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終焉のアンリミテッド
キール②
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「キールだっけ? よろしくな」
気乗りしないが、年長である僕に最低限の挨拶を嫌々してるのが透けて見えて、ヤツが益々嫌いになった。
前に会った事があるのをスッカリ忘れたのか、それともルイに関わる全てを無かった事にしたいのか分からないが、まるで初対面の様な態度にもカチンとした僕はそっぽを向いたままぶっきら棒に返す。
「よろしく……」
特に気にも止めず、やる気の無さそうな顔で、そのまま仕事のミーティングに向かう。
パートナーになって最初の仕事は特に難しいミッションでは無く、T・Kじゃなくてもこなせる案件だった。
だが、このちょっとした仕事でさえも息の合わない二人には、トラブル続きのお粗末な結果で。生きて帰れたのが不思議なぐらいだと言われた。
「なあ、ちゃんと『視て』くれよ! これじゃ独りで仕事した方がよっぽどマシだ」
自分だって協調性ゼロの癖に、僕のせいとばかり責めてくるレイジに隠してた殺意が顔を出す。
「何だよ、殺るのか?」
実戦チームのエリートらしく殺気には敏感でサッと顔色を変えて言った。
「やだなあ、仲間同士で殺し合ってどうするの?」
咄嗟に誤魔化して嗤う。ここで仲違いしたって仕方ない。
目的は喧嘩じゃない抹殺なのだ。僕にもっと強力な能力《力》があったなら。今すぐにでもヤツをヤッてしまいたい。
僕の能力は『透視』と『水』。どう考えてもコロシには不向きな力だ。
せめてショーゴみたいな炎か、クレアみたいなサイコキネシスだったら良かったのに。
自分で始末する事が出来ないのなら、上手く人を使うしかない。
そのチャンスを伺いながら与えられた仕事をこなしていたある日。
滅多にない事だが、レイジが一人で街をぶらついている所を見掛けた。
何時も誰かを従えて王様然としたヤツが、供の一人も付けず愛人のゼンすらいない。
大いに好奇心をくすぐられて後を付けてみる事にした。
このとき何気なく取った行動が、後に僕の背を押す動機となったのは間違えないのない事実だ。
レイジはどうやら目的地が決まっているみたいで、商店の店先で掛けられる声も、通行人の無遠慮な視線も意に介せず脇目も振らず歩いて行く。
僕は適度に距離を保ちながら、見失わない様に必死で後を付ける。
やがて賑やかなメインストリートから外れ、貧困層の治安の悪い地域に来た。
スラムに来たのは初めてで、ヤツが何故こんな場所に用があるのかと訝しんでたら、不意に足を止めて両開きの大きなドアを予告なく開けた。
そこは誰もが立ち入ることの出来る場所。教会だった。
気乗りしないが、年長である僕に最低限の挨拶を嫌々してるのが透けて見えて、ヤツが益々嫌いになった。
前に会った事があるのをスッカリ忘れたのか、それともルイに関わる全てを無かった事にしたいのか分からないが、まるで初対面の様な態度にもカチンとした僕はそっぽを向いたままぶっきら棒に返す。
「よろしく……」
特に気にも止めず、やる気の無さそうな顔で、そのまま仕事のミーティングに向かう。
パートナーになって最初の仕事は特に難しいミッションでは無く、T・Kじゃなくてもこなせる案件だった。
だが、このちょっとした仕事でさえも息の合わない二人には、トラブル続きのお粗末な結果で。生きて帰れたのが不思議なぐらいだと言われた。
「なあ、ちゃんと『視て』くれよ! これじゃ独りで仕事した方がよっぽどマシだ」
自分だって協調性ゼロの癖に、僕のせいとばかり責めてくるレイジに隠してた殺意が顔を出す。
「何だよ、殺るのか?」
実戦チームのエリートらしく殺気には敏感でサッと顔色を変えて言った。
「やだなあ、仲間同士で殺し合ってどうするの?」
咄嗟に誤魔化して嗤う。ここで仲違いしたって仕方ない。
目的は喧嘩じゃない抹殺なのだ。僕にもっと強力な能力《力》があったなら。今すぐにでもヤツをヤッてしまいたい。
僕の能力は『透視』と『水』。どう考えてもコロシには不向きな力だ。
せめてショーゴみたいな炎か、クレアみたいなサイコキネシスだったら良かったのに。
自分で始末する事が出来ないのなら、上手く人を使うしかない。
そのチャンスを伺いながら与えられた仕事をこなしていたある日。
滅多にない事だが、レイジが一人で街をぶらついている所を見掛けた。
何時も誰かを従えて王様然としたヤツが、供の一人も付けず愛人のゼンすらいない。
大いに好奇心をくすぐられて後を付けてみる事にした。
このとき何気なく取った行動が、後に僕の背を押す動機となったのは間違えないのない事実だ。
レイジはどうやら目的地が決まっているみたいで、商店の店先で掛けられる声も、通行人の無遠慮な視線も意に介せず脇目も振らず歩いて行く。
僕は適度に距離を保ちながら、見失わない様に必死で後を付ける。
やがて賑やかなメインストリートから外れ、貧困層の治安の悪い地域に来た。
スラムに来たのは初めてで、ヤツが何故こんな場所に用があるのかと訝しんでたら、不意に足を止めて両開きの大きなドアを予告なく開けた。
そこは誰もが立ち入ることの出来る場所。教会だった。
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