかった。部屋を暖めるのに時間がかかる。アニーは寒そうに身体を震わせている。
「修道女たちで彼女を温めてやってくれないか」
その提案に神父は難色を示した。その方法は、温める側にリスクがあるという。
「熱を奪われ過ぎて危険な状態になる可能性があります。彼女たちにそんなことさせるわけにはいきません。申し訳ありませんが」
「言い分は最もだ。そちらの献身には十分感謝している」
神父を下がらせる。モリスに見張りを頼みたかったが、今頃は泥のように眠っているだろう。ただ老人は早起きだ。朝方にこの部屋にやって来てくれるのを期待するしかない。男爵は服を脱いだ。
ふと、目を覚ます。窓の明かりから既に朝になっていた。朝が弱い男爵は微睡みの中でまた眠りにつこうとする。寝返りを打つと、アニーがひっそり身体を起こしているのに気づいた。一気に覚醒して男爵も起き上がる。
「おい、大丈夫か」
「……………」
「アニー」
呼びかけても返事がなかった。ただボンヤリとこちらを見てくるだけ。白痴 になったかのような印象を受けた。仮死状態になっていたのだから無理もない。
それ以上に、目を見張るものがあった。
彼女の瞳が、自分と同じ金色になっていた。
重瞳ではなかったが、金というだけで珍しがられる。金目の扱いは国によって異なる。吉兆と持てはやされる事もあれば、不吉だと詰られる事もある。この国はどちらなのか分からなかった。
遠慮しながら触れる。冷たい身体だったが、震えは止まっている。まだモリスはやって来ない。引き寄せて毛布を被る。背中に手を回すと、同じように手を回される。互いに抱きしめあって、目を閉じた。
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