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第一章

09 公爵家の矜持

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「では、魔法契約を締結致しますので、皆様、陣の上に手を置いて下さい。
手袋等ははずし、素手でお願い致します」



幾つかの簡単な問答の末、文官がそう言った。


私の執務室。

私の執務机を挟んで机のこちら側に私と父上とクレアが、

向かい側にはステラと義母が、

机の横に文官が、

少し離れた場所にカロンとステラの侍女&護衛が立っている。

更に離れたドア付近にその他の侍女や護衛が立っている。



――『陣』とは、魔法陣の事だろう。

文官がカバンの中から出した布に描かれた紋様の様な‥‥よく分からん。



国民の魔力保持率が60パーセントに上るティスリー王国。

平民でも魔力保持者がいるという、世界的にもかなり高い保持率だ。


と言っても、個々が持つ魔力量は微々たるもの。

昔の様に強大な魔力を保持するのは王家の一部だけ‥‥

今なら現王のウィーツ・ス・ティスリーだけだ。

そう、父上、スタード公爵は、あまり魔力を持っていない。

父上が兄であるにも関わらず誰もが納得する形で弟に王位を譲る事になったのは、保持魔力の少なさが最大の理由だ。


だが‥‥


父上はよく仰っている。

戦の無い平和な今の時代、保持魔力など重要ではないと。

魔力など持っていなくても『魔玉』があればいいのだと。


そう、魔道具と魔玉さえあれば、魔力など無くとも魔法の恩恵に預かれる。

現に我が公爵邸は、そのお陰で快適に維持、管理出来ている。


父上の御意向もあり、実際に必要無い事から、我が公爵家は、魔法や魔力に関しては無関心で、敢えて知識も持たない様にしている。

父上の、弟王に対する『意地』なのかもしれない‥‥



それにしても‥‥

何だ、『魔法契約』って意外と簡単なんだなと拍子抜ける。

頭上で雷とか鳴る様なイメージだったのに‥‥


義母が渋々手袋を取っている。

どんなに努力しても手のシワは誤魔化せない様で、義母は常に手袋をしている。


‥‥モタついてるのがもう一人。

ステラ、ゴソゴソと何をやって‥‥



「‥ぅわぁッ!?」



あまりの事に、私は思わず次期公爵として相応しくない声を上げてしまった!

だ、だ、だって!?

ステラの腕が、う、



「ステラッ!
君、腕、ソレッ!?」
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