96 / 104
96 文化祭ライブ8
しおりを挟む
「ナイト様…準備は整いました…存分に…」
「ああ」
全身を攻撃し続ける逃げ場のない痛みに耐えながらフィカスがナイトを促す。
ナイトは頷き、生徒達に視線を移す。
『覚醒』が始まると、体の中でエネルギーが膨張しながら暴れる。
膨張はどんどん大きくなり、体が耐えきれなくなった時爆発する。
爆発に至る前に内側から暴れ噴出しているエネルギーを生徒達に飛ばす。
僅かな量で生徒達は動けなくなるだろう。
数名――或いは全員が死んでしまうかもしれないが微調整する余裕はない。
それが済めば後はフィカスがナイトに近付くだけ。
ある程度の距離まで来たら、互いのエネルギーの中和が始まり、それが終わった時に二人は絶命するのだ――
ソロリ‥ソロリ‥
『覚醒』中の苦しみで意識を張り巡らせることが出来なくなっているナイトとフィカスを避ける様に舞台端から回り込んで来る生徒が数名いる。
生徒達は光を放出し続ける二人の異様な姿に恐れをなすものの、それでも二人の後ろにいる美しい少年を諦めきれない。
躍動する白く美しいあの足――
白いロングドレスを引き裂き剥ぎ取ってあの足を――
欲望は男達の恐怖を悠々と凌駕する。
男たちはとうとう二人に気付かれないまま、息を殺してユウトの背後を取り囲み、一斉にユウトに飛び掛か‥
【止まれ】
!!?
今、
もう今!
まさに今ユウトに抱きつこうとしていた男達の動きがピタリと止まる?
それだけではない。
他の生徒達も同様に動きを止めた?
「「‥!?」」
ナイトとフィカスも驚きユウトを見――
「「ッッ!?」」
ユウトの瞳
いつもは柔らかなアンバーの瞳が!
ゾッとするほど美しい金色に光っている――!!
【みんな客席に――
元の場所に戻って】
決して怒鳴っているわけではなく、普通に言っている。
だが、その声は直接全員の脳に響き――本人の意思よりも優先される。
生徒達はみな当たり前の様に整然と元の場所に戻り、大人しく座る。
これがユウトの本当の声である。
幼い頃、両親と共に犯罪に巻き込まれそうになった時。
この声でお願いすれば、どんな悪人も犯罪組織も悪事を諦め逃がしてくれた。
人の脳に直接アクセスし、支配可能な声――
この声はいつも出せるわけではなかった。
幼い時は、ピンチの時『ちゃんとお願いする時に出る声』だった。
年を取るごとに分かったのは、自分の意思で出せる時もあれば、相当なピンチにならないと出ない時もあり――かと思えば、その声を出す気などないのに、自然とその声になる時もあり、非情に不安定だという事。
出そうと思っても出ない時の方が多いからか、自然と意識から外れた声だったが。
あの時、全てが分かった。
ナイトとフィカスに
「「‥愛してる‥」」
と言われた瞬間。
ユウトの意識は不思議な場所へ飛んだ。
その不思議な場所で、ユウトは沢山のものを見た。
大昔、本当は何が起こったのか――
自分が存在する意義――
時間にすれば一瞬だったろう。
意識が戻った時、飛ぶ前と同じ状態だったから。
(不安定でたまにしか出ない声は僕の本当の声だと分かった。
何故本当の声が普通に出せていなかったかも。
――これからは、ちゃんと自分の声で生きられる。
二人がいるから。
愛を得たから――)
驚いた顔でユウトを見ているナイトとフィカス。
ユウトは金の瞳で二人を包む様に見つめる。
【少し時間が掛かるけど、二人の事は僕が守る!】
「「‥!!」」
守る?
不可能だ!
『覚醒』は止められないのだから。
だが。
さっきまでは震え涙を流していたユウト。
今は落ち着き自信に溢れている‥‥
不思議なことにユウトのあの声を聞いた瞬間から痛みが和らいでいる様な?
『覚醒』の進行も止まっている?
ナイトとフィカスはいくつもの不思議を抱えながら。
更に不思議で神秘的な金の瞳に吸い込まれる様な感覚の中、
『もっとその声が聞きたい』という願いが叶う。
【大丈夫――
僕に任せて】
「ああ」
全身を攻撃し続ける逃げ場のない痛みに耐えながらフィカスがナイトを促す。
ナイトは頷き、生徒達に視線を移す。
『覚醒』が始まると、体の中でエネルギーが膨張しながら暴れる。
膨張はどんどん大きくなり、体が耐えきれなくなった時爆発する。
爆発に至る前に内側から暴れ噴出しているエネルギーを生徒達に飛ばす。
僅かな量で生徒達は動けなくなるだろう。
数名――或いは全員が死んでしまうかもしれないが微調整する余裕はない。
それが済めば後はフィカスがナイトに近付くだけ。
ある程度の距離まで来たら、互いのエネルギーの中和が始まり、それが終わった時に二人は絶命するのだ――
ソロリ‥ソロリ‥
『覚醒』中の苦しみで意識を張り巡らせることが出来なくなっているナイトとフィカスを避ける様に舞台端から回り込んで来る生徒が数名いる。
生徒達は光を放出し続ける二人の異様な姿に恐れをなすものの、それでも二人の後ろにいる美しい少年を諦めきれない。
躍動する白く美しいあの足――
白いロングドレスを引き裂き剥ぎ取ってあの足を――
欲望は男達の恐怖を悠々と凌駕する。
男たちはとうとう二人に気付かれないまま、息を殺してユウトの背後を取り囲み、一斉にユウトに飛び掛か‥
【止まれ】
!!?
今、
もう今!
まさに今ユウトに抱きつこうとしていた男達の動きがピタリと止まる?
それだけではない。
他の生徒達も同様に動きを止めた?
「「‥!?」」
ナイトとフィカスも驚きユウトを見――
「「ッッ!?」」
ユウトの瞳
いつもは柔らかなアンバーの瞳が!
ゾッとするほど美しい金色に光っている――!!
【みんな客席に――
元の場所に戻って】
決して怒鳴っているわけではなく、普通に言っている。
だが、その声は直接全員の脳に響き――本人の意思よりも優先される。
生徒達はみな当たり前の様に整然と元の場所に戻り、大人しく座る。
これがユウトの本当の声である。
幼い頃、両親と共に犯罪に巻き込まれそうになった時。
この声でお願いすれば、どんな悪人も犯罪組織も悪事を諦め逃がしてくれた。
人の脳に直接アクセスし、支配可能な声――
この声はいつも出せるわけではなかった。
幼い時は、ピンチの時『ちゃんとお願いする時に出る声』だった。
年を取るごとに分かったのは、自分の意思で出せる時もあれば、相当なピンチにならないと出ない時もあり――かと思えば、その声を出す気などないのに、自然とその声になる時もあり、非情に不安定だという事。
出そうと思っても出ない時の方が多いからか、自然と意識から外れた声だったが。
あの時、全てが分かった。
ナイトとフィカスに
「「‥愛してる‥」」
と言われた瞬間。
ユウトの意識は不思議な場所へ飛んだ。
その不思議な場所で、ユウトは沢山のものを見た。
大昔、本当は何が起こったのか――
自分が存在する意義――
時間にすれば一瞬だったろう。
意識が戻った時、飛ぶ前と同じ状態だったから。
(不安定でたまにしか出ない声は僕の本当の声だと分かった。
何故本当の声が普通に出せていなかったかも。
――これからは、ちゃんと自分の声で生きられる。
二人がいるから。
愛を得たから――)
驚いた顔でユウトを見ているナイトとフィカス。
ユウトは金の瞳で二人を包む様に見つめる。
【少し時間が掛かるけど、二人の事は僕が守る!】
「「‥!!」」
守る?
不可能だ!
『覚醒』は止められないのだから。
だが。
さっきまでは震え涙を流していたユウト。
今は落ち着き自信に溢れている‥‥
不思議なことにユウトのあの声を聞いた瞬間から痛みが和らいでいる様な?
『覚醒』の進行も止まっている?
ナイトとフィカスはいくつもの不思議を抱えながら。
更に不思議で神秘的な金の瞳に吸い込まれる様な感覚の中、
『もっとその声が聞きたい』という願いが叶う。
【大丈夫――
僕に任せて】
0
お気に入りに追加
12
あなたにおすすめの小説
「どスケベ変態おじさま(40↑)専用ボーイ♂ハメハメ店『あましじょ♡』へようこそっ♪」~あやくん(22)とたつみパパ(56)の場合~
そらも
BL
四十歳以上の性欲満タンどスケベ変態おじさまであれば誰でも入店でき、おじさま好きの男の子とえっちなことがた~っぷりとできちゃうお店『あましじょ♡』にて日々行われている、お客とボーイのイチャラブハメハメ物語♡
一度は書いてみたかったえっちなお店モノ♪ と言いつつ、お客とボーイという関係ですがぶっちゃけめっちゃ両想い状態な二人だったりもしますです笑♡
ただ、いつにも増して攻めさんが制御の効かない受けくん大好きど変態発情お猿さんで気持ち悪くなっている他、潮吹きプレイや受けくんがビッチではないけど非処女設定とかにもなっておりますので、読む際にはどうぞご注意を!
※ R-18エロもので、♡(ハート)喘ぎ満載です。
※ 素敵な表紙は、pixiv小説用フリー素材にて、『やまなし』様からお借りしました。ありがとうございます!
真冬の痛悔
白鳩 唯斗
BL
闇を抱えた王道学園の生徒会長、東雲真冬は、完璧王子と呼ばれ、真面目に日々を送っていた。
ある日、王道転校生が訪れ、真冬の生活は狂っていく。
主人公嫌われでも無ければ、生徒会に裏切られる様な話でもありません。
むしろその逆と言いますか·····逆王道?的な感じです。
真面目系委員長の同室は王道転校生⁉~王道受けの横で適度に巻き込まれて行きます~
シキ
BL
全寮制学園モノBL。
倉科誠は真面目で平凡な目立たない学級委員長だった。そう、だった。季節外れの王道転入生が来るまでは……。
倉科の通う私立藤咲学園は山奥に位置する全寮制男子高校だ。外界と隔絶されたそこでは美形生徒が信奉され、親衛隊が作られ、生徒会には俺様会長やクール系副会長が在籍する王道学園と呼ぶに相応しいであろう場所。そんな学園に一人の転入生がやってくる。破天荒な美少年の彼を中心に巻き起こる騒動に同室・同クラスな委員長も巻き込まれていき……?
真面目で平凡()な学級委員長が王道転入生くんに巻き込まれ何だかんだ総受けする青春系ラブストーリー。
一部固定CP(副会長×王道転入生)もいつつ、基本は主人公総受けです。
こちらは個人サイトで数年前に連載していて、途中だったお話です。
今度こそ完走させてあげたいと思いたってこちらで加筆修正して再連載させていただいています。
当時の企画で書いた番外編なども掲載させていただきますが、生暖かく見守ってください。
好きな人が「ふつーに可愛い子がタイプ」と言っていたので、女装して迫ったら思いのほか愛されてしまった
碓氷唯
BL
白月陽葵(しろつきひなた)は、オタクとからかわれ中学高校といじめられていたが、高校の頃に具合が悪かった自分を介抱してくれた壱城悠星(いちしろゆうせい)に片想いしていた。
壱城は高校では一番の不良で白月にとっては一番近づきがたかったタイプだが、今まで関わってきた人間の中で一番優しく綺麗な心を持っていることがわかり、恋をしてからは壱城のことばかり考えてしまう。
白月はそんな壱城の好きなタイプを高校の卒業前に盗み聞きする。
壱城の好きなタイプは「ふつーに可愛い子」で、白月は「ふつーに可愛い子」になるために、自分の小柄で女顔な容姿を生かして、女装し壱城をナンパする。
男の白月には怒ってばかりだった壱城だが、女性としての白月には優しく対応してくれることに、喜びを感じ始める。
だが、女という『偽物』の自分を愛してくる壱城に、だんだん白月は辛くなっていき……。
ノンケ(?)攻め×女装健気受け。
三万文字程度で終わる短編です。
勇者の股間触ったらエライことになった
ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
勇者さんが町にやってきた。
町の人は道の両脇で壁を作って、通り過ぎる勇者さんに手を振っていた。
オレは何となく勇者さんの股間を触ってみたんだけど、なんかヤバイことになっちゃったみたい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる