上 下
6 / 74

勇者なんてどうでもいい!金はどうすればいいんだ?

しおりを挟む
ようやく、宿屋に泊ることが出来た。

長かった……なんだってあんなに、森の中を何日も野宿しないと隣村に行けないんだ。どこが隣だ。
この世界のインフラはどうなってるんだ?

国王、やる気がないにも程がないか?税金何に使ってんだよ。

とりあえず金は持ってるみたいだったから、後先考えず部屋をとった。正直旅行先で行くような質のいいホテルでも旅館でもなく、ビジネスホテルより汚く、カプセルホテルよりは広い、といった程度のものだったが他にないのだから仕方がない。

しかも部屋にはシャワーもなければトイレもない。共同のものを使ってくださいと、見に行ってみればまあ汚い。☆ゼロだ。マイナスにしたいぐらいだ。顧客満足度をないがしろにしやがって!これが現実世界だったらあっという間にSNSで悪い評判流してやれるのに、くそっ。

悪態をつきつつそれでも風呂に入り(嫌だと言ってられないほど俺の身体はだいぶ臭くて残念なことになってたから仕方ないとする)、ようやくあの鎧を脱ぎ、宿の主人に無理やり用意させた寝巻きに着替えた俺だが、今あらためてこの勇者様のムキムキボディに驚いている。

ボディービルダーかよ。

職業:勇者じゃなくて、職業:ビルダー のほうがしっくりくるんじゃないか。ためしに胸筋に意識を集中したら、そこがピクピクと動いた。

怖っ。

てかこの世界の勇者様、どんだけ鍛えてんだよ……。てか俺、ぜんぜん身体鍛えてないけど、この体型維持できんのかな。
現実世界の俺の身体は、はっきり言ってだいぶ残念な部類に入る。そんな俺がこんなムキムキボディ、維持できるわけないんだけど。

ゲームの世界そのまんまなら、一度上がったレベルが下がることもないだろうし、ならば筋力が衰えることもなさそうだけれど。
しかしこの世界は微妙に、俺がプレイしていたゲームとも異なる。

まず時間の経過がしっかりある。プレイ中だとあっという間に森を越えられるが、実際は何日もかかっている。
NPCもしっかりしゃべるし、同じことをくどくど言ってくるやつもいない。……ただ村の入り口にいたおばあちゃんは、ちょっと呆けてるのか何度も村の名前連呼してたけど。

そして、これ一番大切。なんと、

モンスター倒しても金が落ちてこない。

これヤバくね?死活問題じゃね?

てっきりゲームみたいに、倒せばジャラジャラコインを落としてくれるんだと思ってたんだけど。張り切って倒しまくってみたものの、一向に金を落とす気配がない。

心配になってあの二人に聞いてみると、

「モンスターが金もってるわけないじゃない。あいつら買い物もできないのに」と返されてしまった。

いや、ごもっともなんですが。

じゃあ金はどうするのかと聞くと、倒したモンスターの使える部分を切り取って、その手の業者に売れば多少の金になるわよ、と。
でも私たち(女魔道士と司祭だ)、は、毎月振り込みで所属の職場から給与が入るけど、勇者様は違うの?
と逆に聞き返されてしまった。

えっ、この二人は給料もらえんの!?しかも振込?インフラボロボロなくせに、もしかしてATMあんのかこの世界?

というか、俺は?勇者様は?

もしかして、職業:勇者 って、給料制じゃないの?これからどうやって生活してけばいいの!?

ああ早く、現実世界に戻りたい……。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

淫らな蜜に狂わされ

歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。 全体的に性的表現・性行為あり。 他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。 全3話完結済みです。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

お嬢様はお亡くなりになりました。

豆狸
恋愛
「お嬢様は……十日前にお亡くなりになりました」 「な……なにを言っている?」

断る――――前にもそう言ったはずだ

鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」  結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。  周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。  けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。  他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。 (わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)  そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。  ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。  そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

処理中です...