悪い冗談

鷲野ユキ

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蜜蜂と神々

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◆メリッサ(melissa)は、ギリシア語でミツバチの意。英語圏などでは、女性名(メリッサ)としても用いられる。ギリシア神話ではメリッセウス(蜜蜂男)の娘(メリッサ)が、蜂蜜を与えてゼウスを育てた。

◆アリスタイオス(Aristaios)は、ギリシア神話に登場する神。 
ミツバチの巣箱を作って養蜂の技術を発明、チーズの製法やオリーブの栽培、圧搾の技術も伝えたとされる。
 
◆エーオース(Ἠώς, Ēōs)は、ギリシア神話に登場する暁の女神である。
恋多き女神で、人間と結ばれるために相手を不死にするようゼウスに依頼した。

〈出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』〉

 シャワーも浴びず、歯さえ磨かずに眠ってしまっていたらしい。不快感で目を覚まし、慌てて昨夜のエコーの言葉を思い出しネットをググる。そうして出たのがこれだ。

 養蜂、ミツバチ。どうやっても、あの黄熊が付いてきて離れない。

 蜂蜜男と、メリッサとアリスタイオスの二人は繋がりがあるとしか考えられなかった。

 だが、木村馨は?彼女のアバター名のエーオースに、さほど意味は見いだせなかった。

 では、彼女は犯人ではないのではないのか。むしろメリッサを疑っていて、彼女と私を引きあわせたということだろうか。

 しかし。メリッサが犯人なのだとしたら。なぜ、意味深に蜂蜜を遺体にかけた?それに、なぜエーオースは木村馨の名を騙ったのだ?

 そこで私は行き詰る。寝ぼけ眼で考えてみるものの、一向に埒が明かない。それどころか、昨晩は帰るなりゲームに没頭してしまったから、夕飯も食べていない。急に空腹を覚え、私は冷蔵庫の中を漁ることにした。

 幸い今日は先生がこちらに来る日だ。一人で考えるより、彼の手を借りたほうがいいかもしれない。

 発見した冷凍ピラフを解凍し腹の中にかき込むと、私は先生を迎えるべく、身だしなみを整え車へと飛び乗った。
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