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再会②
しおりを挟む男爵がハインツへ向かったのは数日後のことだった。聞いていた通り、カリス樹海は広く深く、広い裾野の先に留まっているだけでも光の射さない闇に呑まれそうな錯覚を覚える。
道案内に雇った猟師も、やはり樹海の中へは立ち入らないという。
冬で一面に雪が積もっているから余計に入る気になれない。同行する老紳士は文句も言わずに付き従っているが、ここらが限界だろう。深入りは自殺行為だ。
「モリス、帰ろう」
「そうですね。こうも雪があっては探すどころではありませんね」
川に沿って下る。男爵は、妙なモノを見つけた。
煌めいていた。川の反射ではない。金色だ。雪に埋もれていたが、金色の輝きは全く損なわれていなかった。
「…殿下?」
「あれ、見えるか」
「あれですか?…あれ?あれって…人じゃないですか?」
人、と言われて目を凝らす。この目のせいで視力は余り良くない。同行していた猟師に見てもらうと、やはり人だと言った。
「岩に引っかかっとるで。もう死んでますわ」
「見つけた以上、あのままにしておけない。せめて埋葬してやらないと」
「水深は浅いが冬の川ですぜ。旦那と爺さんの長靴は水を通さない革だ。体力を考えると、旦那が適任だ」
初めから他にやらせるつもりは無かった。もしものときの為に縄を胴にくくりつけ川に入る。膝上まで水に浸かるが確かに水深は浅い。さして労せずに死体へ近づく。金色しか見えていなかったが、それは見事な金髪だった。長い髪が川に浸かり滝のように流れている。
身体付きからして女だろう。岩の上にうつ伏せに倒れている。薄着で、なんと肌着しか身に着けていなかった。流される途中で脱げたのか、自殺するつもりで自ら脱いだのか。知るすべはない。
女を仰向けにさせる。思わず目を見張った。身体を抱き起こし、顔に張り付いた髪を払い除ける。
「なんてことだ…」
それはアニー、その人だった。
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