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第三章

18 絶対忘れているディング

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クレアとの醜態をステラに目撃されていた事がさすがにショックだったディング。

壇上から飛び降りたまではいいが‥‥

そのまま消えればいいのにステラに向かって全力疾走して来るのは何故だ‥‥


先ほど第三王子ルアが歩いた為、人々の間に綺麗に道が出来ている。

その障害物の無い道を、ステラ目掛けて全力疾走して来るディング。


恐怖というよりは嫌悪感で一瞬たじろぐステラ。

ディングは走りながら大声で言い訳する。



「非難されるべき危険行為だが、アレはクレアがやりたがったんだ!
赤い魔玉から魔力を吸い上げて魔力量が高かったから恐いものが無かったんだろう」


‥‥何て滑舌の良い男なんだろう‥‥


大ホール中の人々が思わず感心する。

全力で走りながら叫んでいるのだろうに、一言一句キチンと聞き取れる。

あまりにもちゃんと聞こえ過ぎて、逆に何を言っているのか分からない程だ。



「赤い魔玉から魔力を吸い上げたって‥‥
つまり、クレア様は他人の魔力を自分の体に流してしまったと!?
そんな事をしたら体にどんな悪影響が出るか分からないのに‥‥!
まさかそんな自殺行為をする人がいるだなんて‥‥」



皆よりはディングの滑舌の良さに慣れているステラ。

ちゃんとディングの発言内容を理解し、驚愕する。



「アレは欲望を我慢出来ない女なのだ!
他者の魔力を自分の体に取り込むのは犯罪行為とされている。
魔力に詳しくない私だって――小さな子供だって知っている。
知っていてなお我慢出来ないのだ。
魔力泥棒を防ぐというよりは、体を守る為の法律なのにな‥‥
愚かな≪バインッ!≫
‥‥うわッ!?」



滑舌良く叫びながら全力疾走していたディングが突然後方へ弾き飛ばされた!


ダダーーーン!
「‥カハァッ!?」



突然の出来事に、大ホールは騒然とする。



「な、何だ今の!?」
「まるで透明な何かに跳ね返った様だったぞ!」
「魔法か!?」
「誰の!?」



一般にティスリー王国民は、魔法は魔道具を使う時ぐらいしか見る事は無い。

そんな人々の目の前で、魔道具も無いのに不思議な現象が起きた。

卒業生達は勿論、保護者達も、教師までもがパニック寸前である。


ディング自身も何が起きたか分からない。

更に床に思いっきり背中を打ち付けたせいで、一言も発する事が出来ない。

そんな男を残念そうに見ながら、ステラが口を開く。



「お忘れですか?
(バカですか?)」
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