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103 何者

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山の中腹にあるこじんまりとした別荘風の建物。

何の変哲もないこの建物が『組織』の日本支部だ。

日本には監視対象がナイトただ一人だったので最小規模だ。


フィカスが一人で来ると思っていた『管理者』たちはユウトとナイトが付いて来ている事に驚く。

フィカスから話を聞き、対策を練った後改めて呼びつける積りでいたのだ。

だが、『まぁいい。手間が省けた』と彼等は思った。


『管理者』たちは総入れ替えになっている。

今までの者達はドロセラを始めとして皆使い物にならなくなってしまった。

負傷したドロセラは回復ポッドに入って一命は取り留めたが地球にあるシステムでは腕の再生までは出来ない為近く地球を離れる。

『管理者』の一人は死亡。

残る2名は辞表を出して来た。

故郷の星に戻り貧しくとも心穏やかに生きたいとぼんやりとした穏やかな様子で言って来て、何があったのか原因を調査中だ。

これは異常事態であると、彼等の代わりに『上級管理者』が派遣されて来た。

望み通りの人工惑星が作れる様になった今、辺境の星と見なされている地球へ3名もの『上級管理者』が派遣されるのは異例のこと。

新任の彼等はまだ日本語をマスター出来てないが、フィカスが何語にも対応出来るはずなのでフィカスさえ居れば問題無い。

彼等も見た目は前任者達と同様に普通に日本人の40代会社員に見える。

変装しているワケではなく元々の容姿だ。

その3人の前によっぽど宇宙から来たっぽいユウト、ナイト、フィカスが並び立つ。


[‥招待していない2名には自己紹介をして頂こうか。
フィカス、日本語に通訳を‥]

[あれ?僕たちは普通、礼儀としてまず自分から名乗りますけど?]

[そうだな。
乱暴な連中だ]

[‥!
全員言葉が分か‥]
(イヤ待て…この言葉は我々の言葉で…地球上では使われていないはず…唯一『施設』でフィカスの様な特別に優秀な子にだけ教える言語だ…それを何故…フィカスが教えたというのか!?)


あまりにも想定外の事態にユウトを真ん中にその両隣りにナイトとフィカスという物語に出てきそうな美しい地球人達をボウッと見る『上級管理者』たち。

そんな彼等にユウトが言い放つ!


[地球に無いテクノロジーで同意なく洗脳して来る卑怯者達に名乗るつもりは無いけどね!]

[[[‥ハッ‥]]]


ズグヮッ!!


一瞬の、出来事――


の様に『上級管理者』達には感じられた。

『名乗るつもりは無い』と言うのと同時に少年のアンバーの瞳が金色に変化し?

その金色が光って広がり辺り一帯金色になった――

そして気付けば外――山の中に立っている?

た、

建物が消えている!?

モウモウとした煙が薄くなっていくと、どうやら屋根と四方の壁が吹き飛ばされたのだと気付く。


[なッ、これはッ‥]
[誰がどうやって‥]

[なるほどこうやって俺達を洗脳していたんだな]


ナイトが壁の残骸を睨みつけながら納得する。

壁の中に機器が――

どうやら壁材で隠されたボックス型の装置だったのだと分かる。

建物自体が洗脳装置だったのだ。


[ここを訪れる度に私は洗脳を強化されていたのですね…]

[煩い波動と信号の嵐が無くなったところで、本当の歴史を見てもらうよ。
ナイト、フィカスさん、自分達の祖先の真実を見て!
――罪人なんかじゃなかったって事を!]

「「‥ユウトッ‥」」

[[[何をッ‥]]]

【‥行くよ!】



文化祭ライブの最中、

ナイトとフィカスに「「‥愛してる‥」」と言われた瞬間、ユウトの意識は不思議な場所へ飛び、大昔、本当は何が起こったのかを見た。

ユウトは5人の脳に自分が見たものを見せた。




遠い昔


美しい森の惑星バンダに美しい少数民族がいた。

近隣惑星の王たちは競ってその民族を狩り、蹂躙した。


一方で


美しい水の惑星アルテシマに美しい少数民族がいた。

近隣惑星の王たちは競ってその民族を狩り、蹂躙した。



迫害され踏みつけられた彼等の嘆きと怒りが『超能力』の最初の発現となった。

彼等は『超能力』で対抗するようになった。

が、数の力には敵わず、地球へと逃れた――




これが真実。



彼等は罪人ではなかった。

不当に迫害された被害者だった。


何故、罪を償う必要があろうか?


それなのに、今なお『超能力』を恐れた支配者達に罪人の汚名を着せられ迫害され続けている。

洗脳し、支配出来る者は生かし、そうでない者――種族の血を守っている者達は洗脳が効かない為、殺す。

何故完全に皆殺しにしないかと言えば、彼等の『力』、そして何よりもその美貌が惜しいから。



「「―――‥‥」」



ナイトとフィカスは言葉も出ない。

洗脳されていたと自覚しても洗脳は中々抜けきれないでいた。

だが、事実を見た今、洗脳は完全に解けた。

とは言え、直ぐに怒りが込み上げるという事は無く、今は脱力感を感じている。

それ程に大きい事だったから。


[う、嘘だッ…]

[我々が知る歴史と真逆ではないかッ!?]

[信じられんッ!
我々の信念の全てが崩れてしまうッ]


床(と地下室)だけになった『組織』の日本支部で、『上級管理者』達は床にへたり込み、やがてユウトに虚ろな視線を向ける。


[…君は何なんだ?
こんな事が出来る種族を『組織』は把握していない…
まさか地球で進化したのか?]

[僕は――]


ユウトはニッコリ笑い


[絶賛恋愛中の一般男子高校生です]


とのたまう。


[[[…は?]]]

「「‥はッ!!」」


ナイトとフィカスがカッと頬を染めて――


≪バチバチバチッ!≫

ナイトの体が赤い稲妻を帯びる!?


≪バリバリバリッ!≫

フィカスが青銀の稲妻が走る雲のようなものを纏いだす!?



二人は気付いた!

今までユウトに対してどこか遠慮があったのは、自分が罪人の血を引いているという負い目があったから。

それが無くなった今!

ユウトに真っ直ぐ行ける!

だが、隣に最大のライバルがいる!


ナイトはフィカスを、

フィカスはナイトを、


睨みつけ――ッ!!


ぎゅっ


「「‥ッッ!?」」


ユウトが二人の手を握り、微笑って言う。


「家に帰ろう!」



『家に帰る』

その暖かく柔らかな響きにナイトは赤い稲妻を、フィカスは青銀の稲妻が走る雲のようなものを鎮め、

思う。



((誤魔化された?))
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