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14.旦那様はイライラ・モード
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・・・丸聞こえなんだが・・・
食堂で、突然妻・ベナが俺の執事キヤギネの袖を引っ張って、部屋の隅に連れて行き、多分本人としては小声で、文句をまくし立てている・・・
・・で、なぜ、俺がゲイって事になってる!? 俺の顔を見た途端、様子が変わったから、俺の顔に“俺はゲイだ”とでも書いてあるんだろうか?
何でだ!? 女好きとは言わないが、男に興味を持った事などない。 おい、キヤギネ、さっさと誤解を解け!! 何か、ベナがメチャメチャ泣いてるじゃないか!!
「お、落ち着いて下さいませ、奥様! 旦那様は、確かに男性にも大層おモテになりますが、」
「でしょ!? だと思ったのよ! じゃ、じゃ、私、どうするべき!? やっぱり、消えるべきなのかしら? そうよね、私の部屋は、ヤカフ様が愛する男性が使うべきだもの!」
「いいえ、そんな事は・・・! あぁ、でも、もし出て行きたいのであれば、『バカみたいに3階から逃げようとしなくとも、堂々と玄関から出て行ってくれていいのだ。』と仰ってました。 なので、もうムリはなさらないで下さいまし・・」
・・バッ・・・! バカなのか!? キヤギネ!!
ソレ、今言うべき事じゃないだろう! 今言うべき事を言え!!
今すぐ、俺はゲイじゃないと言うんだ!! 言わなきゃクビだ!!
「ですが奥様、旦那様は異性愛者でございます。 何故、ゲイだとお思いに?」
・・・セーフだな、キヤギネ・・・だが、余計な疑問を口にするな! 俺がケガする予感しかしない・・・
「だって、あまりにお美しいからですわ・・どんな女性だって手に入れられるのに、私と結婚するなんて、何か深い理由があるのだと思ったのですわ・・」
「奥様・・・」 『(ベナ・・・)』
『こ、こほん! ベナ、食事にしよう! 何か疑問などあれば、直接俺に聞くといい! キヤギネ、お前もあまり夫婦の事に出しゃばるな!』
(そうだ、おかしいだろう。 何で俺よりキヤギネと親しくなっているのだ? 涙目で見つめるとか、袖を引っ張るとか、そーゆー小悪魔的な振る舞いは、キヤギネじゃなく、俺にするべきだ! 後、キヤギネに対する声が、やたら甘えん坊だぞ!?)
「・・えっ! はっ、はいっ! 失礼いたしました!!」
ベナが真っ赤な顔で答える。 その直後、キヤギネを振り返り、腕に掴まり目一杯背伸びをして、何事かとベナの方に頭を傾けたキヤギネの耳元に唇を寄せ、
「ごめんね、私のせいで、キヤギネさんが叱られちゃった・・」とか言っている・・・最高に甘い声で・・・
ブチッ・・・ 切れた、俺の中で何かが切れ・・
「よかったです、ゲイじゃなかったのですね!」
『・・・!!』
可憐な花のようなベナが小走りでテーブルに戻ってくると、部屋の空気が変わるのを感じる。
「あの、ヤカフ様がゲイだったら私、ここに居られませんもの・・。 だから・・・よかったです。」
そう言って俯いてはにかむ様に微笑むベナを見ると、不思議と心が落ち着いて・・・それなのに口からは意外な言葉が出てしまう。
『・・そうか。 ベナは、妬いてはくれないのか? 俺がゲイなら黙って消えてしまうのか? 俺に対して、妻が普通夫に持つであろう“独占欲”は、生じないのかな?』
まだ何の関係も築いていないのに、独占欲など生まれようはずが無い。 それなのに、そんな馬鹿な質問が口をついて出たのは何故だろう・・・
ベナはフワリと顔を上げ、無垢な瞳で俺を見つめると、
「ヤカフ様は、何故私を妻になさったのですか?」 と訊いて来る。
そのあまりの無垢さに、つい本心を言ってしまう。
『自分でも、何故か分からない・・・うん、分からないんだ・・・』
何てバカな返しだろう。 運命を感じたとか、一目惚れしたとか、或いは手続き上必要だったとか、とにかく何でも言いようがあったろうに、一番理解されない本心を吐露してしまうとは・・
だが、それに対するベナの答えもまた、意外なものだった。
食堂で、突然妻・ベナが俺の執事キヤギネの袖を引っ張って、部屋の隅に連れて行き、多分本人としては小声で、文句をまくし立てている・・・
・・で、なぜ、俺がゲイって事になってる!? 俺の顔を見た途端、様子が変わったから、俺の顔に“俺はゲイだ”とでも書いてあるんだろうか?
何でだ!? 女好きとは言わないが、男に興味を持った事などない。 おい、キヤギネ、さっさと誤解を解け!! 何か、ベナがメチャメチャ泣いてるじゃないか!!
「お、落ち着いて下さいませ、奥様! 旦那様は、確かに男性にも大層おモテになりますが、」
「でしょ!? だと思ったのよ! じゃ、じゃ、私、どうするべき!? やっぱり、消えるべきなのかしら? そうよね、私の部屋は、ヤカフ様が愛する男性が使うべきだもの!」
「いいえ、そんな事は・・・! あぁ、でも、もし出て行きたいのであれば、『バカみたいに3階から逃げようとしなくとも、堂々と玄関から出て行ってくれていいのだ。』と仰ってました。 なので、もうムリはなさらないで下さいまし・・」
・・バッ・・・! バカなのか!? キヤギネ!!
ソレ、今言うべき事じゃないだろう! 今言うべき事を言え!!
今すぐ、俺はゲイじゃないと言うんだ!! 言わなきゃクビだ!!
「ですが奥様、旦那様は異性愛者でございます。 何故、ゲイだとお思いに?」
・・・セーフだな、キヤギネ・・・だが、余計な疑問を口にするな! 俺がケガする予感しかしない・・・
「だって、あまりにお美しいからですわ・・どんな女性だって手に入れられるのに、私と結婚するなんて、何か深い理由があるのだと思ったのですわ・・」
「奥様・・・」 『(ベナ・・・)』
『こ、こほん! ベナ、食事にしよう! 何か疑問などあれば、直接俺に聞くといい! キヤギネ、お前もあまり夫婦の事に出しゃばるな!』
(そうだ、おかしいだろう。 何で俺よりキヤギネと親しくなっているのだ? 涙目で見つめるとか、袖を引っ張るとか、そーゆー小悪魔的な振る舞いは、キヤギネじゃなく、俺にするべきだ! 後、キヤギネに対する声が、やたら甘えん坊だぞ!?)
「・・えっ! はっ、はいっ! 失礼いたしました!!」
ベナが真っ赤な顔で答える。 その直後、キヤギネを振り返り、腕に掴まり目一杯背伸びをして、何事かとベナの方に頭を傾けたキヤギネの耳元に唇を寄せ、
「ごめんね、私のせいで、キヤギネさんが叱られちゃった・・」とか言っている・・・最高に甘い声で・・・
ブチッ・・・ 切れた、俺の中で何かが切れ・・
「よかったです、ゲイじゃなかったのですね!」
『・・・!!』
可憐な花のようなベナが小走りでテーブルに戻ってくると、部屋の空気が変わるのを感じる。
「あの、ヤカフ様がゲイだったら私、ここに居られませんもの・・。 だから・・・よかったです。」
そう言って俯いてはにかむ様に微笑むベナを見ると、不思議と心が落ち着いて・・・それなのに口からは意外な言葉が出てしまう。
『・・そうか。 ベナは、妬いてはくれないのか? 俺がゲイなら黙って消えてしまうのか? 俺に対して、妻が普通夫に持つであろう“独占欲”は、生じないのかな?』
まだ何の関係も築いていないのに、独占欲など生まれようはずが無い。 それなのに、そんな馬鹿な質問が口をついて出たのは何故だろう・・・
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何てバカな返しだろう。 運命を感じたとか、一目惚れしたとか、或いは手続き上必要だったとか、とにかく何でも言いようがあったろうに、一番理解されない本心を吐露してしまうとは・・
だが、それに対するベナの答えもまた、意外なものだった。
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