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第三章
10 迷惑な客
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「ぼ、僕たち、その場にいました!」
「レグルス達は、成人して辞めた後、事務所の管理者になりたいんです!」
「オーナーが募集出して探してますよね、事務所を預けられる人」
「なので、その勉強になるとか言って、二人は事務所を開けてしまったんです」
「僕たちも手伝えと言われて断れなくて‥‥ごめんなさい‥‥」
「デネブ様、事務所の管理者を募集していたんだね?
‥‥フフ、ドルチェに飽きた?」
アルが手紙からプロキオン卿へ視線を移しながら訊ねます。
無表情なままフワリと瞳だけが色合いを変化させます。
‥‥誰にも読めない表情です。
「あ‥‥うん、飽きたとかじゃなくて‥‥
アルをもう愛人探しの男達の眼に触れさせたくないからな。
私やアルがやっていた仕事を引き受けてくれる人を探している。
運営を任せてみて上手く回せる様なら譲渡しようと思っている。
ドルチェは国からの依頼で作ったという経緯があるから、譲渡出来れば、だが」
「えッ!?
アル様もいなくなっちゃうんですか!?」
「そんなのイヤです、ダメです!」
「レグルス達だって、アル様に会えるから管理者になりたいんだって‥‥
ひえッ!? あッ、えっと、レグルス達が攫われた経緯でしたっけね!」
アルの左右、プロキオン卿とエリダヌス卿の目に宿る不穏な光に気付いた双子。
慌てて話を戻します。
(うん、ナイス判断)
アルが心の中で評価します。
「ハウト辺境伯と名乗った男は、実はここ一カ月、ほぼ毎日来てました。
毎回『アル殿に用がある。会いたい』と言って来ます」
「僕たちは、毎回『今日も事務所には来てません。
今後来る予定も未定です』と答えました」
「男は毎回『会えるまで帰らない』と主張して受付から動きません。
レグルスかリゲルが魔力で威圧して何とか帰らせてました」
「男はレグルス達より魔力量が低いようで、いつも悔しそうに帰ってました。
五日ほど前、レグルスが強めに威圧を放った後は来なくなったので、やっと諦めてくれたのかとホッとしていたら、今日またやって来ました」
「そして今日はいつもと違ってたんです。
男は受付を素通りして勝手にアル様の事務室へ侵入したんです!」
「僕たちが大声で騒いだので、レグルスとリゲルが駆けつけて来ました」
「男はかなり怒った様子で、『アル殿を出せ!』とすごみました。
レグルス達も怒って、男を魔法で拘束しようとしましたが‥‥」
「男は血走った眼で叫びました。
『ハハハッ! 私は今までの私とは違う! 無限の魔力を手に入れたのだ!
もうプロキオン卿も私の敵ではない! 私は最強になったのだ!』と」
「そして突然部屋が凄い光に包まれて‥‥何が起こったのか分かりませんでした。
身体は魔力ショックによる激しい痛みと痺れで痙攣し続けていて‥‥」
「しばらくは目を開ける事も出来ませんでした。
やっと目を開けると、僕たちは腰を抜かしていて、レグルス達は倒れていました。
男の従者がレグルス達を担いで、男は懐から手紙を出して僕たちに渡しました」
「『この手紙を必ずここのオーナー、プロキオン卿に渡す様に。
‥‥いいかね、私は激しく怒っている。
この子供達に悲惨な死を与えるぐらいにはね。
アル殿は私の申し出を何度も断った。
それなのにエリダヌス卿の愛人になったという酷い噂のせいだ。
私の怒りを鎮められるのはアル殿しかいない。
分かったらさっさと手紙を届け給え!
エリダヌス卿の西の屋敷は遠いのだろう?』
と恐い顔で言われて、僕たちは馬車でここへ‥‥」
「途中で道が木で塞がっていて立ち往生しましたが‥‥
丁度エリダヌス伯爵様の従者の方が通りかかって、一緒にここ迄来れました。
従者様、ありがとうございました」
「ああ。 ハハハッ‥‥いや何、本当に丁度良かった!
あそこはワザと木で道を塞いでおくんだ!
何せ、招かれざる客がちょいちょい来るんでね!」
重すぎる空気を少しでも変えようと従者が軽い感じで答えますが‥‥
その発言内容が、場を支配している美少年を不快にしました。
「レグルス達は、成人して辞めた後、事務所の管理者になりたいんです!」
「オーナーが募集出して探してますよね、事務所を預けられる人」
「なので、その勉強になるとか言って、二人は事務所を開けてしまったんです」
「僕たちも手伝えと言われて断れなくて‥‥ごめんなさい‥‥」
「デネブ様、事務所の管理者を募集していたんだね?
‥‥フフ、ドルチェに飽きた?」
アルが手紙からプロキオン卿へ視線を移しながら訊ねます。
無表情なままフワリと瞳だけが色合いを変化させます。
‥‥誰にも読めない表情です。
「あ‥‥うん、飽きたとかじゃなくて‥‥
アルをもう愛人探しの男達の眼に触れさせたくないからな。
私やアルがやっていた仕事を引き受けてくれる人を探している。
運営を任せてみて上手く回せる様なら譲渡しようと思っている。
ドルチェは国からの依頼で作ったという経緯があるから、譲渡出来れば、だが」
「えッ!?
アル様もいなくなっちゃうんですか!?」
「そんなのイヤです、ダメです!」
「レグルス達だって、アル様に会えるから管理者になりたいんだって‥‥
ひえッ!? あッ、えっと、レグルス達が攫われた経緯でしたっけね!」
アルの左右、プロキオン卿とエリダヌス卿の目に宿る不穏な光に気付いた双子。
慌てて話を戻します。
(うん、ナイス判断)
アルが心の中で評価します。
「ハウト辺境伯と名乗った男は、実はここ一カ月、ほぼ毎日来てました。
毎回『アル殿に用がある。会いたい』と言って来ます」
「僕たちは、毎回『今日も事務所には来てません。
今後来る予定も未定です』と答えました」
「男は毎回『会えるまで帰らない』と主張して受付から動きません。
レグルスかリゲルが魔力で威圧して何とか帰らせてました」
「男はレグルス達より魔力量が低いようで、いつも悔しそうに帰ってました。
五日ほど前、レグルスが強めに威圧を放った後は来なくなったので、やっと諦めてくれたのかとホッとしていたら、今日またやって来ました」
「そして今日はいつもと違ってたんです。
男は受付を素通りして勝手にアル様の事務室へ侵入したんです!」
「僕たちが大声で騒いだので、レグルスとリゲルが駆けつけて来ました」
「男はかなり怒った様子で、『アル殿を出せ!』とすごみました。
レグルス達も怒って、男を魔法で拘束しようとしましたが‥‥」
「男は血走った眼で叫びました。
『ハハハッ! 私は今までの私とは違う! 無限の魔力を手に入れたのだ!
もうプロキオン卿も私の敵ではない! 私は最強になったのだ!』と」
「そして突然部屋が凄い光に包まれて‥‥何が起こったのか分かりませんでした。
身体は魔力ショックによる激しい痛みと痺れで痙攣し続けていて‥‥」
「しばらくは目を開ける事も出来ませんでした。
やっと目を開けると、僕たちは腰を抜かしていて、レグルス達は倒れていました。
男の従者がレグルス達を担いで、男は懐から手紙を出して僕たちに渡しました」
「『この手紙を必ずここのオーナー、プロキオン卿に渡す様に。
‥‥いいかね、私は激しく怒っている。
この子供達に悲惨な死を与えるぐらいにはね。
アル殿は私の申し出を何度も断った。
それなのにエリダヌス卿の愛人になったという酷い噂のせいだ。
私の怒りを鎮められるのはアル殿しかいない。
分かったらさっさと手紙を届け給え!
エリダヌス卿の西の屋敷は遠いのだろう?』
と恐い顔で言われて、僕たちは馬車でここへ‥‥」
「途中で道が木で塞がっていて立ち往生しましたが‥‥
丁度エリダヌス伯爵様の従者の方が通りかかって、一緒にここ迄来れました。
従者様、ありがとうございました」
「ああ。 ハハハッ‥‥いや何、本当に丁度良かった!
あそこはワザと木で道を塞いでおくんだ!
何せ、招かれざる客がちょいちょい来るんでね!」
重すぎる空気を少しでも変えようと従者が軽い感じで答えますが‥‥
その発言内容が、場を支配している美少年を不快にしました。
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