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終焉のアンリミテッド

キール⑥

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「そんな……。僕達T•Kのマスターだよ? 責任者。知らないのは変だ」
「そんなこと言ったって知らないんだから仕方ないだろ」
 それじゃあレイジは毎週呼び出されて十二階で誰と会っているというのか。
「じゃあ一体、毎週十二階で君は誰と会っているんだよ?」
 途端に不機嫌な顔をしてレイジは頭に押し当ててる拳銃をゴリゴリ押し付けて言った。
「あのね、この状況分かってる? アンタに何でプライベートを教える義理があんだよ。そうでなくてもイチイチ逆らってばかりで腹立ってるんだよねオレ」

 仕方ない。ヤツに聞いても教えてはくれないのは分かっていた。
 僕は集中しながら押し付けてる拳銃に手を伸ばして一気に『力』を放出した。パリパリと凍り付く拳銃と、それを握ってるレイジの手。

「何するんだよっ! 仮にも相棒じゃないか。酷過ぎないかコレ?」
「ごめんねー。でも始めに武器を向けたのは君だよ? 僕のはホラ、正当防衛だから」
 そう言ってレイジの手を握り冷凍を解除した。まぁ、拳銃は湿気って使えなくなってしまったけどね。
 君が教えてくれないなら、トーマ様に聞くから良いとしよう。
 結局、謎は一つも解けないまま、アースへと帰る事になった。


 ◇◇◇


 アースに着くまで終始無言で、気まずい雰囲気のままエレベーターに乗り込むと、レイジは話し掛けて来た。
「なぁ、オレも後付けられて、ついカッとなって悪かったよ。でもホントに殺っちまう気は無かったんだぜ。このままじゃ仕事にも支障を来たすし仲直りしょう」
「僕もごめんなさい。でも、ずっと付けてた訳じゃ無くて、たまたま見掛けて気になったから付いていっただけなんだ」
 ここは一旦、和解しとくしか無いだろう。それに、チャンスは必ずある筈だから。

 七階でレイジは降り、僕はそのまま十一階のサイキックルームのある階で降りた。
 自動ドアが音もなく開くと小さな子が飛び付いて来た。金髪のクルクルの巻き毛、ルイが昔のままの姿で現れたのかとドキッとする。
「あ、ごめんなさい」
 どうやら友達と追いかけっこして遊んでいて弾みでぶつかったらしい。姿形が同じでもルイとは顔が似ていなかった。
 ルイ、会いたいよ……。君の成長した姿を今、すごく見たい。

 この上の階にトーマ様が居る。レイジが上に行く日は確か明日の夜だったはず。
 今までは勇気が出なくて行けなかったけど。アンリさんの事を聞きたいからレイジがマスターと一緒の所を初めて視る決心をした。

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