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第四章

19 古代魔術の恐怖 2

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王弟フォマルハウトの母。


彼女は古代魔術を使い、フォマルハウトの父親に関する疑惑から逃れた。

古代魔術を掛けた相手は当時国王であった夫、今の先王陛下。

強い魔力を持つ彼に掛けた術は時間と共に薄まり、その都度掛け直したのだろう。

定期的に古代魔術‥‥しかも大量の魔力を必要とする傀儡術をかけ続けたのだ。




「‥‥妃の死は今でも説明がつかぬ。
あれは、たった一夜で骨と皮だけの干からびた死体となっていたのだ。
健康でふくよかだった彼女が‥‥最初は信じられなかったが‥‥
何か動物の屍骸だと思われたそれは、よくよく見れば確かに彼女だった‥‥
前の晩も、いつも通り就寝したと侍女は言っていた‥‥
いまだに謎となっている彼女の死には、古代魔術が関わっていたのか!?」



蒼ざめた先王を始め、全員が固唾を飲んでアルを見詰める。

何故この中で一番年若い彼が古代魔術について詳しいのか疑問に思う者はいない。

一目見た瞬間から、彼が何かを超越した特別な存在であると誰もが感じている。



「古代魔術は、まだ人間が魔力を持たなかった時代に魔物によって作られた‥‥
‥‥罠だよ」



罠ッ!?

その不穏な響きに部屋の空気が凍り付く。



「魔力無しが強力な魔術を使えるのは、魔力の提供者がいるから。
術式の中に、その提供者が示されている」


「魔力の提供者というのは、魔物という事か‥‥
つまり‥‥つま‥‥り‥‥?」



現王が言葉に詰まる。

『つまり』の先を想像できないのは、想像するのを頭が拒否しているからだろう。



「そう‥‥
古代魔術を使うという事はね、術式に示された魔物と契約するという事なんだ。
契約により魔物は魔力を提供する。
それにより人間は本来使えないはずの魔術を発動できる。
‥‥だけど当然、対価を支払わなければならない」


「‥‥ッ、対価‥‥それは‥‥
やはり‥‥やは‥‥り‥‥ッ」



先王が言葉に詰まる。

妃‥‥フォマルハウトの母の遺体を見た彼には、もう確信するしかなかった。



「魂だよ」



!!!



「人間の魂は魔物にとってとても魅力らしい。
ただ‥‥魔物は気まぐれなのかな‥‥
魂の取り立ての基準はすごく曖昧なんだ。
魂を取られずに済む人間もいれば、一度使った直後に取られる事もある。
いずれにしろ古代魔術は強力‥‥大量に魔力を使うという事は間違いない。
一度でも使ってしまえば、魂を取られる覚悟はしなければならないんだよ‥‥」



古代魔術は、魔物が人間の魂を奪う為の罠‥‥

一度でも使えばオワリ‥‥



「ッぜったい、使っちゃダメじゃないですかァッ!」



先王の側近の一人がそう叫んだ時、ドアの外がまた騒がしくなる。

恐ろしい予感‥‥

まさか‥‥



「北宮の王妃が対価を支払った様だね‥‥」
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