68 / 80
海辺の館
海辺の館-2
しおりを挟む
目の前にそびえるのは、黒いレンガ造りの古風な建物。以前母に連れて行ってもらった、岡崎さんだか岩崎さんだかの邸宅に少し似ている。
国の重要文化物だとかで、一般公開されているやつだ。
この家だって、そうだと言われたらうなずいてしまう、そんな風格。
いかにも昔の建物らしく二階建てで、高さがない分奥行きがあるようにも見えた。
「ちょっと早いハロウィン、って感じね」
僕の隣でミサキが呟いた。そう、まさにそんな感じだ。僕は首を縦に振った。
建物の左右には対称にとんがり屋根。遠くでカラスの鳴き声が聞こえる。
先端は鋭く、なんだか不吉な印象も受ける。
まるで物語に出てくる、お姫様を幽閉するような塔に見えた。
「もしかして、あの塔に誰か監禁されてる、とか?」
僕はこそっと隣のミサキに聞く。
すると、それこそ、警察を呼べばいいだけじゃない。と返されてしまった。
「違うわよ、事件があったのは反対側」
そう言って、ミサキが長い指で指したのは。
「海?」
潮風が彼の長い髪を揺らす。
確かにここに来るまで、バスはひたすらに海岸線を走っていた。
といっても穏やかな砂浜ではなく、そそり立った岩ばかりが目立つような、荒い海だ。
その海岸線沿いに突如と現れたのが、菊名邸だ。
門をくぐった先には薔薇の庭園。
そして、古い洋館。
「じゃあ、誰か海に落っこちちゃった、とか?」
「大正解」
よくできました、とばかりにミサキが僕の頭を撫でた。
すでに海風に乱れた、伸ばしっぱなしの僕の髪はさらにぐちゃぐちゃになる。
「海に落ちて亡くなったのは、菊名剛三。この館の主だ」
建物を睨みつけながら探偵が口を開いた。
「その死を不審に思って妻の菊名千代が、俺のもとを訪れた」
「そ、渋い名前のご夫婦でしょ。だってのにこんな素敵な薔薇園にお出迎えされて、びっくりしちゃう」
さらに僕の髪をわしわしと撫でながらミサキが笑った。
「海に落ちたんでしょう?じゃあ、事故なんじゃないの」
ミサキの手を避けながら、僕は口を尖らせる。
確かに薔薇園は見ごたえがあるだろうけれど、事件でもないのにわざわざ片道二時間近くかかるこんな場所まで呼び出される理由がわからない。
「けれどその人物が落ちたと思われる部屋には、遺書があった」
そこでようやく探偵が口を開いた。
昨日はあんなにはしゃいで(?)いたのに、ここに来る道すがら、ずっと黙ったままだった。
機嫌が悪いのか、それとも必死に何か考えていたのだろうか。
まだ現場も見てないっていうのに。
「そう、その遺書がね」
薔薇の園を歩きながらミサキが言う。
「時代遅れもいいところに、タイプライターで書かれてたって言うのよ」
知ってる?と聞かれ、僕は軽く首をかしげた。
名前は聞いたことがある。けれどどんなものかまでは知らない。
「ほら、やっぱり若い子は知らないってよ」
そう言ってミサキが軽く丸藤の肩を叩いた。
「俺と比較するな」
鬱陶しいとばかりに彼はミサキの手を払う。
まあ、そりゃそうだろうな。ミサキはともかく、丸藤さんはもともと江戸時代の人なんだし、そもそも神様なんだし、比較されて若いと言われても。
「タイプライターっていうのはね、そうねえ、ボタンを押すと、その文字が紙に直接印字されるって機械なんだけど」
困惑する僕に、ミサキが説明してくれた。
「まあこのご時世、一度紙に印刷したらおしまいだなんて、不便で仕方ないでしょうね」
パソコンだとか、いろいろ便利なものがあるのに、わざわざタイプライターなんてもの好きねえ、とミサキは呆れている。
「亡くなったご主人は、アンティークとか、そういうのが好きだったとは聞いたけど」
だから部屋に置いていたらしいわ、とのこと。
と言うことは、普段仕事で使ったりしていたわけでもなさそうだ。
なら尚更。
「これから自殺するんだったら、手書きが一番楽だし早い気がするけれど」
僕は隣のミサキを見上げた
「なんでわざわざそんなものを?」
「そこなのよ」
ミサキが深くうなずいた。
「あれなら筆跡が残らない。なるほど偽物の遺書だって思っても不思議じゃないけれど」
だからなのね、と彼は唇を湿らせる。
「納得いかないって、その奥さんが事務所に来たのよ」
高い果物まで持ってきて、どうしても、主人は殺されたに違いないって言っているらしい。
まあ、家族が自殺したなんて信じたくない気持ちはわからなくもない。遺書だって不自然だ。
そこまでなら、警察だって自殺に見せかけた殺人を疑ったかもしれない。
けれど。
「だが部屋には鍵がかかっていた」
探偵が腕を組む。
「それゆえに、警察はこれは自殺だと判断したらしい」
「鍵なんて、誰にだって掛けられるんじゃ」
僕は疑問に思って口を挟んだ。
「それがまた随分古風な造りのもので、鍵屋に頼んでも作れない代物らしいわ。さらにそのカギは主の遺体の懐に入っていて、部屋は内側から鍵がかけられていた」
ゆっくりと薔薇の間を縫う僕らを、冷たい潮風が冷やす。
「つまり、その部屋の鍵を開け閉めできたのは、主だけだったということだ」
そうして、探偵が締めくくった。
「……ってことはやっぱり、自殺なんじゃ」
結局、僕はそう返すしかなかった。
多分、調査に来た警察の人だって、そう言ったに違いない。
「確かに、話だけ聞けばそう思うだろう」
僕の隣で、探偵が目の前の洋館を睨みつける。
「だがそうやって、すぐに決めつけるのが一番よくない」
そう僕を諭す探偵の顔は、先ほどと打って変わってひどく生き生きとしている。
「自殺に見せかけて人を殺すのは、推理小説じゃよくある手だ。きっとこれも、何かトリックがある違にいない」
そして、唇の端を持ち上げる。
「だがこの俺にかかれば、犯人の誤魔化しなんて一目瞭然だ」
「いやねえ、人が亡くなったっていうのに、そんな楽しそうにしちゃって」
不敵に笑う丸藤に、ミサキがあきれたように手を振った。
「これでも神様なんだから、少しはわきまえなさいよ」
「そりゃあ、そうだけど。……でも、どうしたって死んだ人間は生き返らないんだ」
たしなめられ、一瞬口をつぐんだ探偵が再び口を開く。
「だからせめて犯人を捕まえて、罪を償わせないと。故人も浮かばれないだろ」
そう返す探偵の声には、力がこもっていた。
「罪人には、相応しい罪が必要だ」
そうして、拳を握りしめる。
彼が人だったなら、さぞかし痛いだろう、と思うほどに。
「丸藤さん」
いくら犯人捜しの神様だからって、そんな思いつめなくても。
そう思い声を掛けた時だった。
「すみません、お待たせいたしました」
色とりどりのバラが咲き誇る秋空の下、声が響く。
黒い燕尾服に、すらりとした四肢。
現れたのはそんな人物だった。今の時代を錯覚させるような、そのいで立ち。
「わたくし、執事のEthacia(イサーシャ)と申します。お待たせしてしまい大変申し訳ございません」
そして、慇懃に礼をした。まるで、舞台俳優のように。
「あら、ずいぶん美人なこと」
きれいなものに目のないミサキですら絶句している。僕だってそうだった。
短く切り揃えられた金髪が、秋の陽を受けて輝いている。外国の人なんだろう、名前だってそうだし、優しい形の瞳は青かった。
けれどひどく流ちょうに日本語を話すので、僕は混乱する。
「あの、日本人なんですか?」
「いえ。でも、日本語は得意なんです」
そう言ってほほ笑む姿は、クラスメイトが騒ぐどこかのアイドルなんかより、よっぽど……すごい、としか形容できなかった。
まるでお人形みたいだ。
「奥様がお呼びです、さあこちらへ」
そう言ってつかつかと歩き出すイサーシャに、僕らは慌ててついていく。
大きな扉を開いて、その中へ僕らを誘う。脚が長くて、踏み出す一歩が僕らとは大違いだ。
「ねえ、あの人」
僕は小声で隣のミサキに聞いた。
「男の人かな、それとも女の人?」
そう思うほどに中性的だった。
背の高さだとかは男の人っぽいけど、きれいな顔とか柔らかい声だとかは女の人っぽい。
「それを知って、ナオはどうするの?」
少しいたずらっぽくミサキが返す。
「もしかしてナオちゃん、あの人に惚れちゃったの?」
「そんなわけじゃ」
慌てて返すわたしに、丸藤さんが鋭い目を向けた。
そして、いつも以上に厭味ったらしく口を開く。
「仕事中に、ずいぶん呑気なもんだな」
「だから、そういうわけじゃ」
雇用主に睨まれわたしは身を縮こまらせる。
知らない人にいきなり一目ぼれするほど、僕は人間が好きじゃなかったはずだ。
だから、べつにそういうんじゃ。
「なら、尚更どっちだって別にいいじゃない」
慌てる僕をからかうようにミサキが笑った。
「白黒つけない方がミステリアスでいいじゃない、ほら、アタシみたいに」
そう言って彼はさらりと自慢の銀髪を振り払った。
光を受けて、銀河のように煌めく。
その姿だけを見れば、あの執事の人にだって引けをとらないんだろうけど。
「おい、いいから行くぞ」
少し不機嫌な探偵にせかされて、僕は慌てて彼らの後を追った。
カツン、と足音が響く。
広いポーチには、剣を掲げた騎士の像。
ここが日本で、天草の海沿いだってことを忘れてしまいそうだ。
「ちょっと、待ってよ」
ミサキの声も良く響く。まるで、地の底みたいだった。
国の重要文化物だとかで、一般公開されているやつだ。
この家だって、そうだと言われたらうなずいてしまう、そんな風格。
いかにも昔の建物らしく二階建てで、高さがない分奥行きがあるようにも見えた。
「ちょっと早いハロウィン、って感じね」
僕の隣でミサキが呟いた。そう、まさにそんな感じだ。僕は首を縦に振った。
建物の左右には対称にとんがり屋根。遠くでカラスの鳴き声が聞こえる。
先端は鋭く、なんだか不吉な印象も受ける。
まるで物語に出てくる、お姫様を幽閉するような塔に見えた。
「もしかして、あの塔に誰か監禁されてる、とか?」
僕はこそっと隣のミサキに聞く。
すると、それこそ、警察を呼べばいいだけじゃない。と返されてしまった。
「違うわよ、事件があったのは反対側」
そう言って、ミサキが長い指で指したのは。
「海?」
潮風が彼の長い髪を揺らす。
確かにここに来るまで、バスはひたすらに海岸線を走っていた。
といっても穏やかな砂浜ではなく、そそり立った岩ばかりが目立つような、荒い海だ。
その海岸線沿いに突如と現れたのが、菊名邸だ。
門をくぐった先には薔薇の庭園。
そして、古い洋館。
「じゃあ、誰か海に落っこちちゃった、とか?」
「大正解」
よくできました、とばかりにミサキが僕の頭を撫でた。
すでに海風に乱れた、伸ばしっぱなしの僕の髪はさらにぐちゃぐちゃになる。
「海に落ちて亡くなったのは、菊名剛三。この館の主だ」
建物を睨みつけながら探偵が口を開いた。
「その死を不審に思って妻の菊名千代が、俺のもとを訪れた」
「そ、渋い名前のご夫婦でしょ。だってのにこんな素敵な薔薇園にお出迎えされて、びっくりしちゃう」
さらに僕の髪をわしわしと撫でながらミサキが笑った。
「海に落ちたんでしょう?じゃあ、事故なんじゃないの」
ミサキの手を避けながら、僕は口を尖らせる。
確かに薔薇園は見ごたえがあるだろうけれど、事件でもないのにわざわざ片道二時間近くかかるこんな場所まで呼び出される理由がわからない。
「けれどその人物が落ちたと思われる部屋には、遺書があった」
そこでようやく探偵が口を開いた。
昨日はあんなにはしゃいで(?)いたのに、ここに来る道すがら、ずっと黙ったままだった。
機嫌が悪いのか、それとも必死に何か考えていたのだろうか。
まだ現場も見てないっていうのに。
「そう、その遺書がね」
薔薇の園を歩きながらミサキが言う。
「時代遅れもいいところに、タイプライターで書かれてたって言うのよ」
知ってる?と聞かれ、僕は軽く首をかしげた。
名前は聞いたことがある。けれどどんなものかまでは知らない。
「ほら、やっぱり若い子は知らないってよ」
そう言ってミサキが軽く丸藤の肩を叩いた。
「俺と比較するな」
鬱陶しいとばかりに彼はミサキの手を払う。
まあ、そりゃそうだろうな。ミサキはともかく、丸藤さんはもともと江戸時代の人なんだし、そもそも神様なんだし、比較されて若いと言われても。
「タイプライターっていうのはね、そうねえ、ボタンを押すと、その文字が紙に直接印字されるって機械なんだけど」
困惑する僕に、ミサキが説明してくれた。
「まあこのご時世、一度紙に印刷したらおしまいだなんて、不便で仕方ないでしょうね」
パソコンだとか、いろいろ便利なものがあるのに、わざわざタイプライターなんてもの好きねえ、とミサキは呆れている。
「亡くなったご主人は、アンティークとか、そういうのが好きだったとは聞いたけど」
だから部屋に置いていたらしいわ、とのこと。
と言うことは、普段仕事で使ったりしていたわけでもなさそうだ。
なら尚更。
「これから自殺するんだったら、手書きが一番楽だし早い気がするけれど」
僕は隣のミサキを見上げた
「なんでわざわざそんなものを?」
「そこなのよ」
ミサキが深くうなずいた。
「あれなら筆跡が残らない。なるほど偽物の遺書だって思っても不思議じゃないけれど」
だからなのね、と彼は唇を湿らせる。
「納得いかないって、その奥さんが事務所に来たのよ」
高い果物まで持ってきて、どうしても、主人は殺されたに違いないって言っているらしい。
まあ、家族が自殺したなんて信じたくない気持ちはわからなくもない。遺書だって不自然だ。
そこまでなら、警察だって自殺に見せかけた殺人を疑ったかもしれない。
けれど。
「だが部屋には鍵がかかっていた」
探偵が腕を組む。
「それゆえに、警察はこれは自殺だと判断したらしい」
「鍵なんて、誰にだって掛けられるんじゃ」
僕は疑問に思って口を挟んだ。
「それがまた随分古風な造りのもので、鍵屋に頼んでも作れない代物らしいわ。さらにそのカギは主の遺体の懐に入っていて、部屋は内側から鍵がかけられていた」
ゆっくりと薔薇の間を縫う僕らを、冷たい潮風が冷やす。
「つまり、その部屋の鍵を開け閉めできたのは、主だけだったということだ」
そうして、探偵が締めくくった。
「……ってことはやっぱり、自殺なんじゃ」
結局、僕はそう返すしかなかった。
多分、調査に来た警察の人だって、そう言ったに違いない。
「確かに、話だけ聞けばそう思うだろう」
僕の隣で、探偵が目の前の洋館を睨みつける。
「だがそうやって、すぐに決めつけるのが一番よくない」
そう僕を諭す探偵の顔は、先ほどと打って変わってひどく生き生きとしている。
「自殺に見せかけて人を殺すのは、推理小説じゃよくある手だ。きっとこれも、何かトリックがある違にいない」
そして、唇の端を持ち上げる。
「だがこの俺にかかれば、犯人の誤魔化しなんて一目瞭然だ」
「いやねえ、人が亡くなったっていうのに、そんな楽しそうにしちゃって」
不敵に笑う丸藤に、ミサキがあきれたように手を振った。
「これでも神様なんだから、少しはわきまえなさいよ」
「そりゃあ、そうだけど。……でも、どうしたって死んだ人間は生き返らないんだ」
たしなめられ、一瞬口をつぐんだ探偵が再び口を開く。
「だからせめて犯人を捕まえて、罪を償わせないと。故人も浮かばれないだろ」
そう返す探偵の声には、力がこもっていた。
「罪人には、相応しい罪が必要だ」
そうして、拳を握りしめる。
彼が人だったなら、さぞかし痛いだろう、と思うほどに。
「丸藤さん」
いくら犯人捜しの神様だからって、そんな思いつめなくても。
そう思い声を掛けた時だった。
「すみません、お待たせいたしました」
色とりどりのバラが咲き誇る秋空の下、声が響く。
黒い燕尾服に、すらりとした四肢。
現れたのはそんな人物だった。今の時代を錯覚させるような、そのいで立ち。
「わたくし、執事のEthacia(イサーシャ)と申します。お待たせしてしまい大変申し訳ございません」
そして、慇懃に礼をした。まるで、舞台俳優のように。
「あら、ずいぶん美人なこと」
きれいなものに目のないミサキですら絶句している。僕だってそうだった。
短く切り揃えられた金髪が、秋の陽を受けて輝いている。外国の人なんだろう、名前だってそうだし、優しい形の瞳は青かった。
けれどひどく流ちょうに日本語を話すので、僕は混乱する。
「あの、日本人なんですか?」
「いえ。でも、日本語は得意なんです」
そう言ってほほ笑む姿は、クラスメイトが騒ぐどこかのアイドルなんかより、よっぽど……すごい、としか形容できなかった。
まるでお人形みたいだ。
「奥様がお呼びです、さあこちらへ」
そう言ってつかつかと歩き出すイサーシャに、僕らは慌ててついていく。
大きな扉を開いて、その中へ僕らを誘う。脚が長くて、踏み出す一歩が僕らとは大違いだ。
「ねえ、あの人」
僕は小声で隣のミサキに聞いた。
「男の人かな、それとも女の人?」
そう思うほどに中性的だった。
背の高さだとかは男の人っぽいけど、きれいな顔とか柔らかい声だとかは女の人っぽい。
「それを知って、ナオはどうするの?」
少しいたずらっぽくミサキが返す。
「もしかしてナオちゃん、あの人に惚れちゃったの?」
「そんなわけじゃ」
慌てて返すわたしに、丸藤さんが鋭い目を向けた。
そして、いつも以上に厭味ったらしく口を開く。
「仕事中に、ずいぶん呑気なもんだな」
「だから、そういうわけじゃ」
雇用主に睨まれわたしは身を縮こまらせる。
知らない人にいきなり一目ぼれするほど、僕は人間が好きじゃなかったはずだ。
だから、べつにそういうんじゃ。
「なら、尚更どっちだって別にいいじゃない」
慌てる僕をからかうようにミサキが笑った。
「白黒つけない方がミステリアスでいいじゃない、ほら、アタシみたいに」
そう言って彼はさらりと自慢の銀髪を振り払った。
光を受けて、銀河のように煌めく。
その姿だけを見れば、あの執事の人にだって引けをとらないんだろうけど。
「おい、いいから行くぞ」
少し不機嫌な探偵にせかされて、僕は慌てて彼らの後を追った。
カツン、と足音が響く。
広いポーチには、剣を掲げた騎士の像。
ここが日本で、天草の海沿いだってことを忘れてしまいそうだ。
「ちょっと、待ってよ」
ミサキの声も良く響く。まるで、地の底みたいだった。
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
あなたの子ですが、内緒で育てます
椿蛍
恋愛
「本当にあなたの子ですか?」
突然現れた浮気相手、私の夫である国王陛下の子を身籠っているという。
夫、王妃の座、全て奪われ冷遇される日々――王宮から、追われた私のお腹には陛下の子が宿っていた。
私は強くなることを決意する。
「この子は私が育てます!」
お腹にいる子供は王の子。
王の子だけが不思議な力を持つ。
私は育った子供を連れて王宮へ戻る。
――そして、私を追い出したことを後悔してください。
※夫の後悔、浮気相手と虐げられからのざまあ
※他サイト様でも掲載しております。
※hotランキング1位&エールありがとうございます!
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
あなたの秘密を知ってしまったから私は消えます
おぜいくと
恋愛
「あなたの秘密を知ってしまったから私は消えます。さようなら」
そう書き残してエアリーはいなくなった……
緑豊かな高原地帯にあるデニスミール王国の王子ロイスは、来月にエアリーと結婚式を挙げる予定だった。エアリーは隣国アーランドの王女で、元々は政略結婚が目的で引き合わされたのだが、誰にでも平等に接するエアリーの姿勢や穢れを知らない澄んだ目に俺は惹かれた。俺はエアリーに素直な気持ちを伝え、王家に代々伝わる指輪を渡した。エアリーはとても喜んでくれた。俺は早めにエアリーを呼び寄せた。デニスミールでの暮らしに慣れてほしかったからだ。初めは人見知りを発揮していたエアリーだったが、次第に打ち解けていった。
そう思っていたのに。
エアリーは突然姿を消した。俺が渡した指輪を置いて……
※ストーリーは、ロイスとエアリーそれぞれの視点で交互に進みます。
特殊捜査官・天城宿禰の事件簿~乙女の告発
斑鳩陽菜
ミステリー
K県警捜査一課特殊捜査室――、そこにたった一人だけ特殊捜査官の肩書をもつ男、天城宿禰が在籍している。
遺留品や現場にある物が残留思念を読み取り、犯人を導くという。
そんな県警管轄内で、美術評論家が何者かに殺害された。
遺体の周りには、大量のガラス片が飛散。
臨場した天城は、さっそく残留思念を読み取るのだが――。
月明かりの儀式
葉羽
ミステリー
神藤葉羽と望月彩由美は、幼馴染でありながら、ある日、神秘的な洋館の探検に挑むことに決めた。洋館には、過去の住人たちの悲劇が秘められており、特に「月明かりの間」と呼ばれる部屋には不気味な伝説があった。二人はその場所で、古い肖像画や日記を通じて、禁断の儀式とそれに伴う呪いの存在を知る。
儀式を再現することで過去の住人たちを解放できるかもしれないと考えた葉羽は、仲間の彩由美と共に儀式を行うことを決意する。しかし、儀式の最中に影たちが現れ、彼らは過去の記憶を映し出しながら、真実を求めて叫ぶ。過去の住人たちの苦しみと後悔が明らかになる中、二人はその思いを受け止め、解放を目指す。
果たして、葉羽と彩由美は過去の悲劇を乗り越え、住人たちを解放することができるのか。そして、彼ら自身の運命はどうなるのか。月明かりの下で繰り広げられる、謎と感動の物語が展開されていく。
密室島の輪舞曲
葉羽
ミステリー
夏休み、天才高校生の神藤葉羽は幼なじみの望月彩由美とともに、離島にある古い洋館「月影館」を訪れる。その洋館で連続して起きる不可解な密室殺人事件。被害者たちは、内側から完全に施錠された部屋で首吊り死体として発見される。しかし、葉羽は死体の状況に違和感を覚えていた。
洋館には、著名な実業家や学者たち12名が宿泊しており、彼らは謎めいた「月影会」というグループに所属していた。彼らの間で次々と起こる密室殺人。不可解な現象と怪奇的な出来事が重なり、洋館は恐怖の渦に包まれていく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる