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新米吸血鬼は真実を知り世の無情を知る。

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 沈黙を破ったのは不機嫌を隠そうともしない顔で俺たちを咎める女王さまだった。
「貴方達は起きるなり何をつまらない話をしているの? それよりも私はずっと血を摂っていないの。いい加減に誰か連れて来てくれないと自分で狩りに行くわよ」
 その言葉にキドと本間はアタフタし出した。どうやら余程彼女に『狩り』に出て貰っては困るみたいだ。
「志摩子さん、洒落になりませんよ。今、この時代に狩りをするなんて……」
「そ、そうですよ。道を歩けばカメラに当ると言われる、この都会で……」
 俺は二人の慌てる様が可笑しくニヤついていたが、ふと疑問か浮かんで来たので聞いてみた。
「この時代は至る所にカメラが有るので狩りには不向きなんだ。人間を襲ったとして、カメラに写るのは被害者のみだけど、それが逆に僕達が注目される原因になりかねない。それに、“血”なら血液バッグという強い味方が在るしね」
 俺よりも歳上だけど見た目は未成年で、更に美形といえる容姿をした本間京二が説明をしてる間も、志摩子は綺麗に整えた爪を苛々と齧りコチラを睨む。
 なるほど……。キドがさっき迄してた話は昔の事で、今は事情が変わったのか。
 でも、この瞬間でも奴らが言ってる血の渇きを感じないと言う事は、もしかしたら俺はまだ人間なのか?
「もしかしたら……。俺はまだ人間なのか?」
 気が付いたらポロッと言葉を溢してた。それを聞いた三人は顔を見合わせコチラを見ると一斉に手を横に振り口々に言った。
「否、それは無いよ和希」
「一体何を言ってるのかしら、この子は?」
「き、昨日の朝、火傷したのを和希さんは忘れたのですか? 有り得ないです」
 うわぁ~。違うとは思ってたが、ここまでキッパリ否定されるとヘコむわ。
「じゃあ、俺が目覚めてから一切血を摂ってなくても平気なのはどうしてなんだよ。今だって“血の渇き”なんか感じないぞ!」
 意外な事に、彼等は至極真面目に答えたのだ。
「和希さんは『特異体質』なんです」
「うん、そうそう。百人に一人ぐらいは居るね。『吸血要らずの吸血鬼』が」
「カズちゃんは飢えを体験しなくて良いわね。血液バッグの味気ない食事も」
 筋金入りの化け物である吸血鬼の中での吸血無しという特異体質を羨ましがれ、かと言ってメリットが『老けない、死なない』ただ、それしか無い事に、それは本当にメリットなのだろうかと頭を捻る俺がいた。

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