上 下
184 / 217
第四章

01 船上夜会へ 1

しおりを挟む
α王国が誇る、海中にそびえ立つ城の様な巨大船。

船上パーティーの為のこの船へは30人程が乗れるボート数隻に乗って行く。



臨時で増設されたマリーナには受付の奥にティールームやバーが設けられている。

ボートを待つパーティーの参加者達が心地よく過ごせるよう配慮がなされている。


ティールームには香り高いお茶に外国製の珍しいお菓子が並びダイエット中のレディ達を悩ませる。

バーにはやはり外国産の珍しい酒や気の利いた軽食まであり、もうここがパーティー会場でいいのではないかと参加者達を感心させている。


ある者はおしゃべりに興じ、ある者はほろ酔い気分で、マリーナを楽しんでいる。

本会場よりも気楽な空間という事以上に、受付で妙に緊張させられた反動だろう。



今回、受付に配されている三人の文官は名門伯爵家の子息達。

しかもその奥に二名、名門侯爵家関係の文官まで控えている。

今夜の夜会には外国からの賓客も出席されるので、失礼があってはいけない。

それでも受付にこれだけの人員を置くのは珍しい。

国内貴族で今夜のパーティーに参加できるのは伯爵家以上の高位貴族。

滅多に他人に引け目を感じない彼等であっても、受付で優秀な名門貴族家の若者達に緊張を強いられた様だ。



「やはり今夜は特別な様ですな」

「では、やはり‥‥」

「噂通り、王太子殿下の婚約発表があるのでしょう‥‥」



あらまあ、やっとですか。

奇特‥‥いえ幸せな御令嬢はどなた?


などやかましいほどのヒソヒソ声が飛び交う中、受付の方から何やらただならぬ気配が漂って来る。




「何をモタモタしているのだ、エリダヌス卿。
サッサと招待状を出し給え」


「? プロキオン卿の招待状で事足りるのではないのか?」


「私の招待状は私とアルに対してのものだ。
エリダヌス卿の記載は無い。
‥‥まさか置いて来たのか?」


「置いて来たわけではない。
気にしなかっただけだ。
結果、今私の手元には無い」


「呆れた事だな。
覚えておき給え。
招待状無しで参加できるのは主催者だけだ。
父上‥ゴホン、国王陛下の度重なる招待を全無視して来たからこんな常識知らずの不手際を起こすのだ」



オロオロオロ、オロオロオロ‥‥‥



つい先程まで国内外の高位貴族を緊張させていた受付担当の文官たち。

優秀で品位ある彼等でも、高位貴族達が自分達に緊張する様子にはどこか優越感を感じずにはいられなかった‥‥

だが今は、涙目でただひたすらオロオロしまくっている。



目の前にフワリと現れた三美神。

美しさ、存在感、放つオーラ‥‥

どれをとっても異次元過ぎて、瞬時に石化した文官たち。

その上、二美神が招待状をめぐって小競り合いを始めてしまった。



コソ…(廃王子様‥‥だよな?)

コソ…(ああ‥‥しかも、どちらか一人でも垣間見れれば一生話のタネに出来るのに、まさかの二人揃い踏み‥‥)

コソ…(ああ‥‥やはり違う‥‥尊い‥‥ありがたい‥‥忘れ物で言い争っている様にはとても見えない‥‥)

コソ…(だが、どうする?)

コソ…(分からないよ! こんなの、学校で教わらなかった‥‥!)



名門伯爵家の子息達がオロオロするなか、やや年嵩の名門侯爵家ゆかりの高位文官二名がキリッとした表情で颯爽と奥から現れる。


君達は最高の成績で貴族学園を卒業した優秀な若者達なのだろうが‥‥

如何せん、経験が不足しているな、ハッハッハ‥‥

こういう時は、マニュアル通りではなく、融通をきかせなきゃいけないのだよ‥‥


‥‥的な雰囲気を醸しながら、恭しく口を開く。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

愛などもう求めない

白兪
BL
とある国の皇子、ヴェリテは長い長い夢を見た。夢ではヴェリテは偽物の皇子だと罪にかけられてしまう。情を交わした婚約者は真の皇子であるファクティスの側につき、兄は睨みつけてくる。そして、とうとう父親である皇帝は処刑を命じた。 「僕のことを1度でも愛してくれたことはありましたか?」 「お前のことを一度も息子だと思ったことはない。」 目が覚め、現実に戻ったヴェリテは安心するが、本当にただの夢だったのだろうか?もし予知夢だとしたら、今すぐここから逃げなくては。 本当に自分を愛してくれる人と生きたい。 ヴェリテの切実な願いが周りを変えていく。  ハッピーエンド大好きなので、絶対に主人公は幸せに終わらせたいです。 最後まで読んでいただけると嬉しいです。

転生貧乏貴族は王子様のお気に入り!実はフリだったってわかったのでもう放してください!

音無野ウサギ
BL
ある日僕は前世を思い出した。下級貴族とはいえ王子様のお気に入りとして毎日楽しく過ごしてたのに。前世の記憶が僕のことを駄目だしする。わがまま駄目貴族だなんて気づきたくなかった。王子様が優しくしてくれてたのも実は裏があったなんて気づきたくなかった。品行方正になるぞって思ったのに! え?王子様なんでそんなに優しくしてくるんですか?ちょっとパーソナルスペース!! 調子に乗ってた貧乏貴族の主人公が慎ましくても確実な幸せを手に入れようとジタバタするお話です。

新しい道を歩み始めた貴方へ

mahiro
BL
今から14年前、関係を秘密にしていた恋人が俺の存在を忘れた。 そのことにショックを受けたが、彼の家族や友人たちが集まりかけている中で、いつまでもその場に居座り続けるわけにはいかず去ることにした。 その後、恋人は訳あってその地を離れることとなり、俺のことを忘れたまま去って行った。 あれから恋人とは一度も会っておらず、月日が経っていた。 あるとき、いつものように仕事場に向かっているといきなり真上に明るい光が降ってきて……?

もう一度、貴方に出会えたなら。今度こそ、共に生きてもらえませんか。

天海みつき
BL
 何気なく母が買ってきた、安物のペットボトルの紅茶。何故か湧き上がる嫌悪感に疑問を持ちつつもグラスに注がれる琥珀色の液体を眺め、安っぽい香りに違和感を覚えて、それでも抑えきれない好奇心に負けて口に含んで人工的な甘みを感じた瞬間。大量に流れ込んできた、人ひとり分の短くも壮絶な人生の記憶に押しつぶされて意識を失うなんて、思いもしなかった――。  自作「貴方の事を心から愛していました。ありがとう。」のIFストーリー、もしも二人が生まれ変わったらという設定。平和になった世界で、戸惑う僕と、それでも僕を求める彼の出会いから手を取り合うまでの穏やかなお話。

〖完結〗旦那様には出て行っていただきます。どうか平民の愛人とお幸せに·····

藍川みいな
恋愛
「セリアさん、単刀直入に言いますね。ルーカス様と別れてください。」 ……これは一体、どういう事でしょう? いきなり現れたルーカスの愛人に、別れて欲しいと言われたセリア。 ルーカスはセリアと結婚し、スペクター侯爵家に婿入りしたが、セリアとの結婚前から愛人がいて、その愛人と侯爵家を乗っ取るつもりだと愛人は話した…… 設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。 全6話で完結になります。

公爵家の五男坊はあきらめない

三矢由巳
BL
ローテンエルデ王国のレームブルック公爵の妾腹の五男グスタフは公爵領で領民と交流し、気ままに日々を過ごしていた。 生母と生き別れ、父に放任されて育った彼は誰にも期待なんかしない、将来のことはあきらめていると乳兄弟のエルンストに語っていた。 冬至の祭の夜に暴漢に襲われ二人の運命は急変する。 負傷し意識のないエルンストの枕元でグスタフは叫ぶ。 「俺はおまえなしでは生きていけないんだ」 都では次の王位をめぐる政争が繰り広げられていた。 知らぬ間に巻き込まれていたことを知るグスタフ。 生き延びるため、グスタフはエルンストとともに都へ向かう。 あきらめたら待つのは死のみ。

僕が玩具になった理由

Me-ya
BL
🈲R指定🈯 「俺のペットにしてやるよ」 眞司は僕を見下ろしながらそう言った。 🈲R指定🔞 ※この作品はフィクションです。 実在の人物、団体等とは一切関係ありません。 ※この小説は他の場所で書いていましたが、携帯が壊れてスマホに替えた時、小説を書いていた場所が分からなくなってしまいました😨 ので、ここで新しく書き直します…。 (他の場所でも、1カ所書いていますが…)

側妻になった男の僕。

selen
BL
国王と平民による禁断の主従らぶ。。を書くつもりです(⌒▽⌒)よかったらみてね☆☆

処理中です...