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冥府へ向かう道
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そっと扉を開く。黴臭い匂いから一変、病院特有の消毒液の匂いがマスク越しに流れ込んでくる。私は息苦しさから付けていたマスクを外した。
今更マスクごときでどうにかなるものか。
「もし万一見つかったら、走って逃げるしかありません」
すでに病院は閉まっていて、緊急外来のみしか受け付けていない。つまり患者や職員に紛れて逃げることも難しく、そして恐らく出入り口も制限されるはずだ。
「外来入口はもう閉まってるでしょう。緊急受付か、職員用の出口から出るしか」
「あるいは明日の朝まで院内に隠れているか、だな」
先生はそう言うが、とにかく私は早くここから出たかった。
「そうならないことを祈ります」
先生が聖書をズボンとベルトの間に挟む。あんまりな扱いのそれに、私は祈った。すべては真実を明らかにするためなのです、どうか罪人の罪を明らかにするための力をお貸しください。
「では、行くぞ」
先生が私を手招く。幸いなのは、彼が院内の地理に詳しいことだった。
「だが、夜間警備や巡回のルートまでは私は知らない」
なにしろ勤務時間外に残っていると怒られるからな、と先生はのたまった。
私は、何度目かわからないため息をついた。
現在地は二階の南側。先生によると、霊安室は地下二階の北側にあるらしい。
「地下二階まであるんですか?」
「駐車場がB2なんだ」
なるほど、すぐに出棺できるようにするためなのだろう。
「そして不運なことに、そこには北側の階段しかつながってない。エレベーター?使えるわけがないだろう」
呆れた様子で言い返され、私は口を曲げる。どうせ階段を使おうが、見つかる時は見つかるのだ。
その私の予感は的中して、二階の南側階段から北口階段へ向かう途中であっけなく警備員に見つかってしまった。
「ほら、うろうろしてると余計見つかるリスクが高くなるじゃないですか!」
不満たらたらに私は叫ぶが、先生は言い返す気力もないのかただひたすらに走っている。闇雲に何度か角を曲がり、結局スタートに戻ってきてしまった。「仕方ない、では下に……」
先生がそう言い終える間もなく、階下からなにやらバタバタと言う足音が聞こえてきた。有無を言わさず我々は上階へと追いやられる。三階。
しかしここでも、不吉な足音が遠くの方から聞こえてくる。さらに上へ。四階、五階。
「警備員ってこんなにいるもんなんですか?」
まるで城塞だ。
「さあ、彼らのシフトまで、把握はしていないが、もしかしたら、警備会社の、応援が来たのかも、しれないな」
あまりうれしくない情報を聞きながら、二階と同じ場所にあった倉庫へと滑り込む。モワッとドブのような臭いが我々を襲った。「たぶん、掃除用具入れ、だな」
足音をやりすごし、そっと私は階段をさらに上がった。先生も異存はないようだった。
「急がばまわれ、だ」
ぶつぶつと呟いているのは、大回りの疲労を自分に納得させるためのようだ。
「そうだ、六階でエレベータを呼んでみたらどうだ?」
先生がそう言うので、北側の階段に向かう途中でエレベーターのボタンを押す。上階へのボタンだ。少しは効果があればいいが。
そう願いながら、ナースステーションとは反対側の廊下を小走りで駆けて行き、念願の北側の階段にたどり着くことが出来た。
六階は病室のフロアだが、幸いにナースともすれ違わなかった。その代わり、なんだかいい匂いが鼻腔をくすぐった。
「ちょうど入院患者の夕飯時だな」
少しでも時間がずれていたら、配膳か食器回収に鉢合わせてしまうところだった。
患者の食事時間は職員らの休憩時間でもあるらしく、ナースステーションからは甘い匂いと談笑の声が漏れていた。
途端に空腹を覚えるものの、残念ながら私は飴の一つも持っていない。仕方なく唾液を飲み込み、北側の階段をそろりと降りていく。
時折廊下を走る足音をやり過ごし、階段を駆け下りてくる足音に気付いては、途中のフロアの近くの倉庫へと逃げ込む。
一度鋭い警備員に倉庫の扉を開けられてしまった時は、いよいよダメかと思った。
だがなんという幸運か、そこは実習にでも使うのか人体模型やマネキンの置かれた部屋だった。
「服を脱げ!」
慌てて先生の指示に従い――とはいえせいぜい白衣とシャツを脱ぎ捨てるくらいしか出来なかったが――、ヒト型の模型の影に隠れ、なんとか事なきを得た。
無事に地下二階に降りた頃には、服ははだけホコリにまみれ、散々な有様だった。
あとは今このタイミングで死んだ人がいないことを祈るばかりだ。万一、死者との対面に涙する遺族とそのご遺体にでも遭遇してしまったら。
最悪の状況を思い浮かべるが、死の淵をさまよう生者にも、哀れな逃亡者にも神は微笑んでくれたようだ。白い部屋はがらんとしていた。
「霊安室は二つ。二手に分かれて探そう」
たった二つしかないことに驚きと安堵を覚えながら、我々は別れて禁忌の間を暴いた。
ベッドと、白い祭壇があるだけの場所だ。窓もなく、息苦しさを覚える。仮に私がこの病院で亡くなったとしても恐らくここには化けて出て来はしないだろうが、それでもなんだか肌寒い思いをした。単に、汗が冷えただけだったかもしれないが。
しかし、いくら探してもそれらしいものは見つからない。祭壇の後ろにもだ。諦めて部屋を出ようとしたところで、先生が私を手招いた。
「こっちに、こんなものがあった」
先生が差し出したのは、小さな金庫だった。表には、数字の書かれたダイヤルが一つ。
「まさか、これを開けるための暗号だって言うんですか?」
「だろうな。いかにも怪しいじゃないか」
先生は何が面白いのか笑みを浮かべているが、疲れ果てた私はこの状況を楽しむほどの余裕はなかった。「だって、数字なんて一つも出てきてないんですよ!」
「そうだな。となると、まだ読み解いていないヒントがまだあの文脈の中にあるということだ」
そう言って、先生は後生大事に抱えた聖書の中から、例のメモ紙を取り出した。
「あと解いていないのはなんだ?」
疲労から霞んできた目をこすって、私は読み上げた。
『デウカリオンと共に、青銅の時代の終わりがやってくる。そこには我らが星が燦然と輝いているだろう』
「ふむ……青銅の時代、か。確かにあの洪水によって、青銅の時代が終わって鉄の時代が訪れた。だが、正確な時代は分からない、暗証番号には使えまい」
「じゃあ、『我らが星が燦然と輝いている』」
もはや考えることを放棄した私は、機械的に文面を読み上げる。
「ふむ、星、か……」
すると先生は何かを思いついたのだろうか。「リンドウ君、スマホを貸したまえ!」
と奪うように私の白衣のポケットからスマホを奪い取った。
「先生、ちょっと」
「ふむ、君のスマホの電池の持ちが良くて助かった。私のは置いてきてしまってね」
なにしろ就業中は持てないからね、と妙に律儀なことを言いながら、先生は無事お目当ての物を見つけられたらしい。
「これだ!」
そう言って見せられたのは、木星にまつわるページだった。
「ゼウスとはユピテル、つまりはジュピターだ。星が輝くといえば、これを指しているに違いない」
そう言って木星に関する数字をダイヤルしていくものの、一向に金庫は開く気配がない。気持ちばかりが焦り、「本当にそれで合っているんですか?」と私の口から弱気な声が出た。
「考えすぎなんじゃないですか。だってユピテルは、ローマの神様でしょう?」
ゼウスに関しての話は、大学時代にユキ先輩から聞いたことがある。すべて文化はギリシャから始まり、ローマが得意げにその文化を、さももともと自分たちの物だったかのように受け入れたのだと。
それを言われてしまっては、中国文化をさも本来自分たちの文化だったように見せた日本文化も同じだと思ったが、とにかく文化と言うものは伝播して形を変えていく。
木星の名に付けられたユピテルは、残念ながら本家の名ではない。
「しかし、ゼウスと言う名の星など……」
渋々先生が検索する。
「あった。『小惑星 ゼウス 惑星番号 5071』」
しかしオリジナルがコピーより扱いが小さいとは。ブツブツ言いながら先生がダイヤルする。5、0、7、1。カチリという音がした。
「開いたぞ!」
興奮すると声が大きくなるのか、先生が歓喜の声を上げる。けれどそれは私も同じで、もはや先生を注意する気にもなれなかった。
ようやくこの長かった有栖医師からの挑戦状に終わりの時が来るのだと安堵して、その中身を窺った。小さな金庫の中には、黒くて長方形の板のようなものがしまわれていた。どこかで見たことがある。
先生が慎重な手つきでそれを取りだした。後ろには、知らない人間はいないだろう、リンゴのマーク。
「なぜ、こんなところにiPadが?」
今更マスクごときでどうにかなるものか。
「もし万一見つかったら、走って逃げるしかありません」
すでに病院は閉まっていて、緊急外来のみしか受け付けていない。つまり患者や職員に紛れて逃げることも難しく、そして恐らく出入り口も制限されるはずだ。
「外来入口はもう閉まってるでしょう。緊急受付か、職員用の出口から出るしか」
「あるいは明日の朝まで院内に隠れているか、だな」
先生はそう言うが、とにかく私は早くここから出たかった。
「そうならないことを祈ります」
先生が聖書をズボンとベルトの間に挟む。あんまりな扱いのそれに、私は祈った。すべては真実を明らかにするためなのです、どうか罪人の罪を明らかにするための力をお貸しください。
「では、行くぞ」
先生が私を手招く。幸いなのは、彼が院内の地理に詳しいことだった。
「だが、夜間警備や巡回のルートまでは私は知らない」
なにしろ勤務時間外に残っていると怒られるからな、と先生はのたまった。
私は、何度目かわからないため息をついた。
現在地は二階の南側。先生によると、霊安室は地下二階の北側にあるらしい。
「地下二階まであるんですか?」
「駐車場がB2なんだ」
なるほど、すぐに出棺できるようにするためなのだろう。
「そして不運なことに、そこには北側の階段しかつながってない。エレベーター?使えるわけがないだろう」
呆れた様子で言い返され、私は口を曲げる。どうせ階段を使おうが、見つかる時は見つかるのだ。
その私の予感は的中して、二階の南側階段から北口階段へ向かう途中であっけなく警備員に見つかってしまった。
「ほら、うろうろしてると余計見つかるリスクが高くなるじゃないですか!」
不満たらたらに私は叫ぶが、先生は言い返す気力もないのかただひたすらに走っている。闇雲に何度か角を曲がり、結局スタートに戻ってきてしまった。「仕方ない、では下に……」
先生がそう言い終える間もなく、階下からなにやらバタバタと言う足音が聞こえてきた。有無を言わさず我々は上階へと追いやられる。三階。
しかしここでも、不吉な足音が遠くの方から聞こえてくる。さらに上へ。四階、五階。
「警備員ってこんなにいるもんなんですか?」
まるで城塞だ。
「さあ、彼らのシフトまで、把握はしていないが、もしかしたら、警備会社の、応援が来たのかも、しれないな」
あまりうれしくない情報を聞きながら、二階と同じ場所にあった倉庫へと滑り込む。モワッとドブのような臭いが我々を襲った。「たぶん、掃除用具入れ、だな」
足音をやりすごし、そっと私は階段をさらに上がった。先生も異存はないようだった。
「急がばまわれ、だ」
ぶつぶつと呟いているのは、大回りの疲労を自分に納得させるためのようだ。
「そうだ、六階でエレベータを呼んでみたらどうだ?」
先生がそう言うので、北側の階段に向かう途中でエレベーターのボタンを押す。上階へのボタンだ。少しは効果があればいいが。
そう願いながら、ナースステーションとは反対側の廊下を小走りで駆けて行き、念願の北側の階段にたどり着くことが出来た。
六階は病室のフロアだが、幸いにナースともすれ違わなかった。その代わり、なんだかいい匂いが鼻腔をくすぐった。
「ちょうど入院患者の夕飯時だな」
少しでも時間がずれていたら、配膳か食器回収に鉢合わせてしまうところだった。
患者の食事時間は職員らの休憩時間でもあるらしく、ナースステーションからは甘い匂いと談笑の声が漏れていた。
途端に空腹を覚えるものの、残念ながら私は飴の一つも持っていない。仕方なく唾液を飲み込み、北側の階段をそろりと降りていく。
時折廊下を走る足音をやり過ごし、階段を駆け下りてくる足音に気付いては、途中のフロアの近くの倉庫へと逃げ込む。
一度鋭い警備員に倉庫の扉を開けられてしまった時は、いよいよダメかと思った。
だがなんという幸運か、そこは実習にでも使うのか人体模型やマネキンの置かれた部屋だった。
「服を脱げ!」
慌てて先生の指示に従い――とはいえせいぜい白衣とシャツを脱ぎ捨てるくらいしか出来なかったが――、ヒト型の模型の影に隠れ、なんとか事なきを得た。
無事に地下二階に降りた頃には、服ははだけホコリにまみれ、散々な有様だった。
あとは今このタイミングで死んだ人がいないことを祈るばかりだ。万一、死者との対面に涙する遺族とそのご遺体にでも遭遇してしまったら。
最悪の状況を思い浮かべるが、死の淵をさまよう生者にも、哀れな逃亡者にも神は微笑んでくれたようだ。白い部屋はがらんとしていた。
「霊安室は二つ。二手に分かれて探そう」
たった二つしかないことに驚きと安堵を覚えながら、我々は別れて禁忌の間を暴いた。
ベッドと、白い祭壇があるだけの場所だ。窓もなく、息苦しさを覚える。仮に私がこの病院で亡くなったとしても恐らくここには化けて出て来はしないだろうが、それでもなんだか肌寒い思いをした。単に、汗が冷えただけだったかもしれないが。
しかし、いくら探してもそれらしいものは見つからない。祭壇の後ろにもだ。諦めて部屋を出ようとしたところで、先生が私を手招いた。
「こっちに、こんなものがあった」
先生が差し出したのは、小さな金庫だった。表には、数字の書かれたダイヤルが一つ。
「まさか、これを開けるための暗号だって言うんですか?」
「だろうな。いかにも怪しいじゃないか」
先生は何が面白いのか笑みを浮かべているが、疲れ果てた私はこの状況を楽しむほどの余裕はなかった。「だって、数字なんて一つも出てきてないんですよ!」
「そうだな。となると、まだ読み解いていないヒントがまだあの文脈の中にあるということだ」
そう言って、先生は後生大事に抱えた聖書の中から、例のメモ紙を取り出した。
「あと解いていないのはなんだ?」
疲労から霞んできた目をこすって、私は読み上げた。
『デウカリオンと共に、青銅の時代の終わりがやってくる。そこには我らが星が燦然と輝いているだろう』
「ふむ……青銅の時代、か。確かにあの洪水によって、青銅の時代が終わって鉄の時代が訪れた。だが、正確な時代は分からない、暗証番号には使えまい」
「じゃあ、『我らが星が燦然と輝いている』」
もはや考えることを放棄した私は、機械的に文面を読み上げる。
「ふむ、星、か……」
すると先生は何かを思いついたのだろうか。「リンドウ君、スマホを貸したまえ!」
と奪うように私の白衣のポケットからスマホを奪い取った。
「先生、ちょっと」
「ふむ、君のスマホの電池の持ちが良くて助かった。私のは置いてきてしまってね」
なにしろ就業中は持てないからね、と妙に律儀なことを言いながら、先生は無事お目当ての物を見つけられたらしい。
「これだ!」
そう言って見せられたのは、木星にまつわるページだった。
「ゼウスとはユピテル、つまりはジュピターだ。星が輝くといえば、これを指しているに違いない」
そう言って木星に関する数字をダイヤルしていくものの、一向に金庫は開く気配がない。気持ちばかりが焦り、「本当にそれで合っているんですか?」と私の口から弱気な声が出た。
「考えすぎなんじゃないですか。だってユピテルは、ローマの神様でしょう?」
ゼウスに関しての話は、大学時代にユキ先輩から聞いたことがある。すべて文化はギリシャから始まり、ローマが得意げにその文化を、さももともと自分たちの物だったかのように受け入れたのだと。
それを言われてしまっては、中国文化をさも本来自分たちの文化だったように見せた日本文化も同じだと思ったが、とにかく文化と言うものは伝播して形を変えていく。
木星の名に付けられたユピテルは、残念ながら本家の名ではない。
「しかし、ゼウスと言う名の星など……」
渋々先生が検索する。
「あった。『小惑星 ゼウス 惑星番号 5071』」
しかしオリジナルがコピーより扱いが小さいとは。ブツブツ言いながら先生がダイヤルする。5、0、7、1。カチリという音がした。
「開いたぞ!」
興奮すると声が大きくなるのか、先生が歓喜の声を上げる。けれどそれは私も同じで、もはや先生を注意する気にもなれなかった。
ようやくこの長かった有栖医師からの挑戦状に終わりの時が来るのだと安堵して、その中身を窺った。小さな金庫の中には、黒くて長方形の板のようなものがしまわれていた。どこかで見たことがある。
先生が慎重な手つきでそれを取りだした。後ろには、知らない人間はいないだろう、リンゴのマーク。
「なぜ、こんなところにiPadが?」
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