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76 嵐の夜に
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ザーーーーーーッ…
「ハァ、ハァ、ハァ」
ザーーーーーーッ…
駅前マンションの前で立ち尽くすユウト。
雨はいよいよ本降りで。
カフェを出てから全速力でここまで走って来た。
何も考えてなかった。
で、今、はたと。
(昔助けてもらった事を思い出したからって――何?
だからって何も変わらないのに…)
どうする積りだった?
昔のお礼を言う?
出て行く宣言して出て行ったばかりで?
意味不明で二人が困るだけ…
何やってんだ、僕…
バカ。
昔の事思い出して。
一人で興奮して。
そんな気分を押し付けられる方はたまったもんじゃないよね…
雨が凄くてナイトの部屋を見上げる事も出来ないユウト。
容赦なく叩きつけて来る雨に不意に惨めな気持ちになる。
自分が、
あまりにも無意味な存在に感じて。
居たたまれなくなる。
俯いて
僅かに口角を上げた後
キュッと口を引き結ぶ
会えない
来るべきじゃなかった
――頑張って電車に乗ってみよう…
そう決意して振り返…
ザーーーーーーッ…
「‥ッッ!?」
ザーーーーーーッ…
「ハァ、ハァ、ハァ」
ザーーーーーーッ…
目を見開くユウト。
ほんの3メートルほど先に立つ人物。
その光景が信じられない。
何で?
何でここに居るの!?
びしょ濡れで
息を切らして
何でッ!??
ゴォォォォッ
「‥ッ!?」
突然の突風!?
雨は凄いけど風は無かったのに――
「ハァ、ハッ‥」
≪ザッザッザッ‥‥≫
「‥え‥あ‥え‥?」
来る?
無言で向かって来る?
な‥どう‥
美しい深紫の瞳に
見つめられたまま
射貫かれたまま
動けない
――息も出来ないッ
ユウトは戸惑‥
「――ッッッ!!!」
え??
抱きしめ…られてる?
風が吹き荒れる
ゴォォォォォォォ…
ザーーーーーーッ…
まるでスコール
ゴォォォォォォォ…
ザーーーーーーッ…
まるで嵐
ゴォォォォォォォ…
ザーーーーーーッ…
速い、
駆ける様な鼓動――
「‥ナ、ナイ‥」
「行かないでくれ!
どこにも――」
「――――――!!」
「行かないで――
側に居てくれ」
ゴォォォォォォォ…
ザーーーーーーッ…
ゴォォォォォォォ…
ザーーーーーーッ…
ユウトを強く抱きしめるナイト。
身動き出来ないほど
苦しいほど
ナイト――
震えてるの?
ゴォォォォォォォ…
ザーーーーーーッ…
ゴォォォォォォォ…
ザーーーーーーッ…
ユウトも震える手をナイトの背に回して。
ギュッと抱きしめる。
「‥ユウ‥」
「ウン…居る…
ナイトの側に居るよ」
ユウトはそう言うのが精一杯で――
ゴォォォォォォォ…
ザーーーーーーッ…
ゴォォォォォォォ…
ザーーーーーーッ…
ゴォォォォォォォ…
ザーーーーーーッ…
カッッ‥!
稲妻が走る
「――――ッッ!」
暗い暴風雨の夜
稲妻の光に照らされくっきりと浮かび上がる二人の姿
マンションの前で強く抱き合う二人の姿を瞳に映して
碧眼が淡く滲む――
丁度マンションから出て気たフィカス。
事故現場から歩いて戻りナイトの部屋を訪ねた。
ナイトに協力を仰いでユウト捜しを仕切り直そうと考えていた。
ナイトはユウトの居場所を感知するのが得意だから――
だが居なかった為、また外にユウトを捜しに出るところだった。
フィカスも全身ビショビショのままだ。
(…私が何をする必要もなく解決した様ですね…)
無理に口角を上げても切なさに翳る瞳。
ユウトを捜し出して
抱きしめて――
もう離さないつもりだった
心を晒すつもりで――
だが、それは今、眼前でナイトがしている。
『とんだピエロだ』って、こういう時言うんだな…
『心が折れる』って…
一人立ち尽くすフィカスを暴風雨が容赦なく叩きつける。
(――これでいい。
もとより私は影の存在
『もしも』の時の為の安全装置に過ぎない。
ナイト様はきっともう大丈夫だろう。
私は――もう要らない――誰にとっても…
…ユウトにとっても)
切なげな目を細めて
今度は本当に微笑む
薄く――
消えそうに儚く――
そして踵を返――
す‥前に‥?
アンバーの瞳が碧眼を捉える。
ユウトが振り向いてフィカスを見たのだ。
刹那、アンバーが一瞬、金色に光る。
「‥‥‥ッッ!」
半歩後ろによろめくフィカス。
「…フィカスさん?
大丈夫!?」
「え‥フィカス?
――何で濡れてる?
――車は?」
「――――――」
「フィカスさん?」
「フィカス?」
(―――は。
なんて事だ…
君が振り向いたから)
≪ザッザッザッ‥‥≫
フィカスは二人に向かって歩いて行く――
「ハァ、ハァ、ハァ」
ザーーーーーーッ…
駅前マンションの前で立ち尽くすユウト。
雨はいよいよ本降りで。
カフェを出てから全速力でここまで走って来た。
何も考えてなかった。
で、今、はたと。
(昔助けてもらった事を思い出したからって――何?
だからって何も変わらないのに…)
どうする積りだった?
昔のお礼を言う?
出て行く宣言して出て行ったばかりで?
意味不明で二人が困るだけ…
何やってんだ、僕…
バカ。
昔の事思い出して。
一人で興奮して。
そんな気分を押し付けられる方はたまったもんじゃないよね…
雨が凄くてナイトの部屋を見上げる事も出来ないユウト。
容赦なく叩きつけて来る雨に不意に惨めな気持ちになる。
自分が、
あまりにも無意味な存在に感じて。
居たたまれなくなる。
俯いて
僅かに口角を上げた後
キュッと口を引き結ぶ
会えない
来るべきじゃなかった
――頑張って電車に乗ってみよう…
そう決意して振り返…
ザーーーーーーッ…
「‥ッッ!?」
ザーーーーーーッ…
「ハァ、ハァ、ハァ」
ザーーーーーーッ…
目を見開くユウト。
ほんの3メートルほど先に立つ人物。
その光景が信じられない。
何で?
何でここに居るの!?
びしょ濡れで
息を切らして
何でッ!??
ゴォォォォッ
「‥ッ!?」
突然の突風!?
雨は凄いけど風は無かったのに――
「ハァ、ハッ‥」
≪ザッザッザッ‥‥≫
「‥え‥あ‥え‥?」
来る?
無言で向かって来る?
な‥どう‥
美しい深紫の瞳に
見つめられたまま
射貫かれたまま
動けない
――息も出来ないッ
ユウトは戸惑‥
「――ッッッ!!!」
え??
抱きしめ…られてる?
風が吹き荒れる
ゴォォォォォォォ…
ザーーーーーーッ…
まるでスコール
ゴォォォォォォォ…
ザーーーーーーッ…
まるで嵐
ゴォォォォォォォ…
ザーーーーーーッ…
速い、
駆ける様な鼓動――
「‥ナ、ナイ‥」
「行かないでくれ!
どこにも――」
「――――――!!」
「行かないで――
側に居てくれ」
ゴォォォォォォォ…
ザーーーーーーッ…
ゴォォォォォォォ…
ザーーーーーーッ…
ユウトを強く抱きしめるナイト。
身動き出来ないほど
苦しいほど
ナイト――
震えてるの?
ゴォォォォォォォ…
ザーーーーーーッ…
ゴォォォォォォォ…
ザーーーーーーッ…
ユウトも震える手をナイトの背に回して。
ギュッと抱きしめる。
「‥ユウ‥」
「ウン…居る…
ナイトの側に居るよ」
ユウトはそう言うのが精一杯で――
ゴォォォォォォォ…
ザーーーーーーッ…
ゴォォォォォォォ…
ザーーーーーーッ…
ゴォォォォォォォ…
ザーーーーーーッ…
カッッ‥!
稲妻が走る
「――――ッッ!」
暗い暴風雨の夜
稲妻の光に照らされくっきりと浮かび上がる二人の姿
マンションの前で強く抱き合う二人の姿を瞳に映して
碧眼が淡く滲む――
丁度マンションから出て気たフィカス。
事故現場から歩いて戻りナイトの部屋を訪ねた。
ナイトに協力を仰いでユウト捜しを仕切り直そうと考えていた。
ナイトはユウトの居場所を感知するのが得意だから――
だが居なかった為、また外にユウトを捜しに出るところだった。
フィカスも全身ビショビショのままだ。
(…私が何をする必要もなく解決した様ですね…)
無理に口角を上げても切なさに翳る瞳。
ユウトを捜し出して
抱きしめて――
もう離さないつもりだった
心を晒すつもりで――
だが、それは今、眼前でナイトがしている。
『とんだピエロだ』って、こういう時言うんだな…
『心が折れる』って…
一人立ち尽くすフィカスを暴風雨が容赦なく叩きつける。
(――これでいい。
もとより私は影の存在
『もしも』の時の為の安全装置に過ぎない。
ナイト様はきっともう大丈夫だろう。
私は――もう要らない――誰にとっても…
…ユウトにとっても)
切なげな目を細めて
今度は本当に微笑む
薄く――
消えそうに儚く――
そして踵を返――
す‥前に‥?
アンバーの瞳が碧眼を捉える。
ユウトが振り向いてフィカスを見たのだ。
刹那、アンバーが一瞬、金色に光る。
「‥‥‥ッッ!」
半歩後ろによろめくフィカス。
「…フィカスさん?
大丈夫!?」
「え‥フィカス?
――何で濡れてる?
――車は?」
「――――――」
「フィカスさん?」
「フィカス?」
(―――は。
なんて事だ…
君が振り向いたから)
≪ザッザッザッ‥‥≫
フィカスは二人に向かって歩いて行く――
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