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第四章

15 不敬はチャラで

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五年ぶりに開かれている巨大船での夜会。

先程起こった事件によりダレ気味だった空気は消え失せた。

人々は情報を求めざわついている。


彼等の関心事は二つ。

見目麗しく清浄かつ華麗なオーラを放ちながら登場した三人。

嬉々として醜悪極まりない自白を続けた北宮の王妃と仲間たちの三人。


美しい三人はエリート兄弟と共に『staff only』の扉の向こうへ消えた。

醜悪な三人は宮廷騎士達に会場の外へ連行された。


今ここにいない対照的な三人を話題に夜会会場は異様な盛り上がりを見せる。



一方、『staff only』の扉の奥の奥にある王族専用の控室。

部屋には現王陛下、先王陛下、それぞれの側近合わせて三名、近衛騎士六名、事件の報告に来ている宮廷騎士二名の、13名がいた。


なので、ポカーン×13、である。

明らかに重罪人である北宮の王妃を不自然に庇う現・先王陛下。
そんな主に疑惑を感じざるを得ない臣下達の重苦しい空気。


そんな室内に突然現れたアルとプロキオン卿、エリダヌス卿、彼等を案内した先王の側近、ナゼか付いて来てしまったエリート文官。


本来、この控室に入るには、到着の知らせ、危険物不所持確認、入室の許可待ちなど、入室する際の細かい手続きを踏まなければならない。

それをアルの笑顔一つで省略突破した為、彼等は『突如降臨した』という印象を強く与えながら現れた。


ドアを守っている近衛騎士二名は何故開けてしまったのか『???』状態である。



「‥フゥン‥なるほどね。
お二方はどうしても北宮の王妃を裁けないんだね‥‥」



アルの凛とした声は天界からの声の様に響き、皆が我に返るのを遅らせる。


最初に我に返ったのは先王陛下。

可愛い孫二人はまだ許せる。

だが、その可愛い孫を付き人の様に従えて王家の間に侵入して来た不届き者‥‥

‥はッ!!

う、美しい‥‥ッ!

い、いや、今はそうじゃない!

コホン、不届き者を、前例のない不敬を、許すわけにはいかぬ!



「‥‥デネブ、シリウス、よく来た。
‥‥そなたは『アル殿』だな?
人を驚かせるのが好みと見える。
が、相手によっては命を失う事になる事も‥‥」

「古代魔術にグルグル巻きにされた身で偉そうにされてもね‥‥
まずは、解くよ。
××△▼▽◎×‥‥‥‥」

「なッ!? 古代魔術!?
何を言って‥ハッ‥アァッ!?‥‥」

「父上、これはッ‥アゥゥッ!?‥‥」



パ ・ シ ャ ――――― ン ン ン‥‥‥‥



「「‥ファッ‥」」



聖なる音と共に先王と現王の体から黒い瓦礫の様なモノが床にドドドドッと大量に落ちて、その後霧となって消える。



「こッ、これは‥‥ッ
ああ、頭の中がハッキリしている!
長い間私を苛んで来た靄の様なモノがスッキリ消えて‥‥」

「父上、私もです!
体‥‥体も軽い‥‥これは!!」



先王と現王はバッとアルを見る。

その瞳に先程の鋭さは無く、驚きと感謝に輝いている。

室内に居る他の者‥‥特に側近達は、陛下達が本来の光を放ち始めた事に気付く。



「何という事だ‥‥
我々は気付かぬうちに術‥‥古代魔術を掛けられていたのだな‥‥」

「アル殿、まずは最大級の感謝を伝えよう。
ありがとう、心より感謝している!」



「では、不敬はチャラで?」
二コリ。



「「‥ッ!!」」
ズドッキューーーン!!



二人の陛下&室内の者達がハートを撃ち抜かれた模様。



「「‥‥ハァ‥‥」」



もう何度目かも分からない溜息をつくプロキオン卿とエリダヌス卿。

((行く先々でアルは無自覚に人々を虜にしてしまう‥‥
一刻も早く連れて帰りたい、誰にも見せたくない‥‥))

そんな二人の願いを虚しくする言葉をアルが言う。



「ここからは、人払いを」



どうやら、話はここからが本番な様で。
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