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第三章

28 謎めく笑顔

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カッカッカッ‥‥


キラッキラの輝きオーラを放ちながらステラに向かって歩を進める彼。

美しくも神秘的なロイヤルパープルの瞳はステラだけを捉えている。


(ただ歩いているだけなのに尊過ぎて目眩がする。
ホラ、彼が通れば皆恍惚の表情で失神していくし)


固まったまま視線を外す事も出来ず彼と見つめ合う格好のステラ。


(く、眩し過ぎる‥‥
目が潰れたらどうしよう)


ステラに対しても『美し過ぎる』『尊過ぎる』『眼福の極み』と声が上がっているが、ステラには全く聞こえていない。

それどころではない!


カッカッカッ‥‥


(でも‥どうして?)


カッカッカッ‥‥


(近付くほどに)


カッカッカッ‥‥


(謎めく笑顔)


カッカッカッ‥‥


(本当は怒って‥‥
いるんでしょ?)


6年間、白小熊状態の彼の表情を読んで来たステラには、たとえどんなに魅力的な笑顔をしていようとも、その心中が笑顔でない事が分かってしまう。

白く滑らかなステラの柔肌にツツッと冷たい汗が流れる。

体が小刻みに震えて来る‥‥


(あの笑顔はヤバい。
かなり、マズい。
是非、逃げたい。
でも、背後には王家が転がっているし、左右には人垣が出来ているし。
あぁ、もう来る。
ひぃ、美し過ぎるッ!
存在の迫力がスゴイ!
え‥‥と、逃げられない以上、まずは挨拶?
それとも本人確認?
いや、確認しなくたって絶対白クマさん‥‥
あぁもう目の前に‥‥
ん?
ちょッ!?
止ま‥‥何!?
待ッ‥‥)


フワッ‥‥

ギュゥッ‥‥!


(えぇぇぇ~~!?
何!?何何なッ‥‥)


パニック状態の頭で、どうやら抱きしめられているらしいと結論付けるものの、ステラはこの状態があり得なさ過ぎて声も出せない。

会場の他の人々も目と口を最大限に開いたまま絶句状態。


ビックリを通り越すって、驚愕の向こう側って、こういう事!?


(だって、
何で!?
いきなり!?
一言も無しに!?
どうして!?
どうしたの!?
『ツン』は!?
いつもは『ツン』ばかりだったのに!?
滅多に『デレ』はくれなかったのに!?
いきなりの『デレ』って!
『ツン』無しの『デレ』って!?
『ツン』は‥‥
『ツン』はどこ!?
『ツン』をどこに忘れて来たのぉ~~~!?)



「‥‥ステラ」

「‥‥ふぁいッ?」

「俺の事分かる?」

(そりゃ、モチ)
「‥‥白クマさん」

「フッ‥‥
そう‥‥名乗ってなかったな。
俺の名はキールだ。
‥‥会いたかった」


(‥‥ッ!)


トクン、トクン、
トク、トク、トク、
トットットット‥‥


ステラの心臓が思い出した様に騒ぎ出す。

少しずつ、大きく、恥ずかしいほどに。


(色々ビックリし過ぎて失念していたけど。
そう‥‥だ。
会いたかった。
一ヶ月、会えなくて苦しかった。
そう‥‥ただ、会いたかった!)


ステラも彼の背中に手を回す。


モフモフではないけれど、
確かにここに居る!


その確かな存在感に胸がキュウンとする!


(あぁ‥‥同じ‥‥
白クマさんのモフモフと同じ、柔らかな花の香り‥‥
あたたかさ‥‥)



「私も、同じ。
会いたかった‥‥
会えて嬉しい‥‥
来てくれて、ありがとう」



パチ‥パチパチ‥パチ
‥パチパチパチパチ!


大ホール中に大きな拍手が湧き起こる!
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