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43.今日の良き日
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ポン、ポポン!
あちこちで花火が鳴らされて、そのたびワァッと子供たちの歓声が上がります。
スキャーリオン王国では、今日はめでたくも王族の結婚式なのです!
街中が色とりどりの花で飾られ、人々は皆心からの笑顔で今日の良き日をお祝いしています。
そんな華やかに活気付いた街の片隅に一人の男が馬車から降り立ちます。
「はっ・・!! な、なんて麗しいお方・・・」
「何て上品な佇まいなんでしょう・・! ありがたいお姿なんでしょう!!」
「あぁ・・あの髪と瞳の色・・! 何と不思議な・・浅葱色とでもいうのでしょうか・・? 心が洗われるよう・・」
―――そう、たった今隣国から着いたばかりのヤカフ・スィブール・デ・ギネオア伯爵・・・相変わらずの美麗な姿にどこか思い詰めたような哀愁も加わって、ボウッと眺めるご婦人方がうっかりヨダレを垂らしてしまう程の色男っぷりです。
キララキララとイケメンビームを放ちながら視線を向けた先に、王宮で結婚の儀を終え、パレードで国民から祝福を受ける本日の主人公、新郎プエーロ・・ん?・・新婦リーク王女・・・おぉ、そうです!
キヤギネの応援を受けたプエーロの熱烈な愛にほだされ、ついにリークが兄以外の男に恋をし、本日のめでたい結婚へと相成ったわけなのです!
オープン馬車から国民に手を振るリークとプエーロ、気付きたくなくても気付かずにはいられない無視するのが不可能な程ド派手なイケメンオーラを放つヤカフ伯爵に気付くと、一瞬目を逸らしてしまうのですが、すぐに気を取り直してにこやかな笑顔を向け、サッサと通り過ぎようとします。
しかし余計な気を利かせた従者が「はっ・・親しいご友人様でございますね? さ、どうぞ!」とヤカフ伯爵を馬車へと誘ってしまい、ヤカフ伯爵も一切遠慮することなく当たり前の様に頷くと、ステップを用意しようとした従者を手で制し、軽やかに馬車にヒラリと飛び乗って来ます。 その瞬間、馬車を取り囲んで大きな人だかりとなっていた民衆のあちらこちらで「キャ~~~ッ」「ステキ~~~ッ」「シビレる~~~ッ」の大歓声!
何故、お前が!?という当たり前の疑問を見事にはねのける美し過ぎる笑顔で民衆に手を振れば、バッタバッタと失神するご婦人達・・・涙まで流して熱狂する民衆に、ガックリと肩を落とす新婚夫婦・・・そんな夫婦に、ヤカフ伯爵は自身も感動しながら、祝福の言葉を伝えます。
『おめでとうございます! 今日は二人とも、最高に輝いてるね! 特にリーク、見違えたよ! まるで女じゃないか! あ、ゴメン、新郎さんは初対面かな? え? 違う? 何度も会ってる? 二人だけで酒を飲みに行った事もある? アッハハ・・え? マジ!?』
天然なのです。 決してケンカを売っているわけではないのです。
「・・・どうも。 ヤカフ伯爵・・何か毎週我が国へ遊びに来ては3~4日ご滞在されてご帰国される・・・まるでこちらの国の人間のようです事。 お国でご家族が寂しがっておられるのではないですか?」
リークが笑顔の仮面を貼り付けて、僅かに震える声で訊ねます。 左手は殴りかかろうかという新郎を制しています。
『いや・・・家族と言っても、俺はもう独りだし・・・当分他の女性と結婚する気にはなれないし・・・』
ヤカフ伯爵がフッと顔を曇らせて、俯き加減に視線を落とせば、浅葱色の美しい髪が額に掛かり影を作り、リークでも思わずキュンとしてしまう程の哀愁を醸し出し・・
「真っ白白の結婚だったそうではないですか。 それなのに未練があるのですか?」
思わず頬を染めたリークにムッとして、プエーロは遠慮無用とばかりに質問します。
『真っ白白だったからこそ・・かもしれないね?』 ニコッ キラキララ~~~ン
ハッ・・「ヤ、ヤカフ伯爵・・・すいません、俺、無神経な事を・・・」
「ストッピングですわ!! プエーロさんが謝る事なんて、1ミリたりとも無いのですわ!」
しんみりしかけたオープン馬車に、鈴のような声が響き渡ります。
「ハッ! この声は!」「ベナ様!? お帰りになられたのでしょうか!?」
『あぁ・・懐かしい俺の(元)妻の愛しい声・・一体どこから??』
どこからって・・・決まってます。 彼女は魔法使いなのですから・・・
「頭上から失礼致しますわ! リーク王女様、プエーロさん、あ、いえ、プエーロ様、ご結婚おめでとうございます!! お二人を祝福したくて、飛んで来たんですのよ!」
可愛い義妹&夫の忠実なる部下の結婚を祝福する為本当に空を飛んで来たのは勿論、こちらもまだまだ新婚さんのベナなのです。
あちこちで花火が鳴らされて、そのたびワァッと子供たちの歓声が上がります。
スキャーリオン王国では、今日はめでたくも王族の結婚式なのです!
街中が色とりどりの花で飾られ、人々は皆心からの笑顔で今日の良き日をお祝いしています。
そんな華やかに活気付いた街の片隅に一人の男が馬車から降り立ちます。
「はっ・・!! な、なんて麗しいお方・・・」
「何て上品な佇まいなんでしょう・・! ありがたいお姿なんでしょう!!」
「あぁ・・あの髪と瞳の色・・! 何と不思議な・・浅葱色とでもいうのでしょうか・・? 心が洗われるよう・・」
―――そう、たった今隣国から着いたばかりのヤカフ・スィブール・デ・ギネオア伯爵・・・相変わらずの美麗な姿にどこか思い詰めたような哀愁も加わって、ボウッと眺めるご婦人方がうっかりヨダレを垂らしてしまう程の色男っぷりです。
キララキララとイケメンビームを放ちながら視線を向けた先に、王宮で結婚の儀を終え、パレードで国民から祝福を受ける本日の主人公、新郎プエーロ・・ん?・・新婦リーク王女・・・おぉ、そうです!
キヤギネの応援を受けたプエーロの熱烈な愛にほだされ、ついにリークが兄以外の男に恋をし、本日のめでたい結婚へと相成ったわけなのです!
オープン馬車から国民に手を振るリークとプエーロ、気付きたくなくても気付かずにはいられない無視するのが不可能な程ド派手なイケメンオーラを放つヤカフ伯爵に気付くと、一瞬目を逸らしてしまうのですが、すぐに気を取り直してにこやかな笑顔を向け、サッサと通り過ぎようとします。
しかし余計な気を利かせた従者が「はっ・・親しいご友人様でございますね? さ、どうぞ!」とヤカフ伯爵を馬車へと誘ってしまい、ヤカフ伯爵も一切遠慮することなく当たり前の様に頷くと、ステップを用意しようとした従者を手で制し、軽やかに馬車にヒラリと飛び乗って来ます。 その瞬間、馬車を取り囲んで大きな人だかりとなっていた民衆のあちらこちらで「キャ~~~ッ」「ステキ~~~ッ」「シビレる~~~ッ」の大歓声!
何故、お前が!?という当たり前の疑問を見事にはねのける美し過ぎる笑顔で民衆に手を振れば、バッタバッタと失神するご婦人達・・・涙まで流して熱狂する民衆に、ガックリと肩を落とす新婚夫婦・・・そんな夫婦に、ヤカフ伯爵は自身も感動しながら、祝福の言葉を伝えます。
『おめでとうございます! 今日は二人とも、最高に輝いてるね! 特にリーク、見違えたよ! まるで女じゃないか! あ、ゴメン、新郎さんは初対面かな? え? 違う? 何度も会ってる? 二人だけで酒を飲みに行った事もある? アッハハ・・え? マジ!?』
天然なのです。 決してケンカを売っているわけではないのです。
「・・・どうも。 ヤカフ伯爵・・何か毎週我が国へ遊びに来ては3~4日ご滞在されてご帰国される・・・まるでこちらの国の人間のようです事。 お国でご家族が寂しがっておられるのではないですか?」
リークが笑顔の仮面を貼り付けて、僅かに震える声で訊ねます。 左手は殴りかかろうかという新郎を制しています。
『いや・・・家族と言っても、俺はもう独りだし・・・当分他の女性と結婚する気にはなれないし・・・』
ヤカフ伯爵がフッと顔を曇らせて、俯き加減に視線を落とせば、浅葱色の美しい髪が額に掛かり影を作り、リークでも思わずキュンとしてしまう程の哀愁を醸し出し・・
「真っ白白の結婚だったそうではないですか。 それなのに未練があるのですか?」
思わず頬を染めたリークにムッとして、プエーロは遠慮無用とばかりに質問します。
『真っ白白だったからこそ・・かもしれないね?』 ニコッ キラキララ~~~ン
ハッ・・「ヤ、ヤカフ伯爵・・・すいません、俺、無神経な事を・・・」
「ストッピングですわ!! プエーロさんが謝る事なんて、1ミリたりとも無いのですわ!」
しんみりしかけたオープン馬車に、鈴のような声が響き渡ります。
「ハッ! この声は!」「ベナ様!? お帰りになられたのでしょうか!?」
『あぁ・・懐かしい俺の(元)妻の愛しい声・・一体どこから??』
どこからって・・・決まってます。 彼女は魔法使いなのですから・・・
「頭上から失礼致しますわ! リーク王女様、プエーロさん、あ、いえ、プエーロ様、ご結婚おめでとうございます!! お二人を祝福したくて、飛んで来たんですのよ!」
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