51 / 104
51 何か忘れてる
しおりを挟む
「ナイト様、お珍しい
手加減無しで殴ったのですか?」
「手加減出来そうもなかったから足しか狙ってない。
足はどうだか知らないが生命に関わる事は無いはずだ。
死因は何だ?」
『死亡』という実は一番身近でありながら非日常のワードに驚いて声も出ないユウトとは違い、淡々としたナイトとフィカス。
桧木も普通に答える。
「殺されたんだよ。
サウナを経営していた兄に。
雑木林の兄はサウナで違法な薬物を売ったり、少年に売春させたり、乱交パーティー中に死者を出したり、やりたい放題だったんだが今まで逮捕されなかった。
親と金の力でね。
でも今回、弟が橘家を怒らせたことで、親の力も金の力も通用しなくなった。
逮捕されるし、キチンと罪に問われるし、自分の王国であるサウナは終わり。
逮捕直前に逆上した兄が病院で寝ていた弟をサバイバルナイフで滅多刺しして殺したんだ――仲が良いって聞いてたけど、ね」
「橘家――理事長を怒らせたって事?」
今度はユウトが普通に訊く。
家族が家族を殺す事に関しては別に驚かない。
「そうだよ。
僕の命に背くという事は、橘家に背くという事だからね。
雑木林の家は橘家の遠戚でね。
全く――雑木林は素直過ぎたんだろう。
家族の夕食の席限定で披露される酔っ払った父親の演説――橘家が何だ、あんな若造に何が出来る、優秀な自分達が居るからこそ橘グループは勝ち組なんだ、自分には政治家とも太いパイプがある、あんな若造いつだって取って代われる、どうとでも出来るんだ――的な見栄だらけの演説をそのまま信じ込んだんだろう。
尊敬する父親が嘘をつくはず無いと。
それを口に出すほどまでには愚かではないが、心に刷り込まれているから態度と行動に出てしまったんだろう。
副部長――彼も橘家の遠戚なんだけど、彼が聞いている。
僕を『生意気』とこき下ろし、叔父上を『若造理事長』と侮った。
たったそれだけでと思うかもしれないが、上下関係はハッキリさせておかないとね。
と言っても、別に叔父上が何かしたわけではない。
違法行為に対して速やかに正しい対処をする様、ある人物に話をしただけだ。
――1限目が終わったんだな、生徒たちが出て来た。
とにかく事務棟に入ろう。
話の続きは特別クラスでしよう」
「桧木は自分のクラスへ戻れ。
話はもういい」
「そうですね。
橘家の騒動は我々には関係ありませんからね」
「ンなッ!!
は、話はまだあるッ!
アイドル部の活動に関して――」
「大丈夫だよ。
僕をアイドル扱いして来る生徒達に笑って手を振ればいいんでしょ。
それぐらいならガンバリマス。
僕たちは学校内を見て回りたいから失礼します」
話が長くなりがちな桧木に辟易している美貌の三人。
『まずはやっぱり学食が見たい』というユウトのリクエストで、フィカスの案内で学食に向かい始める。
「‥ハッ!‥いや待っ!‥ユウト君、君、大切な事を忘れてるよね!?」
…はッ!…そう言えば僕、何か忘れてる…
実はユウトには何か重要な事を忘れている自覚がある。
心のどこかにずっと引っ掛かっているのだが、脳が思い出すのを拒絶している。
何だろう?…何だっけ?…あ、ダメ、脳が強制停止する――
フラリとよろめくユウトを左からナイトが、右からフィカスが支える。
その様子にカッとした桧木が声を荒げる。
「ッそこの二人、アイドルに手を触れないでくれッ!
離れて!‥離れろ!!
クソッ!、無視か!?
ユウト君、いや、ゆーとりん!
思い出して欲しい!
入学式の朝、僕は君の前に進み出て手作りのくす玉を割った!
くす玉の中の幕に書かれた内容を見て君は白目を剥いていた!」
「僕が‥
白目を‥」
(そうだ‥あり得ない事が書かれていて‥
ア、アレは‥‥
アレは確かッ‥!)
『30万円達成、文化祭ライブ決定!』
No~~~~~~ッ!!
手加減無しで殴ったのですか?」
「手加減出来そうもなかったから足しか狙ってない。
足はどうだか知らないが生命に関わる事は無いはずだ。
死因は何だ?」
『死亡』という実は一番身近でありながら非日常のワードに驚いて声も出ないユウトとは違い、淡々としたナイトとフィカス。
桧木も普通に答える。
「殺されたんだよ。
サウナを経営していた兄に。
雑木林の兄はサウナで違法な薬物を売ったり、少年に売春させたり、乱交パーティー中に死者を出したり、やりたい放題だったんだが今まで逮捕されなかった。
親と金の力でね。
でも今回、弟が橘家を怒らせたことで、親の力も金の力も通用しなくなった。
逮捕されるし、キチンと罪に問われるし、自分の王国であるサウナは終わり。
逮捕直前に逆上した兄が病院で寝ていた弟をサバイバルナイフで滅多刺しして殺したんだ――仲が良いって聞いてたけど、ね」
「橘家――理事長を怒らせたって事?」
今度はユウトが普通に訊く。
家族が家族を殺す事に関しては別に驚かない。
「そうだよ。
僕の命に背くという事は、橘家に背くという事だからね。
雑木林の家は橘家の遠戚でね。
全く――雑木林は素直過ぎたんだろう。
家族の夕食の席限定で披露される酔っ払った父親の演説――橘家が何だ、あんな若造に何が出来る、優秀な自分達が居るからこそ橘グループは勝ち組なんだ、自分には政治家とも太いパイプがある、あんな若造いつだって取って代われる、どうとでも出来るんだ――的な見栄だらけの演説をそのまま信じ込んだんだろう。
尊敬する父親が嘘をつくはず無いと。
それを口に出すほどまでには愚かではないが、心に刷り込まれているから態度と行動に出てしまったんだろう。
副部長――彼も橘家の遠戚なんだけど、彼が聞いている。
僕を『生意気』とこき下ろし、叔父上を『若造理事長』と侮った。
たったそれだけでと思うかもしれないが、上下関係はハッキリさせておかないとね。
と言っても、別に叔父上が何かしたわけではない。
違法行為に対して速やかに正しい対処をする様、ある人物に話をしただけだ。
――1限目が終わったんだな、生徒たちが出て来た。
とにかく事務棟に入ろう。
話の続きは特別クラスでしよう」
「桧木は自分のクラスへ戻れ。
話はもういい」
「そうですね。
橘家の騒動は我々には関係ありませんからね」
「ンなッ!!
は、話はまだあるッ!
アイドル部の活動に関して――」
「大丈夫だよ。
僕をアイドル扱いして来る生徒達に笑って手を振ればいいんでしょ。
それぐらいならガンバリマス。
僕たちは学校内を見て回りたいから失礼します」
話が長くなりがちな桧木に辟易している美貌の三人。
『まずはやっぱり学食が見たい』というユウトのリクエストで、フィカスの案内で学食に向かい始める。
「‥ハッ!‥いや待っ!‥ユウト君、君、大切な事を忘れてるよね!?」
…はッ!…そう言えば僕、何か忘れてる…
実はユウトには何か重要な事を忘れている自覚がある。
心のどこかにずっと引っ掛かっているのだが、脳が思い出すのを拒絶している。
何だろう?…何だっけ?…あ、ダメ、脳が強制停止する――
フラリとよろめくユウトを左からナイトが、右からフィカスが支える。
その様子にカッとした桧木が声を荒げる。
「ッそこの二人、アイドルに手を触れないでくれッ!
離れて!‥離れろ!!
クソッ!、無視か!?
ユウト君、いや、ゆーとりん!
思い出して欲しい!
入学式の朝、僕は君の前に進み出て手作りのくす玉を割った!
くす玉の中の幕に書かれた内容を見て君は白目を剥いていた!」
「僕が‥
白目を‥」
(そうだ‥あり得ない事が書かれていて‥
ア、アレは‥‥
アレは確かッ‥!)
『30万円達成、文化祭ライブ決定!』
No~~~~~~ッ!!
0
お気に入りに追加
12
あなたにおすすめの小説
真冬の痛悔
白鳩 唯斗
BL
闇を抱えた王道学園の生徒会長、東雲真冬は、完璧王子と呼ばれ、真面目に日々を送っていた。
ある日、王道転校生が訪れ、真冬の生活は狂っていく。
主人公嫌われでも無ければ、生徒会に裏切られる様な話でもありません。
むしろその逆と言いますか·····逆王道?的な感じです。
ハイスペックストーカーに追われています
たかつきよしき
BL
祐樹は美少女顔負けの美貌で、朝の通勤ラッシュアワーを、女性専用車両に乗ることで回避していた。しかし、そんなことをしたバチなのか、ハイスペック男子の昌磨に一目惚れされて求愛をうける。男に告白されるなんて、冗談じゃねぇ!!と思ったが、この昌磨という男なかなかのハイスペック。利用できる!と、判断して、近づいたのが失敗の始まり。とある切っ掛けで、男だとバラしても昌磨の愛は諦めることを知らず、ハイスペックぶりをフルに活用して迫ってくる!!
と言うタイトル通りの内容。前半は笑ってもらえたらなぁと言う気持ちで、後半はシリアスにBLらしく萌えると感じて頂けるように書きました。
完結しました。
転生貧乏貴族は王子様のお気に入り!実はフリだったってわかったのでもう放してください!
音無野ウサギ
BL
ある日僕は前世を思い出した。下級貴族とはいえ王子様のお気に入りとして毎日楽しく過ごしてたのに。前世の記憶が僕のことを駄目だしする。わがまま駄目貴族だなんて気づきたくなかった。王子様が優しくしてくれてたのも実は裏があったなんて気づきたくなかった。品行方正になるぞって思ったのに!
え?王子様なんでそんなに優しくしてくるんですか?ちょっとパーソナルスペース!!
調子に乗ってた貧乏貴族の主人公が慎ましくても確実な幸せを手に入れようとジタバタするお話です。
男だけど女性Vtuberを演じていたら現実で、メス堕ちしてしまったお話
ボッチなお地蔵さん
BL
中村るいは、今勢いがあるVTuber事務所が2期生を募集しているというツイートを見てすぐに応募をする。無事、合格して気分が上がっている最中に送られてきた自分が使うアバターのイラストを見ると女性のアバターだった。自分は男なのに…
結局、その女性アバターでVTuberを始めるのだが、女性VTuberを演じていたら現実でも影響が出始めて…!?
風紀“副”委員長はギリギリモブです
柚実
BL
名家の子息ばかりが集まる全寮制の男子校、鳳凰学園。
俺、佐倉伊織はその学園で風紀“副”委員長をしている。
そう、“副”だ。あくまでも“副”。
だから、ここが王道学園だろうがなんだろうが俺はモブでしかない────はずなのに!
BL王道学園に入ってしまった男子高校生がモブであろうとしているのに、主要キャラ達から逃げられない話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる